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死神冒険者の終末旅行紀  作者: サフラン斎藤
一章-死が全てを分かつまで
4/11

フラン3

 こうして、フランの魔術師人生の始まりが唐突に訪れた。

 フランは無意識に治癒魔術を行使し、身を保っていたらしい。身体の自己治癒能力を魔術で補強することは光以外の加護持ちでもよくみられる有り触れた施術だが、未熟なフランの魔術で効果が得られたのはより適性の高い光の加護の恩恵だとエドウィン神父は言う。

 魔術は大別すると二つに分かれる。内に影響を及ぼす魔術と外に影響を及ぼす魔術だ。身体補助に代表される汎用魔術等一部の例外を除き、前者は光の加護の領分だった。

 他者をも癒せる光の加護の治癒は他の加護と一線を隔している。他の加護持ちの治癒が擦り傷切り傷を治す程度の気休めであるのと比べ、光の加護は血肉から生み出せてしまう。熟練の聖職者(教会付の光の魔術師のこと)が使う治癒魔術は断ち切れた腕を新たに生やせると聞く。

 勿論、これらとは逆に他の属性の方が適性の高いことも多々ある。魔獣や魔物を討伐する際は四大属性の加護による力が不可欠だ。端的に言って光の加護は火力が足りない。

 書庫の魔術書の記述を追うとこんなところか。興味の無かった分野の知識は飲み込み難い。元々フランは商人に必要な知識を蓄える日々で、魔術は門外漢も門外漢である。

 カラカラと音の鳴りそうな頭を支え、凝り固まった首を廻しながら木桶の水を煽る。孤児院の近くの水場で汲んだ新鮮な毒水だ。少しずつ体を慣らして、飲用に堪える段階にようやく持っていった逸品が喉を潤した。

 魔術の上位に魔法がある。魔力にて存在を強化する魔術を超え、存在そのものを生み出す術はまさに魔法。

 恐るべきことに魔術師を名乗る冒険者は皆魔法を修めているらしい。更にその上、大魔法を編み出したりと上にはきりがない。

 身近なところでエドウィン神父も大魔法師だった。それを聞いたときフランは、神父様がフランを見出だした理由に疑問を覚えた。


 これならまだ女として求められる方が理解できる。


 「神父様が私を気にかける理由がわかりません。不信の種です。不信の種は諍いの元です」

 本音を言えば妾にされるのではないかと危惧していた。仮にも相手は聖職者だ露見すれば、いや教会に妾だと思われれば罰則は苛烈に違いない。

 「所謂青田買いです。光の加護持ちは常に天秤が需要に傾いている」

 「ああ、そうそう。私は来る者を拒まないだけで自ら追いはしませんよ」

 まあ将来の町民との伝ができるのは有り難いですが、とエドウィン神父は人の悪い笑みで付け加えた。いつか神父様と同じお髪の子供が町に溢れるに違いないとフランは脱力感に苛まれ天を仰いだ。

 なるほど、ここで良い扱いをして唾を付ける訳だ。戦になれば聖職者は引っ張り凧もいいところだと繰り返し戦史は記している。多くのお部屋組が町の男に売約済で、毛色が珍しい私は教会に売約済か。フランは低く吐き捨てた。



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