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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第二章
14/75

2

翌日。


 朝起きて、ロードルフ子爵はまず身嗜みに気を配る。彼の部屋にはドレッサーがあるから、その鏡で服装・髪型を整える。


 (おはよう。)


「……」


 私の挨拶を無視したが、鏡を通して顰めた顔が見える。まるで「いらない挨拶だ」と言っている。


 一通り済ませた後、朝食の時間。


 本来、桶のところに手を洗ってから、食卓の前に座るだが、昨日の傷口があるから、傷口の検査を済ました後、問題ないと思ってから、それで手を洗った。


 朝食はホールの近くにある、食堂みたいな空間でする。使用人が働いている姿が見える。


 ロードルフ子爵は一人で食べている。時々使用人が通りすがるぐらいだ。彼の視野によって、使用人が仕事しているかどうかを観察していることがわかる。


 だが、時々誰か探しているような感じがした。正直、興味がないが、知ってしまう。視野が同じだから。


 この屋敷の使用人は七人いる。


 執事、副執事、召使い(あるいは側仕え)、メイド、厨房二名、庭師……厨房の人は夫婦であって、メイドの子以外、全部男だ。


 この視線の先、誰のことを追っているだろうね。


 二週間の間、一度だけメイドの子の名前を耳にしたことがあった。確か”レイヤー”だと言う名前。


 でも、ロードルフ子爵が呼んだわけではない。厨房の夫婦がメイドに手伝って欲しい時に呼んだのだ。あの名前だけ鮮明に聞こえた。視線もすぐにメイドの方に向いた。


 とても分かりやすい。分かりやすいけど、興味がない。


 そして、食事を済ました。同じく手を洗ってから、事務の部屋へ行った。


 部屋に入って、ロードルフ子爵はまず隅っこの方へ一瞥した。


 そして、「ふんっ」と、事務机前の椅子に座って、仕事を始める。


 隅っこ……元々鏡が置いた場所だ。


 ロードルフ子爵が壊した鏡はもう片付いたようだ。割れた鏡の欠片や木屑など跡形もなく消えた。


 私は鏡を片付いた人たちに申し訳ない気持ちがあるくらいと同じ、感謝したい気持ちがある。


 その人たちのおかけで、綺麗になったから。私はそれを「当たり前」のように見たくない。ロードルフ子爵もほんの少し同じ気持ちがあるだろう。彼は環境のせいで、「自分」・「人」の「気持ち」を忘れた・無視した。「なかったこと」にしようとした。


 だけど無理だった。無駄だった。人の気持ちは「無視」できるが、「なかったこと」にするのができない。人間だから。


 しかし、今まで自分の気持ちを無視してきたぶん、再び拾うのは難しい。それは「価値観」に染み付いたもの、「私」のように。


 関わりたくない。


 「価値観」の問題は一朝一夕で解決できることじゃないから。


 それでも協力を求めなければいけない。ずっとこの身体のままだったら嫌だから。


 昨日、「ルールを決める」ということ、つまり「お互い」の「妥協点」を探すこと。これはパパが教えてくれたこと。小学二年生から、一人で私を育ててくれたパパ……


 パパ、五十鈴部長、伊原先輩、翔君、良奈ちゃん……ああ、会いたい……みんなに会いたいよ。


「……さあ、そろそろ時間だ。」声とともに、私は目の前にいろんな線が描いている書類を見た。


 また、つい考えてしまった。今は何時だろう?ロードルフ子爵はあまり時計を見る習慣がないから、時間の感覚がわかりにくい。


 だが、この言葉はたぶん仕事が一通り終わったのだろう。


 ロードルフ子爵はその書類を机に置いて、両手を組んで、頭を天井に向いた。


「お前が言った『ルール』、どう決める?」


 (……そうね。では、まずルールの「前提」を決めよう。)


「ほう?珍しく意見一致したな。」


 (そう?なら一緒に言ったらどうだ?)


「お前、ふざけるつもりか。俺の身体だろう。一緒もくそもねえ。」


 (そうね。なら、ルールの「前提」――)


 ルールの前提:


「――ルールの変動はいつでも可能だ。」


 (――ルールの修正は私たち二人で「討論」しなければならない。)


 ……本当に、関わりたくない人だ。

一階の平面図です。

挿絵(By みてみん)

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