プロローグ
なんとなくで始めた小説ですので拙いことはお許しください。続きをどうするのか書くか書かないかも分かりません。お手柔らかに宜しくお願い致します。
なんとなく、みんながやっていた習い事やスポーツをやって、なんとなく、近所に住んでいた帰り道が一緒のグループに入って、なんとなく、友達が行く地元の進学校に通って、なんとなく、周りに勧められた地元の公立大学に入学して、なんとなく、母のアドバイスにより地元の市役所で公務員になった。そう、昔からずっと、周りに流されて生きてきた。両親にもそのことで色々迷惑をかけた時期もあったけど、何か変な方向に自ら進んで自爆するより、大多数の選ぶ良い方向へ流された方がマシだし、今こうして安定した職業につけているのだから、きっと両親も安心しているはずだ。しかし、時々思う。もっと自分がサッカーに集中していたら、プロになれていたんじゃないか、もっと熱心に勉強していたら、都会の有名大学に入れたんじゃないか、もっと何かに熱を注いでいれば、それはきっとすごい何かになれたんじゃないか、もっと、もっと自分に強く固い意志があれば、と。
5月、夏の匂いを漂わせる陽気に桜の葉が嬉しそうに光を照り散らす頃、社会人一年目の石巻シンは、いつも通り定時出勤し、昼休みを迎えていた。いつもなら誰かにお昼の誘いをうけるシンであったが、珍しく誰からも誘いが来なかったため、お昼はコンビニで済ますことにした。
「はあ、コンビニは選択肢多いから苦手なんだよな…弁当、おにぎり、サンドイッチ、菓子パn…。」
独り言をブツブツ言いながらコンビニへ向かっていると、ポツっと水分が肌に触れるのを感じ、空を見上げてみた。すると雲一つない快晴に、キラキラ光る大粒の雨が降り注いでおり、アスファルトが早くも雨の匂いを感じさせていた。
「うぉ、まじか。こんなに珍しいのは流石にはじめてだな…狐のなんとかってやつだ、って感心してる場合じゃない、急がないと。」
そう言っておもむろに走り出そうとした刹那、
目の前が真っ白になる。
そして頭に浮かぶなんとなしに生きた人生の思い出フルコース。
同時に、千里に轟く程のいっそ清々しい爆音。
全身を駆け巡る、身体中の血液が一瞬にして爆発するような鋭い衝撃。
その正体はまさしく、稲妻であった。
身は一瞬にして焼け焦げ、かろうじて残っている意識でさえ、数十秒もすれば消え失せてしまうだろう。
(何が起こったんだ…全身が熱くて痛い…助けを…呼ばないと…)
シンは暗く重い瞼を開ける。そこに映るは真っ黒になった右手、カバンを落とし文字通り悲鳴をあげる女性、真っ青な顔をして大声で電話をかける男性、そして眼前に佇む小石。助けを呼ぶため手を動かそうとするも、もうほぼ手の感覚はなく、とてつもない痛みと共にほんのわずかにピクリと動くのみであり、声を出そうにも、呼吸すらままならず、血の味の息が出るのみである。
(ああ…死ぬんだな…俺。周りに流されて…流されて…まあでも…悪くない…人生だった…な。次はもっと…硬く…生きよう…)
そう考え瞼を閉じる。そうして意識も無くなろうとしている時、何かに強く手を握られた気がして、もう一度、重い瞼を開く。するとそこには、白い何かを纏った、人ではない何かが立っている。消えゆく意識の中、目を凝らしピントを合わせようと試みる。
(え…狐…?)
意識は途切れた。