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人間を好きになろうぜ
心が見えないよ。
こんなに目と鼻の先にいるのに、あなたの心に触れられない。
黄昏の中で一緒に歩いた帰り道、
夕飯のおかずを想像しておなかを鳴らしていた。
いつか分かれてゆく道の途中で、青春という季節が続いている。
大きな空に鳥が飛ぶように、夢を思い描いたキャンバス
あなたの涙の粒が作った海、息継ぎさえ溺れた遠泳。
しかめっツラであいつが文句を言う。
信じられないなんて嘆いていないで、
もっと人間を好きになろうぜ。
退屈だひとりだとか言ってないで、誰かがあなたを見つめてる。
誰かと誰かが出会って世界が運営されるから、
些細な会話の中に隠れてる大事なヒント。
誰もが忘れて過ごしている日常の中の、
悔しいほど惨めな人生を変えてしまうヒント。
人懐っこい顔であいつがやって来る。
今もこの胸に問い続けている、
もっと人間を好きになろうぜ。
あなたの為に世界が廻るから、もっと誰かを愛しぬいてやれ。