サイコロに委ねた恋の行方
「このサイコロを転がして、星のマークが出たらあなたと付き合う。
それでどう?」
「いやいやいや!
確率6分の1だろ!
どんだけ俺と付き合いたくないんだよ!」
俺はこいつに告白した。
高校に入学した時から、ずっと好きだった。
知れば知るほど、もっと好きになっていった。
俺にイタズラするのが好きな所とか、よく食べて、よく笑う所とか。
迷子の子供に優しかった所とか。
でも、その想いも告げられないまま、気付けばもう3年。もうすぐ卒業だ。
俺は就職でこいつは進学。
ここで離れてしまえば、次に会うのは、いつかの同窓会。
そこで、知らない男の子供でも連れてこられた日には、俺は立ち直れない。
だから俺は、こいつに告白したんだ。
で、こいつが取り出したのがサイコロ。
星。太陽。ハート。三角。十字架。月。
星が出たら付き合ってくれるらしい。
ハートじゃないのかよ。
「どうする?
自信ない?
私への愛はそんなもんなの?」
こいつはホントに俺を煽るのがうまい。
愛とか、よく恥ずかしげもなく言えるな。
俺が告白するのに、どれだけ勇気を振り絞ったと思ってんだ。
「上等だ!
やってやらぁ!」
「ふふっ。
そうこなくっちゃ」
ああくそ!
かわいい笑顔だなっ!
「じゃあ、いくよっ!」
そして、賽は投げられた。
「おー!久しぶりー!」
「きゃー!元気だったー?」
久しぶりの高校の同窓会。
みんなもうすっかり大人だ。
私はまだ子供が小さいから、一緒に連れてきた。
旦那は仕事で来れなくて悔しがってた。
「にしても、まさかあんたらが結婚するなんてねー」
「ホントホント!」
クラスメートが冷やかしてくる。
あの時、あいつの方から告白してくるとは思わなかった。
友達だと思われてると思ってたから。
玉砕覚悟で告白しようと思ってたら、まさかの呼び出し。まさかの告白。
思わず笑っちゃいそうになったよ。
でも、あのサイコロを用意しといて良かった。
ちょっとズルいと思ったけど、今日みたいな日に、薬指に指輪をしたあいつと再会とかは嫌だったから。
種明かしはしてない。
あのサイコロは星のマークの反対側に重りをつけて、星しか出ないようにしてただなんて。
たぶんこれからも、一生教えてやんない。