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prologue
男はひとり、道を歩いていた。というよりも"小走り”の方が合っているかもしれない。
彼女が似合っていると褒めてくれた新調したばかりのスーツも今の状況には不向きだ。思わず舌打ちしたくなるのを抑えて足を進める。
「‥‥どこ行ったんだ、あのバカ」
本音が飛び出すが男の気持ちを彼女は知らないだろう。
「いや、俺の失態でもあるな」と男は考え直す。好奇心旺盛な彼女のことだ。きっと何か惹かれるものを見つけたんだろう。
「‥‥やっと着いた」
男は着いた先である"教会”を見上げ、太陽の光の反射で輝く大きな鐘に目を細める。
そして白い階段を数段のぼり、目の前の扉を軽く押した。
--‥‥どうかここに彼女がいますように、そんな願いを込めて‥‥、