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番外編 家で悩んでいた私は、あの人の為に強くなりたいと願うのでした

 私、彼岸花は休日に自室で頬杖をついていた。折角のお出掛け日和に、どうすれば藤麻君に近づけるのかと苦悩する。

 藤麻君の隣にはいつも妹さんがいる。放課後から朝になるまでずっと一緒、それがとても羨ましかった。


「いいなぁ、マリーちゃんは」


 藤麻君はいつも妹さんから逃げているけど、その度に必ず藤麻君の前に現れる。例えそれが何処だろうと。


 一見その行いは正常ではないと思えるが、愛の形は人それぞれ。妹さんの愛は藤麻君を独占したいと思う程にとても歪んでいて――とても美しいものに感じた。


「私もそれくらい積極的になれたらな……」


 ただ願うだけの私は何も行動に移さない。何故ならそれが叶わないと分かっているから。

 私は昔からそうだ、英語を話したいと思い教材を購入したが内容が難しく、三日後にはその本を綺麗に仕舞っていた。今では埃を被っているだろう。


「はぁ、どうしたら……ん?」


 ため息を吐きながらスマホをいじっていると、よく分からないサイトに飛んでいた。そこにはこんな事が書かれている。


『飽き性や続かない人必見! まずは身近な出来る人を真似てみよう!』


 たしかにそうだ、初めてやる事は何から手をつけて良いか分からない。だからまずは人真似をする、それはいい案かもしれない。

 そう思う私はイメージする、今の私の理想を、藤麻君の妹さん『金神マリー』ちゃんを。


「藤麻君には私がいれば他は必要ないの、分かったら今すぐこの場から消えて……」


 ――あの日私に放った言葉を元に口にする。


「雌豚……害虫……」


 ――妹さんがよく使う言葉を真似る。


「藤麻君は……私のだから!」


 すると体の奥底から力がみなぎってきた。しかしそれはほんの一瞬で、維持するには難しく思えた。


「な、何今の……」


 未知のエネルギーに私は動揺するが、恐怖はしなかった。これが私の求めていたもの、これこそが妹さんの力の源、私はそれを理解した。


「よ、よし。もっとイメージして、マリーちゃんから藤麻君を奪えるくらいにならなきゃ!」


 そうと決まれば善は急げ。私は筆箱に入れてあるカッターを手に取り、庭に出て投擲の練習をすることにした。

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