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詩人の祈り
声にならない叫び。
瞳は透明に輝いて、濁りはない。
しゃがれた声に首を横に振り。
暗闇で踊っている。
詩人は祈る。
せめて幸せを噛みしめてほしい。
すべてが等しく、この胸に帰って逝く。
世界は新しく産まれる。
この街で呼吸するには。
気持ちは汚れすぎてしまう。
幾度もの出会いと別れの中で。
こころは離れてしまうのだろう。
忘れないと誓った言葉でさえも。
面白いくらいに忘れてゆく。
時代に翻弄されて。
愛と平和を掲げても、血気盛んな奴らに犯されてしまう。
乳飲み子のように、天使の夜に。
子守唄を聴かせてほしい。
何もかもを忘れて、安心の中で眠れるように。