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◆最弱魔物の俺が魔王を倒すまで  作者: 雪白 瑚葉
第一章 旅立ち編
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第4話 ステータス改竄

「はぁはぁ…よくもこの私に恥をかかせたわね…」

 魔術を連呼したレミラは息を切らせ毒づいた。


(ダメだ…体が動かない…)

 雷の魔術に体を焼かれながらも、ノートの意識ははっきりとしていた。しかし、指一本に至るまで体が指示を聞かない。


 自分の命はここまでだろう、そう思った。一つ気がかりは王の元に向かったハルトのことだ。王とハルトが生き延びてさえいれば…



「苦戦したようね、レミラ。」

 ノートの耳に、レミラとは異なる女性の声が聞こえた。


「…ミユキ」

「“絶氷の美姫”ミユキと呼んでちょうだい」

「自分で“美姫”とか付けてるんじゃないわよブス」

(自分で自分の二つ名に“美姫”とか付けてるのか…)


「うるさい…超ブス」

「超ブスブス」

「超超ブスブス」

「あんたねぇ…もう許さない!ステータスオープン 対象:ミユキ!」

「!」

「あんたのステータスにこの魔法ペンで『ブス』って書き込んでやるわ。敵にアナライズの魔法を受けるたびに『絶氷の美姫ブス』って書かれてるのを見られる恥辱を味わいなさい!プークスクス」

「…ステータスオープン 対象:レミラ」

「!」

「…レミラのステータスに『超ブス』って書いてやる」

「ちょっ!やめなさい!このドブス!」


 そんなやり取りを聞いて、“絶氷の美姫”の顔は見えないものの、どちらも俺の苦手なタイプの女だ。ノートはそう思った。


「そんなことより、グランディアナ国王はちゃんと殺したの?」

「…逃げられた。乱入してきた騎士と、がさつな女に邪魔された」


 ハルトと、…がさつな女というのはおそらく彼の妹メリルのことだろう、ノートは思った。王宮内において「がさつな女」という評価に足る女性は、彼女以外には考えられないからだ。


「ハァ?何やってんの?国王を殺さないと見せしめにならないでしょ?魔王様に歯向かおうとするとどうなるかってのを知らしめるための作戦でしょ」

「うるさい…あの騎士、かなりの腕だったの」


 ノートは、自分はこのまま殺されても大丈夫だ、そう思い始めた。国王とハルトが生き延びてさえいれば魔王への反攻も望める。俺の仇も…しかし、そんな思いはミユキの次の言葉に断ち切られた。


「邪魔をするから残った騎士の方は氷漬けにしてやった。千年溶けない呪氷の封印でね。」

「殺さなかったの?優しいわね」

「違う。千年後封印が解けて魔族の世界にかわっているのを見せて、とびっきりの絶望を味わわせてから殺すの。私に手傷を負わせた騎士は簡単には殺してやらない」


「…面白いわねぇ…それ」

 ノートは、見下ろされる視線を感じた。

「まだ生きてるの?それ」


 ぱちん


 レミラが指を鳴らすと、小さな爆発が発生し、うつぶせに倒れていたノートの体を仰向けに反転させた。

「ふふ…まだ息があるようね」

「どうするの?それ」

「ステータスオープン 対象:ノート!」

「…HP:0/状態異常:瀕死。もう死ぬところだね、この男」

「死なせてなんてあげないわ。まず状態異常欄を『リジェネレート』に書き換えて…と」

「レミラ、字が汚い」

「うるさい!…さて、どうしようかしら。私を愚弄したこの男に最上級の絶望と、屈辱と、苦しみを与えるには…」


 束の間、レミラの声が途切れた。そして、深緑の魔女レミラは魔性の笑みを浮かべて言葉を続けた。


「種族:人間。これを書き換えてあげる。そうね…最弱の魔物、ペンギラーに。神職である神学者にとって、これほどの屈辱があるかしら」


(なんだと…!やめろ…!)

 ノートの体は動かない。抵抗の言葉を発することすらできない。


「いい趣味だね」

 ミユキの肯定の一言が、後押しとなった。レミラは嬉々としてペンを走らせる。瞬間、ノートの体に激痛が走る。全身の骨がバラバラに砕かれるような痛みが。


「あはははは!さようなら、『人間の』神学者ノート。最弱の魔物になって、這いずり回りなさい!同族だった愚かな人間に狙われ、無様に逃げ回りなさい!そして、闇に染まる世界で絶望しなさい!」


 激痛で遠のく意識の中、ノートが最後に聞いたのは深緑の魔女レミラの高笑いだった。

 この瞬間をもって、王国一の神学者ノートは世界から姿を消した。


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