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田中さんは班長なんです  作者: わんぷち
2/2

お箸とお弁当袋

彼の朝は早い。


まず起きてすぐにやる事は、メガネを掛けてカーテンを開け、家の目の前にあるゴミ置き場をチェックすることである。


収集日ならばその散乱具合と動物が荒らした痕跡の確認を、

それ以外の日は、不法投棄に来る輩に目を光らせる。


最近は、監視カメラが設置された事により、被害が大幅に激減した。


彼は、花園地区3丁目9班の班長として、誇りに思っている。


「ふぅ、、、

今日も異常無し、と」


身支度を整えると、エプロンを付け、朝食とお弁当を作り始める。


納豆、雑穀米、卵焼き(甘め)、雑穀米、味噌汁、雑穀米、焼き鮭、雑穀米、漬け物、雑穀米、の順に口にはこび、完食すると、デザートにヨーグルトを食べる。


これが彼の毎朝のルーティンだ。


「さて、と

そろそろ時間だ。」


黒い学生服に身を包み、学生カバンを持って家の点検を終え、彼はようやく登校する。


「いってきます。」


静まりかえった家に彼の凛とした声がこだまする。


そう、彼は

田中一郎

16歳高校一年生

花園地区3丁目9班の

班長である、、、!


シルバーの自転車で登校する際も、地区のチェックを怠らない。


不審な車両や人物はいないか、犬の糞の放置がないか、小学生の通学路の旗当番は稼働しているか。


「、、、!!

 あれは、、、!」


おもむろに自転車を止めて、走り出した


「待ちなさい!」


「な、何ですか、あなたは。」


「私は、班長です。」


「え、は、ハンチョウ、、、?」


「花園地区3丁目9班の班長を務めています。」


「は、はあ、、、。」


「あなたは、今、ウンチ袋も持たずに、犬の散歩をされていらっしゃるようですが、あなたの愛犬が催したくなった時、どうされるおつもりでしょうか?」


「え、あ、、、。」


巻き巻き巻き毛の茶色い犬を連れた初老の男は言葉に詰まり、しどろもどろと言い訳をし始めた。


「今日は、うっかり持って来るのを忘れてしまって、、、

いつもはちゃんと忘れずに持って来てるんだけど、、、。」


「承知しました。

では、私のお箸とお弁当袋をお貸ししましょう。」


そういうと、学生カバンから取り出したお箸とお弁当袋を、犬連れのおっさんに差し出した


「お箸で掴んで、お弁当袋に包んで持って帰るといいですよ。」


「、、、え、、、。」


呆然とする初老の男を尻目に、田中一郎は爽やかな笑みを浮かべてこう言った。


「いやいや、お礼はいりませんよ。

できれば、洗って返していただけるとありがたいですが。」


「、、、えっ、、、」


「私は毎朝同じ時間にこの道を通りますので。

 

 あ!

 もうこんな時間だ。


 では、またの機会に。」


そう言うと、彼はシルバーの自転車にまたがり、颯爽と去っていった。


後には、お箸とお弁当袋を握りしめ、途方に暮れる初老の男と、隣で脱糞を始めた茶色の巻き毛の犬が残されたのであった、、、。


田中さんは、コンビニで割り箸を貰いました。










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