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ファウストの永久機関  作者: 三好ひろし
2 遠山彩夏の主張
7/30

7

 そして待ちに待った放課後。

 授業後のホームルームが終わった後、すぐに待ち合わせ場所に指定された屋上へと向かう。転校生も同じクラスなんだから一緒に行けばいいじゃないか、なんて野暮なことは言わない。先んじて待ち合わせ場所に行き、相手を待たせないことが、ロイヤルミルクティーの似合う紳士たる務めなのだ。

 校舎の屋上は解放されていて、誰でも出入り自由だ。昼休みは屋上で弁当を広げる生徒たちがいるし、朝夕は演劇部が発声練習場所として使っていたりする。

 だとすると、屋上じゃ二人っきりで話せないんじゃないか? そう思いながら、屋上へ出る鉄製のドアを押し開けた。

 誰もいなかった。

 時間が早かったせいか、それとも今日は演劇部の練習は休みかな?

 空は薄い雲が広がっているせいで日差しは弱く、少し寒かった。校庭を見下ろすと、既に部室棟に向かっている生徒たちの姿が見えた。

 神宮寺さんはすぐに来るだろう。ぼくは手すりに寄りかかった。

 どんな話だろう?

 もちろん決まっている。流れ的に愛の告白以外にありえない。この展開で「貴方にぴったりの幸運の壺があります、お安くしときますよ」などと言われたら、人間不信になりそうだ。

 しかし本当に「好きです」なんて言われたらどうしよう。なんて返事すればいいだろうか? 今まで読み漁ってきた参考文献——と書いてマンガやアニメと読む——を必死に思い出す。しかし自称恋愛研究家の森川と違って、甘ったるい恋愛モノより、血湧き肉踊るファンタジー系や男と男が拳で語り合うバトルモノを嗜むことが多いので、そっち方面の知識が多いとは言えない……。

 あー、緊張する。そもそも女性に誘われることなんて家族を除けば、彩夏以外になかったことだ。……あっ、彩夏も本人に言わせれば家族みたいなものか。

 ふと、彩夏のことが気になった。結局、途中でメールのやり取りは途切れてしまった。今から返事を書いたとしても遅すぎるだろう。

 そもそも彩夏はぼくのことを詮索しすぎなんだ。いくら姉に信頼されているからといっても、やり過ぎだ。ぼくがどこで何しようと勝手じゃないか!

 そんなことを思いながらも、下校していく生徒の中に彩夏がいないか探してしまう。

 彼女の姿は見えない。


 ギギギッと重たい音を立てて、屋上入り口のドアが開いた。

「おいっす」と、コント番組のような挨拶と共に転校生、神宮寺江麻が現れた。「待たせた?」

 今日一日ですっかりお馴染みとなった、教室での最初のあいさつや女子生徒たちに囲まれた時に出ている、とてもフランクな口調だった。

「そ、そ、そ、そんなことない」

 頬が強張り、舌がうまく動かなかった。

 神宮寺さんに近づこうと、右足を前に出そうとしたけどうまく膝が曲がらない。今度は左足、こっちの膝も曲がらないぞ。もっと自然に歩かないと、そうだ腕を振ればいいんだ。……えっと右足を前に出した時に振る手は右だったかそれとも左だったか。

「なんか尾野くん、ロボットみたいで面白い動きだねー」

 神宮寺さんは口元を押さえてクスクスと笑った。

 そんなにひどいの、ぼくの動き!

 三歩ほど歩いただけで、体育で五キロ持久走をした時よりも息があがってしまった。心臓もドクンドクンと激しく脈打っている。

「どうしたのー、顔青いよ?」

「大丈夫だから、それより……」

 苦しい胸を押さえながらぼくは、「用事は?」と尋ねようとして、ふと思い止まった。

 聞くだけ野暮、か……。

 彼女は今一大決心をしてこの場に臨んでいるはずなんだ。見た目は教室内と変わらないが——元々容姿からは想像できない口調であることはこの際忘れよう——、内心は相当緊張しているに違いない。ここは急かすことよりも彼女の緊張をさりげなく和らげてあげることこそ、ラプサンスーチョンの似合う紳士、というものじゃなかろうか?

