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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第一章
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12

 今、ディベートでよく使われていた部室に、ディベート部の部長――五十鈴貫太郎いすずかんたろうはこう言った。


「いらっしゃい!諸君!我はあなたたち新入部員の入部を心からお待ちしておりましたぞ!」両手を腰に当てながら、肘をくの字に曲げて、胸を張る。自慢げにポーズを取っている。


 少し誇張な話し方と痛々しい言葉、二人の新入部員が困惑している。


 部室の扉を開けて、すぐこんな状況になったから、無理もない。


 そして、五十鈴貫太郎の隣に立った短髪の女子生徒がハリセンを持って、パシッと五十鈴貫太郎の頭に叩いた。


「はあ――だからやめてって言ったのに、二人も引いてるじゃん。部長。」女子生徒の名前は伊原千美いばらちみ


 二人が困惑している最中、伊原千美は苦笑いながら、二人に話しかけた。


「ああ、二人ともあまり気にしないで。部長は演劇部の兼部があるから、わざわざこんな感じにやったんです。」


「おいおい、千美ちゃんすぐネタばらし。ひどいわ――にいさん悲しいわ。」


「誰がにいさんだよ。私、こんなにいさんいないわ!」バシッ。


「さすが千美ちゃん、ツッコンでくれる。この部の副部長は真面目すぎるからな。」


「君がふざけすぎるからだろ。それと、私がその副部長ですよ!」バシッ。


 しばらく茶番が続いている中、新入部員の二人がこの二人の喋りに少々面白く感じた。


「あ!ほら!二人が笑った!俺の方が正解だよ!真面目に説明したら、こんな空気ならないだろう!」


「いやいや、大事なのはそこじゃないだろう。」バシッ。


「ふん!とりあえず、雰囲気づくりに関して、俺はうまいだろう!」


「それは認めるけど……いや!そんなことより、部長は自己紹介がまだだろう?」


「あ、そうだ。俺は五十鈴貫太郎だ。ディベート部の部長。演劇部も入っている。五十鈴とか、部長とか、どんな感じで俺を呼んでも構わん!よろしく!」


「えっと、私は伊原千美と言います。副部長です。あなたたちに茶番を付き合わせて頂いて申し訳ないです。」


 少し訳が分からないが、二人も微笑みしながら、返事をした。


「いえいえ、ちょっと面白かったです。僕は軽井翔かるいかけるです。よろしくお願いします。」


「私も面白いと思っています。黒井さな子と申します。よろしくお願いします。」


「ええい!敬語を使わなくてもいいぞ!気軽でいい!上下関係にこだわりたくない。」


「はあ……まったく。あ、でも、私に対しても同じでいいよ。堅苦しいのもちょっと苦手というか……」


「あ、じゃあ、そうするね!」


「はい、わかりました。でも、すぐにはできないと思いますが……」


「大丈夫。ゆっくりでいいよ。」


 そして、それぞれの自己紹介が終わって、五十鈴貫太郎は少し二人を見て、何か考えている様子。


「フム、では、部活動の内容を説明する前に、君たちに聞きたいことがある。」


「はい?」


「なんでしょうか?」


「君たち、ディベートに対して、どんな印象を持っているか?素直に答えればいい。」


 突然の質問に、二人が少し考えていた。最初に答えたのは軽井翔だ。


「どう『言い負かす』みたいな感じかな?ちょっと動画を見たことがあるから、その時質問する人って、よく話を遮る時があるからな。」


「なるほど。では、そこの君は?」


「えっと、深く知りませんが、『友達』と話している時、たしか『口喧嘩』と『言い争う』ことですね。『喧嘩する』ことですか?」


「フムフム、やはり一般的にそう思われるよな!」


「あの、部長。そろそろ、その口調を……」


「あ、そうだった。ごめん、ごめん、ちょっと練習がてらと思って。」


「別にいいんだけど、早く内容の説明をしたら?」


「ゴホン。では、はっきり言おう!あなたたちのイメージは、偏見だ!」


「全然変わらないじゃないか!」バシッ。


 そして、五十鈴貫太郎は言いながら、二枚の紙をフィルターから持ち出して、二人に渡した。


