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死神冒険者の終末旅行紀  作者: サフラン斎藤
一章-死が全てを分かつまで
8/11

フラン6

 「リーバイス!リーバイス!!おい、ふざけるな。お前は俺と一緒にパーティを組むんじゃなかったのかよ・・・・・・」

 「リーバイスの奴をあまり困らせるな。ゆっくり寝かせてやれ、こいつはやるべきことをしっかりやったんだ。もういいだろう」

 名前も知らなかった男の名前を、手遅れになってから他人の口から聞かされる。院周辺は、もはやそんな感傷も許されない戦場だ。

 戦力になる者のみを治療して再び前線に送り続けて半日。光の加護持ちのフランに負担が集中するサイクルを止めたのは皮肉にも、生還者の減少であった。

 同じく光の加護を持つエドウィン神父は切り込んで魔物を討伐することで圧力を緩和するが、いかんせん多勢に無勢で子供は一人また一人、と虫食いに欠けて行く。果てには使用人の老人ですら、清掃用具で応戦する始末だ。

 たとえ、魔物を倒したとしても歩けなくなったり、利き腕を失った人間の生きる道はこの世界にはなく。最期の足掻きに魔力を暴走させて自爆を図る者が続出したのが生還者の減少の主な要因だ。

 魔力暴走のおかげで奴隷商売等も廃れたのは怪我の功名とも評価できなくはない。だが、それも今この時だけは容赦して欲しいとフランは切に願う。

 金があれば高位の聖職者により治療も期待ができたかもしれない。実力がもう少しあればそもそも治療の必要がなかったかもしれない。


 すべて欺瞞だ。


 高位の聖職者は明らかに数が足りておらず、実力者もいつかは地べたを這いずる。

 喚き散らしたくなるような現実をリーバイスだった肉片がフランに教えてくれた。




 孤児院のいつになく長い一日は泣き叫ぶ子供の声で幕を開いた。

 森に多数の魔物の出現。その魔物達の進行方向は孤児院。眠気覚ましには些か過激に過ぎる情報は町へ薬草を売りに行った男児が持ち帰ったものだった。

 疑う訳ではないが、と狩猟組有志が集って戦力の把握のために差し向けた斥候が誰一人帰還しなかったことが更に事態を加速する。

 「緊急体制に入る。非戦闘員は建物の中へ、組の各長は集合せよ」

 神父様の号令が魔力を介して院を中心とした広範囲に響いた。

 それからは血で血を洗う消耗戦が繰り広げられる。三人で魔物を一匹倒せば相打ちでも構わないという理屈が軸とされ、罠で堅めた

陣地での防衛や隘路での強襲でごまかしながら院までたどり着く魔物の頭数を減らした。

 先述のリーバイスもエドウィン神父の案に従って戦った勇ましい男の一人である。だったと過去形で形容せざるを得ないのが惜しい程だと後にエドウィンは語る。

 院の防衛の要は火の加護が重要視された。火炎魔術が敵の強弱に関わらず、一定の成果を挙げられる事実が認められた形だ。

 地の加護持ちは陣地で息絶えた。風の加護持ちは斥候途中に壊滅させられた。残るは死守した主戦力の火と戦闘にあまり関わらない生活魔術に優れた水、そして孤児の中ではたった一人の光の加護持ちのフランに絞られた。



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