「き……、昨日の『特命刑事一課』は面白かったねえ」

 今日一日、神宮寺さんを取り巻いていた女子たちの会話から推測できた、彼女が好きなテレビドラマの話題を振ってみた。

 しかし神宮寺さんは「はあっ?」といった様子で、首を傾げた。「……う、うん、まあ面白かったね」

 あれ、食いつきが今一つだぞ? もし彩夏だったら嬉々としてドラマの尺よりも長い時間、語り続けるだろうに。神宮寺さんはそこまでの大門堂刑事ファンじゃないのか?

「え、えっと……、そ、そうだ。森川、ぼくの後ろで、神宮寺さんの隣に座っている奴。あいつが」「……くん」「今日の休憩時間に、食ってたアンパンに」「……のくん」「アンが入ってなくて……」

「尾野くん!」

 ようやく、神宮寺さんに名前を呼ばれていることに気づいた。

「ご、ごめん」と、反射的に謝ってしまった。

「別に怒っているわけじゃないけど。話をさせて」

 おっと、彼女は既に準備万端だったようだ。余計なことをしてしまった。

 気分を落ち着かせようと一度深呼吸をして、改めて神宮寺さんの顔を見た。

 屋上に現れた時の雰囲気から一転して、彼女の唇はきつく結ばれていた。

 ぼくも心の中で気合を入れる。

 ああ、人生初の告白を受けるだなんて……。心の中では無数の自分の分身がソーラン節を踊り始め、既にお祭り騒ぎだ。

 そして、神宮寺さんの口がゆっくりと開いた。


「貴方、命を狙われている」


 冷たい風が吹いて、神宮寺さんの長い黒髪が目にかかったが、彼女は気にする様子もなく、じっとぼくを見つめていた。

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。「私と付き合って下さい」と、言われたわけではないことは、はっきりしていた。

「えっと……、今なんて?」

 と、聞き返すのが精いっぱいだった。

「言葉通り。貴方は狙われている。命すらとられかねない」

 今度は神宮寺さんの言葉を音としては聞き取れた。しかしその意味が理解できない。

「……どういうこと? 言っている意味が分からないよ、神宮寺さん。狙われているってぼくが? 誰に、どうして?」

「本当に、分からない?」

 神宮寺さんはあり得ないといった様子で聞き返してきた。怒ったようなきつい口調に、体がびくりと震えた。

「……全く」

 ぼくは恐る恐る首を振った。

 命を狙われている? あまりに非現実的な話だ。大財閥の子息でもなく、ましてや黒い組織の陰謀を探る高校生探偵でもない、一家四人、両親共働き、典型的な日本的核家族環境で生活する一介男子高校生の命を狙おうとする輩など存在するのだろうか?

「呆れた。……自分がやったことを理解できていないなんて」

「あのう……、からかっているだけならもう帰りたいんだけど」

 これは何かのドッキリ? 驚くようなことを言って慌てふためく様を誰かが観察して楽しんでるだけじゃないだろうか? ぼくはだんだん不愉快になってきた。こんなことならさっさと彩夏と一緒に帰ればよかった。

「待ちなさい」

 扉へ向かおうとしたぼくの前に、神宮寺さんが立ち塞がった。千枚通しよりも鋭い視線を向けられ、反射的に体が強ばってしまった。

 怖い、怖いよ。この子!

 昨日会った時は優しい子だと、教室ではちょっと変わった子だと、思っていたのに、今はとても怖かった。動いたら、首を絞められかねない雰囲気だ。

 どうしてここまで性格が豹変しているんだ!

