プロローグ 悪夢は惰眠により訪れる
この世界には一人の魔王と、二人の神様が居ました。
太古の昔、二人の神様は協力して魔王を封じ込めることに成功しました。
でも、魔王の力は強大で、ずっと魔王を封印し続けると神様だって、疲れてしまいます。
ですから、二人の神様「精霊神」と「幻獣神」は封印した魔王の見張りを、1000年ごとに交代することに決めました。
精霊神が魔王を見張る1000年は「精霊紀」。幻獣神が魔王を見張る1000年は「幻獣紀」。
人間たちは、それぞれの神様に感謝の気持ちを忘れないよう、そう呼んでいます。
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時は、第六幻獣紀の1000年が終わり、第七精霊紀50年。
バン!バン!バン!
「ララム!てめえ!」
精霊神の聖廟の扉をたたき、大声でわめく獣人が居た。
獅子の頭を持ち、雄大な体躯のその獣人は、過去に魔王を封印した神の一人「幻獣神」ゴッツである。
彼は、大変困っていた。第六幻獣紀の1000年間、彼は神の一人として魔王の封印を守り続けた。そして、疲れ切った彼は、今は神の力がほとんど残されていない。このままでは、魔王の封印が解けてしまうのは時間の問題であった。
本来であれば、もう一人の神「精霊神」ララムに封印を守る仕事を引き継ぎ、今頃は幻獣神の聖廟のあったかい布団で眠っているはずだった。
どうしてこうなった。ゴッツが精霊神の聖廟の扉を叩く音はどんどん大きくなっていく。
どんがどんが!どんがどんが!
「ララム!いい加減起きやがれ!もう持たねーぞ!」
第七精霊紀50年。
精霊神ララムは盛大に寝坊した。
世界が闇に包まれるのは、それからわずか10年後のこと。