1、歴史オンライン販売開始
20XX年、VRゲーム歴史オンラインが家庭用機として発売され、その高クオリティにより初動は悪かったものの、口コミが広がり、一か月で500万本を売り上げた。
ゲーム好きな俺は、評価を見て購入したのだが、本当に面白い。
このゲームは現代と過去を合わせたような世界観であり、歴史上の偉人の魂を選択、その魂の特性やスキルを取得していくといったある種どこにでもあるような設定ではある。
キャラを一体しか持てないことや魂を選択し直せないなど、人によっては欠点と言われるものがあり、新たなキャラでやりたい場合は完全にやり直す必要があるのだが、それを跳ね返すくらいの一体のキャラのやりこみ度がすごいこと、またVRゲームとしてのクオリティが高いことで人気が出たのだ。
致命的なバグもなく、開始から特に修正も入らずにアクティブユーザーが300万人ほどいるようだ。かなりの人気ゲームといえるだろう。
現在実装されている偉人の魂は17人分、それぞれ特化されているものやバランスがいいものがあり、初期のものは戦国時代がメインとなっていて、区分はこうなっている。
武 ☆2真田 幸村、☆1本田 忠勝、☆2前田 慶次、☆3石川 五右衛門
守 ☆2武田 信玄、☆1徳川 家康、☆2上杉 謙信、☆3直江 兼続
魔 ☆1石田 三成、☆1黒田 官兵衛、☆3今川 義元、☆3竹中 半兵衛
全 ☆3明智 光秀、☆1織田 信長、☆1伊達 政宗、☆2前田 利家
有名な武将がそろっているおり、各人攻略や育成の難易度により、☆1~3まで分けられている。今後、多くの偉人が追加され、それに伴い新たなシステムが実装される予定との発表があるので、人気はまだまだ続くだろう。第二弾追加では宮本 武蔵、佐々木 小次郎、胤舜の実装を準備されているとの噂もある。
さて、ここまでは前段である。さきほど17人実装されているといったが16人しか有名武将は実装されていない。先ほど記載の他にオリジナルの武将が実装されている。
ランクはEX、阿保 秀光という完全オリジナルの武将だ。
☆10の超高難度となっており、それぞれの魂にはオフラインでもできるオリジナルストーリーがあり、一章のチュートリアル的なものをクリアしないとオンラインにつなげない仕様となっている。阿保に関してはオリジナルも超高難度となっている。
魔物を倒したり、魂を持ったNPCと戦ったり、イベントをこなして育成し、それがそのままオンライン時にも反映されるのだが、難易度が滅茶苦茶だ。初期能力がオール最低値なので装備も何も出来ないため、まずNPCや一番弱い魔物すらも倒せず、どうやったらいいのか、ネット掲示板上でも阿保という名前からアホ武将とあだ名がつき、専用スレッドが荒れるほどだ。
すぐにやり直す者が多い中で、どうにかアホ武将の攻略を目指す会が結成される。
俺もその一人だ。
最初は10000人ほどいたと思われるが、少しずつ減ってすぐに100人ほどになった。何せほとんど進まないのだから、ゲームを楽しめない。当然の形だろう。
少しずつではあるが、攻略法が確立されていく。初期状態では武器を装備できないため、初期の敵すらどうにもならないとなっていたが、アホにだけ初期で従者がおり、従者も無能ではあったものの、従者に攻撃できることが判明。従者を倒すことでレベルが1上がることがわかった。レベルが上がったことにより何故か弓が装備可能となる。資金を全て使えば最低の弓を購入できるので、それがあれば、最弱の魔物なら狩れるようになる。またステータスがHP10を除き、オール最低の1から全て2、に上がるので、多少は戦えるようになったとかなり掲示板が盛り上がったものだ。ちなみにHPも倍の20だ。他の武将にはある自由に振り分けられるステータスポイントはアホには実装されていなかった。
弓を装備できるようになったことで、最弱の魔物を倒せると盛り上がったが、認識が甘かった。
全ての能力が低いのは変わらない。ある程度のプレイヤースキル《以下PS》がないと自分自身の動きが遅く、攻撃したところで気付かれてやられてしまうのがオチだ。
それでも掲示板のアホ使いの中のトッププレイヤーは他のゲームで培ったPSを活かし、アホのレベルを3に上げることに成功する。
掲示板にレベル3のアホ画像を貼り付けた猛者、アホ界ナンバーワンのシンヂ氏はアホ神とあがめられた。レベル3にあげるにはほぼ最低の能力で最弱魔物、巨ねずみを10体倒す必要があるとのことだった。
シンヂ氏はアホ神はやめろ!といっていたが、結局はシンヂ@アホ神という呼び名が定着している。そしてシンヂ氏が貼り付けた画像は衝撃的なものだった。なんとステータスが変わっていなかったのだ。代わりに剣の装備が可能になったことと、アクティブスキルで金が1.1倍もらえることが追加されただけだった。絶望的な状況に掲示板はさらに荒れ、それが原因でさらにアホ使いは減り、掲示板に残ったのは30人ほどで、残った人たちは皆が皆を認識できるようになっていた。
ここまでがサービス開始から一週間の流れだ。