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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

飯石成男40歳童貞の恋。①

作者: 明地雫

縛りワード 終電を逃す 大吟醸 手裏剣


千沙子『電車、行っちゃいましたね』


飯石『ああ、タクシー代渡すからこれで家に帰…』

千沙子『先生の家に泊まってってもいいですか?』

飯石『えっ?』


千沙子『さっき階段で転んだの…』


千沙子『ワザと…だよ?』


飯石『えっ?』


—————————————————————


俺の名前は飯石成男いいしなりお40歳。

大学の映像学科で脚本論の講師をしている。


容姿は中肉中背、ヒゲを蓄えていて黒縁メガネ。ハンチング帽で隠してはいるが正直ハゲ散らかしている。こんな見た目をしているもんだからよく、妻子がいそうなどと言われるが、結婚経験はない。オンナに目をくれず、ひたすら脚本の仕事を、いいシナリオを作ることだけに人生を費やしてきた。結果この年で童貞である。


そんな俺だが、最近アニメの脚本家志望の教え子がつきまと…熱心に慕ってくれている。



『イギリスのとある脚本家が広めた脚本理論でサプライズ忍者理論というのがある。たとえば物語のあるシーンで突然ニンジャが現れてが登場人物をバッタバッタと殺してしまう。その方が面白くなるようであれば、それは十分によいシナリオとは言えないって言うな…』


『へぇーっ初めて聞きました!ほむほむ!』


『でもそれってーかなりむつかしくないですか?急に何の前触れもなくニンジャが現れて登場人物をバッタバッタ殺しちゃうって…くふふっ想像しただけで笑っちゃいますもん』


『その通りだ。だからこの方法は物語作りに取り入れるのはかなりの劇薬。自分のシナリオに相当の自信がないと心を折られるかもな。』


『うー…精進しますーっ‼︎』


今日も居酒屋で2人きりで脚本のいろはを彼女に教えまくっているワケだが…

彼女の名は千沙子ちさこ

髪はブラウンのボブ、花柄のフリルのついたワンピースを着ていておっとりとした性格。いわゆる清楚系というやつだ。実力はまだまだヒヨッコだが、脚本に対する熱意は最近の若者にしてはなかなか見どころがある。俺の一言一句をふんふんと目を光らせて聞いてメモに取る姿は可愛らしいもんだ。

もちろん俺だってバカじゃない。こんなハゲ散らかしたオッサンに年端もない生娘が寄り付くワケはなく、純粋にオレから脚本術を吸収したいだけだろう。

ただ、もし娘がいたらこんな感じに育っていたんだろうか…と一瞬物思いに耽ってしまうのは事実だ。


『もうこんな時間か、そろそろ終電だな。親御さんも心配するだろ。帰れ』



酒が入ってるせいか一緒に駅に向かい歩いてると今日はやけに彼女の距離が近く肩や腕が当たってくる。


飯石『このままだと終電を逃す。走るぞ。』


駅の改札を抜け、息を上げながら階段を登る


千佐子『あっ‼︎』


千沙子は足を滑らしてしまい、ヒールが階段の1番下まで落ちてしまう。

そして最終の電車は俺たちを置いて颯爽と立ち去ってしまった。


千沙子『電車、行っちゃいましたね』


飯石『ああ、タクシー代渡すからこれで家に帰…』

千沙子『先生の家に泊まってってもいいですか?』

飯石『えっ?』


千沙子『さっき階段で転んだの…』


千沙子『ワザと…だよ?』


飯石『えっ?』


その時のフミキリの音は今でもオレの頭の中で鳴り響いている。

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