発見
(フィリップ!よく来てくれたわね!)
懐かしく思わず令嬢らしからぬ動作で飛びついてしまった。
弟はすっかり年齢を重ね、父に容姿が似てきたようで逞しい。
しかし私は弟の身体をすり抜けてしまい、前につんのめってしまう。
(そうか…私…死んだんだ)
少しだけ寂しい気持ちになるが、感情が希薄になったためか素直に納得できた。
おそらく私の姿を彼らは見る事ができないだろう。
私は久しぶりに会った弟と級友達を見つめる。
そこに何故か恨みがましい気持ちは湧いてこず、懐かしい気持ちだけが湧き上がってくる。
ああ、でも、今の私を見る事ができないと、アレを見つけられてしまうかもしれない。
でも仕方のない事。
死とはそういうものなのだから。
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フィリップを先頭に、男たちは部屋の中を進んだ。
リビングに相当する部屋の隣に寝室らしき物があり、ついたてがある。
その向こうにベットがあり色あせたカバーがかかっているのが見えた。
予感がしたのだろう、男たちはおそるおそるといった風についたての向こうに目をこらした。
「…つっ!」
誰かが息を飲んだ音が部屋に響く。
「あね・・・うえ?」
絞り出したような声がフィリップの喉から出た。
幼馴染の伯爵が口を押えて廊下に飛び出るとえづき始めた。
小さく子どもの身体のように縮んでしまった私の身体。
虫に食い荒らされていないのが幸いだが、そこに私の生前の面影はない。
職務から死体を見慣れているのだろうか、騎士団長が私の身体を検分する。
「…ミイラ化している、おそらく随分前に…」
語尾を言いきらない形で口をつぐむ。
「どうして…」
フィリップの顔は蒼白だ。
「見たところ、外傷や毒をもられたような形跡はない」
騎士団長はうなだれた。
「病死も疑われるが…おそらくは餓死だろう」
茫然と立ち尽くすフィリップの背後で魔術師長にまでなった大の男が
うめき声とも叫び声ともいえない声をたてて床に崩れ落ちた。