 紙の内容は、簡潔な言葉はもちろん、ほとんど分かりやすく、段落も見やすいようにしている。


 そして、最初に書いた文字は「ディベートとは」の隣に、少し可愛いイラストが描いている。


 五十鈴貫太郎が二人に「それは千美ちゃんがデザインしたものだよ」と言って、伊原千美が少し照れて、顔が赤らめになった。二人は感心した顔を出した。


「先輩、可愛いな!」


「ええ、とてもかわいいと思います。」


「よ、ヨセ!べ、別に褒められたいわけじゃないから。」そう言われて、伊原千美の顔が更に赤らめになった。


「ゴホン!」五十鈴貫太郎が咳払いをして、三人に注目を集める。


「では、まず文字の定義として、簡単に三つの言葉で説明する!『対抗』・『議論』・『説得』だ!そして、その三つのことに『論理的』という要素がベースとなる。」


 二人は紙を見ながら、五十鈴貫太郎の話を聞いている。


「大事なのは『論理的』な部分だ!全ての根幹だからな。この言葉の部分は、『一定のルールに従って行われること』!いわゆる、ディベートは『ルールのある議論・討論』であるのだ!」 


 また、演劇部のイメージが植え付けられているからだろう。その誇張な言い方が二人は少々話を聞き入ってしまった。


「もちろん、『ディベート』にはいろんな種類がある。だが、この学校では主に競技ディベートのことを教えられている。あ、それと、よく勘違いされるけど、ディベートは『弁論』と違うぞ!」


「えっと、どんな違いがあるでしょうか?」


 まるで黒井さな子の言葉を待っていたかのように、五十鈴貫太郎はニッと笑って、伊原千美へ視線を送った。


「言葉で説明するより、『実践』を見せたほうがいいだろう!さあ!君に決めた!千美ちゃん!」


「はいはい、最初からそう決めたのだろう……てか、元々部員が私しかいないから!」


「いいぞ!言いツッコミ!」


「うるさい!とにかく時間設定お願い!」


「はいよ!今『簡単な概念』を伝えるだけで、長く話しないでくれよ!」


「分かってるわよ!」


「では、二分間。え――題目は?」


「『男女』。」


「では、『男女』、二分間でどうぞ。」


「皆さんは、考えたことがありませんか。男女の間には、『純粋な友情』があるかどうか。最近、学校では、男女の対立が激しくなりつつあります――」


「そうだ、そうだ。」五十鈴部長のヤジ。


 でも、伊原千美はお構いなく話をしている。むしろ、わざと部長の「ヤジ」を待っていたかのように、時間の余白をあげた。


「よく見かけたのは、『私は女だよ』、『男性は全然優しく扱いしてくれない』と女性たちが言ったものです。


 そして、好意で優しくしてあげた男性に裏で『本当は何か目的があるじゃないの?』とか、『あの人、全然無理です――』とか陰口や悪口など言いました。


 私は、一般の女性としても、陰口に言われたことに、必ずストレスが溜まります。言われなくても、もしそれを『本人たちの前』で言ったら、その心境は絶対苦しむであろう。」


「うん。悪口良くないな。」


「もちろん、ストレスがたまった男性たちが、『自分でやれ』、『俺は平等主義だから』と、やりたくないこと、できないことを適当に女子たちに押しつけて、優しかった心がだんだん変貌していきます。男女の対立の事態が悪化していました。


 私は、この対立の事態に疑問を持ったので、テーマにしました。」


 今回ヤジがなかったが、伊原千美が次の言葉を発する途端――


「小学生の時、男女の間では、性別意識は――」


「はい!そこまで、二分になったよ!」


「あ、はい。では、質問をどうぞ。」


「ええと……そこまで『弁論』のことを正式にするつもりはないけど、まあ、でもしないと、わからない可能性もあるからな。では、軽く一つの質問をしようか。

 さっき、悪口とか『本人たちの前』で言ったが、もしかしたら、悪口は『本人たちの前』ではないなら、言い放題なのか?」


「そんな意味はございません。これはあくまで問題提起の一つの例だけで、もちろん悪口は言わないように越したことはないです。」


 五十鈴部長は頷き、伊原千美も元の座った位置についた。


「まっ、『弁論』はこの感じ。二人も概念が分かったか?」


「ええ、面白いっすね。」っす?


