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ロードルフ子爵は傷の処置が終わって、私は気付いたことがあった。
そのため、夜の時、眠る前に彼に質問した。
(ロードルフ子爵、一つ気になることがある。)
「なんだ。言っておくが、『気持ち』とかの話だったら御免だぞ。」
(いいえ、そういう話じゃない。)
「言え。」
(医者に治療されている時、たしか処置は、傷口の判断・観察、清潔・異物の処理、そして消毒、最後外周から内まで薬を塗ったよね。)
「違う。最後、包帯巻いただろう!」
(あ、そうだけど、そこまでの処理方法は間違えなかったよね?)
「当然だろう。平民でも医者だ。間違えてどうする!」
(そう、だね。)言いたいことがそれじゃないが、別に彼に知らせなくてもいいか。
「何?なぜそんなことを聞いた?」
……たしか彼は「ディベート」の「情報」が釣り合わないと言った。やはり言おうか?
(何でもないと言いたいんだが、あなたは納得できないよね。)
「当然だ。ちなみに、お前のクソつまらない人生なんて興味がない!そんなこと言っても意味がない!」
私、いつ自分の人生経験を言いたいと言ったか。
それに、この人、勝手に「私の人生」に評価をつけたか。一言多い……
そういえば、「変わった」時見られたような気がする。あと思考も読まれたようだし……
そもそも、何で「私」の人生が見られる?記憶からか?わからない。
たしか図書館で見た多重人格の本では、「心の空間」という話があるらしい。それでも――
「おい!なんか言え。」
(……もう寝てもいいよ。私の気持ちが変わった。)
「はあ?また気持ち……」
(あなたはずっとこのままだったら、言いたいことも言いたくない。それに、あなたのクソつまらない人生に関係ないことだから。)
「貴様、人を怒らせるのがとても上手のようだな。」
怒っている。でも、彼は抑えようとしている。これは一歩進んだのか?いや、多分違う。
(あなたが感情的になりやすいだけだ。)
「貴様……」
(あと、怒らせることが、あなたの方こそ「上手」だったと思うよ。私はただあなたの言葉を返しただけ。もしこれで怒ったら、あなたは自分でも怒る言葉を他人に言っている。)
彼は怒りに震えている。
もし、また暴力を振るったら、もう関わらないようにしよ。
「共感性がない」ことは免罪符じゃない。それに、「共感性」は練習で感じられる。
「……じゃあ、どうしたら、お前の気持ちが変わる。」
うん?これは反省しているのか?ちょっとわからない。
本当は「素直に謝ってくれたらいいよ」と言いたいけど、ロードルフ子爵の場合は少々特殊だから、ここで妥協すると、私が言ったこと全ての意味がなくなる。
(……まず「人」になってからだ。)
「チッ!ずっとこうやって、『はぶらかす』つもりじゃないだろうな。」
(あのね、もしあなたは優しくて、親切な人だったら言うよ。だけど、あなたはそんな人なのか?)
「……いいえ。」
(自覚があるね。なら、まだ余地があるってことだ。もし自覚すらないなら、本当にどうしようもないよ。)
「でも、貴様はずっとこんな感じで『はぶらかす』つもりだったらどうする!」
はぶらかすというより……関わりたくないというか、関心を向けたくないというか。
もし、こんな身体にいなければ、こんな状況じゃなければ、ただ関わりたくない人間だ。
でも、彼は本当に反省するつもりだったら――
(そうだな。ずっとこんな感じだったら、あまり進展がなさすぎる。「お互い」に、ルールを決めよう。)
「何のルールだ?」
(触れさせたくない、触りさせたくないルール。つまり、「地雷」を避けるためのルールだ。)
「……分かった。俺もルール決めていいだろうな。」
(ええ、もちろん。「お互い」のためにやるものだから。)
「ルール決め終わったら、何か気になるか言いたい気はあるのか?」
(……いいよ。大したことじゃないかもしれないが。)
「それを判断するのは俺だ。」
(そうね。)
「チッ、ルールを決めるのは明日にしろ。もう寝る。」
(おやすみ。)
毎晩こんなことを言っても飽きないのか、こいつ。↑
↑やはり、ちょくちょく無関係な考えが飛び来る。本人が意識できないかもしれない。
「深層心理」、それとも「深層意識」と何が関係があるのか。
考えても無駄だけど、考えちゃう――あ、だめだ。彼が寝たいから、私の意識も……
そして、意識が途切れて、翌日になった。