「はい、とても興味深いです。先輩の声も響いていて、魅力的だと思っています。」


「あ!僕も思った!透き通るような声で、綺麗だなと思った!」


「そ、そんな、二人もやめてよ!恥ずかしい!」この言葉は五十鈴部長が言った。


「何で部長の方が恥ずかしがるんだよ!」バシッ。


「でも、褒めてくれてありがとう。」伊原千美は二人に微笑みをかけた。


「で、さっき俺みたいに、ヤジ飛ばしてもいい大会があるし、ダメな大会もある。過度なヤジは注意されるから、覚えてね。」


 部長が注意されたことがあるかな?これは新入部員の二人が心で思っていたこと。


「指導の先生は『弁士』だから、弁論の概念を覚えておいてくださいね。」伊原千美は補足のように言った。


「わかった!」


「はい。覚えておきます。」


「では、次は『ディベート』の概念だ!っと言いたいんだが、いきなり全部覚えられるわけがないから、まず一緒に『弁論』の活動だ!さあ、諸君!一緒に図書館へ出発!」


「おお!行こう行こう!」


「はい。でも、放課後、図書館はまた閉めてないですか?」


「大丈夫ですよ。放課後、図書館の鍵は自由に貸し出しできるから、ちゃんと先生から貸し出しの記録をすれば、問題ないです。」


「うん、うん!それと、今日は俺が先に貸したので、図書館が開いてるぞ!」


「だから、部長は私より遅く着いたのか……」


「は、は、は!」誇張な笑い方。


「とりあえず、弁論なら、まず論題のテーマを選出だね。二人とも、何が分からないとこがあれば私たちに聞いてね。先生は多分後で図書館に来るから。その時また先生に自己紹介を。」


「おう!わかった!」


「はい。そうします。」


 和やかで楽しい雰囲気、とても心地良い。


 これは、黒井さな子が一年生の時、ディベート部に入ったばっかりのことだった。

第一章終わりました!

この回、ちょっと難産しましたね。一応、最初の草案をここに置いときます。部長のキャラ、全然違う。


 「いらっしゃい!諸君!我はあなたたち新入部員の入部を心からお待ちしておりました!」


 ディベートでよく使われていた部室に、ディベート部の部長――五十鈴貫太郎いすずかんたろうが部室の中に一人で言いながら、自慢げにポーズを取っている。


 両手を腰に当てながら、肘をくの字に曲げて、胸を張る。


 しかし、その言葉が誰に発することではなく、空虚くうきょに空気の中に静かに消えた。


 「ゴホン!良し。練習はこれでいいかな。」五十鈴貫太郎は少し恥ずかしく咳払い、少し落ち着かない様子だった。


 今、五十鈴貫太郎が練習している。


もちろん、ディベートの練習ではない。練習しているのは、間もなく部室に入る新入部員たちにどんな声をかければいいかとのことだ、


彼は今日までずっと考えていた。そして、考えたのがさっき言った痛々しい言葉だった。


 ガラガラ――新入部員が二名入った。


 「ウース――」


 「こんにちは――」


 「やあ!諸君!我はあなたたち新入部員の入部を心からお待ちしておりました!あ……」


 五十鈴貫太郎は話が終わって、新入部員を見ると、身体が固くなった。なぜなら、二人も女子だからだ。


 「え?なになに?なにそれ、うけル――」


 「えっと、こんにちは?」


 「あ、こんにちは……」


 「あなたは部長さん?面白いね。」


 「あ、はい……部長の五十鈴貫太郎です。」


 軽い口調の女子生徒と真面目そうな女子生徒……五十鈴貫太郎は気まずそうな顔で、二人に自己紹介をした。


 無理もない。五十鈴貫太郎にとって初めての後輩だ。女の子の後輩だと、更に緊張している。


 こっちは口調ギャルっぽい子と、こっちは真面目な子かな。かなり違うな……


 「えっと、部活動の内容を紹介する前に、二人に質問したいことがありますが――」


 「え、あたし――彼氏いますよ。」


 「あ、はあ、そうですか……」別に聞いてないんだけど……


 「えっと、何でしょうか?五十鈴……部長さん?」


 「ああ、敬語とかそんなに気にしなくてもいいですよ。部長とかで気軽に呼んでね。」


 「そうですか――」


 「じゃあ、部長!あたし、今日他の用事があるんで、先に帰ってもいい?どうせ今日は部活の説明だけだろう?」


 「え、ああ……そうか。い、いいよ。」


……

……

 

 ここでちょっと重いな――とやめました。

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