 ぼくが体を震わせている側で、神宮寺さんは手提げ鞄から一冊の雑誌を取り出し、ぼくの目の前に突き付けてきた。「これを見ても、身に覚えがないと?」

「あっ、それ……」

 なんてことだろう。早速、《それ》が世間に晒されることになろうとは。ぼくの未来はお先真っ暗じゃないか!

 彼女が握りしめている雑誌、それは昨日、博士の研究所で見せられた英語の論文集だ。

「ここに、貴方の名前で論文が出されている」ぺらぺらとめくって、ぼくと博士の名前が書かれたページを指差した。「尾野くん、貴方の命が狙われる理由はこれ」

「どうしてそんなインチキ論文で、ぼくが命を狙われる理由になるの?」

 訳が分からない。博士の妄想がたっぷり詰まった散文を、たまたま海外の超科学やオカルト大好き人間たちの目に留まって、同人誌に載っただけじゃないか? しかも、ぼくの名前は博士に勝手に付け加えられただけだし。

「インチキ!」神宮寺さんが声を荒げた。「何言ってるの! これは世紀の大発見。科学界も世界情勢さえも一変させるほどの破壊力を持つ研究成果なんだから!」

「へっ……?」

 博士の研究が世界をひっくり返すだって!

「自分で書いておきながら、事の重大さがわかってないだなんて」

 神宮寺さんは厳しく詰問するような口調で言った。

「えっと、その論文……、ぼくじゃなくて、博士が書いたんだよ。そのドクターファウストって人が本当の著者だよ。本名は寺崎」

 神宮寺さんの表情が固まった。「え、……そうなの?」

「うん。ぼくと話していたらインスピレーションが湧いたっていう理由だけで、勝手に名前を入れられたんだよ。だからその雑誌に何が書かれているかほとんど知らないんだ。こっちも迷惑している」

 神宮寺さんはがっくりと項垂れた。そして「そ、そうなんだ。……じゃあ、うん……でも」と、何やら呟きながら考え事を始めたようだ。

 どうやら神宮寺さんが話そうとしていたことは、ぼくには関係ない話だったらしい。誤解が解けて何よりだ。……愛の告白じゃなかったのは残念だったけど。

「ということで、その雑誌とぼくは全く関係ない。……じゃあぼく行くから」

 今度こそ、校舎に戻ろうとしたが、神宮寺さんに再び道を阻まれてしまった。

「ちょっと待った。本当は尾野くんがこの論文と無関係でも、《権益者たち》はそのことを知らない。だから、貴方たちは彼らに狙われるはず」

「貴方たち……って、ぼくと博士のこと?」

 神宮寺さんはこくりと肯いた。

 神宮寺さんの様子を見ていると彼女が冗談を言っているようには思えなかった。話だけでも聞いておくべきだろうと判断する。

「……順を追って、説明してくれるとうれしいんだけど」

 と、ぼくが言った時、神宮寺さんのきつく結ばれた表情が少しだけ緩んだような気がした。


 雑誌を片手に持ったまま、神宮寺さんは説明を始めた。

「そもそも発端は、この雑誌に掲載された尾野くん……じゃなかったドクターファウストの論文。その中身は量子力学的熱運動量と宇宙の真空エネルギーの相転移による第二種永久機関の存在を予言……」

「ごめん、何言ってるかさっぱりわからない」目の前に博士が現れたんじゃないかと錯覚しそうになった。最初の数文字でもうついていけない。「もっと、簡潔に言っていただけると……」

 どうしてそんなことも知らないのか? と、糾弾するような目で神宮寺さんはぼくを見ながらも、説明してくれた。

「……簡単に言えば、この論文は永久機関の新しい原理を解説したものなの。論文内では《ファウストの永久機関》と名付けられている」

「……ああ」

 そう言えば、そんな話を昨日博士から聞かされた。

「この原理が実現できれば、自動車だって冷蔵庫だって、電気やガスがなくても動かせるようになる夢の技術なんだから」

「……本当に実現できれば、でしょ? でも永久機関なんてできるわけない、ってのが常識だろ」

 昨日博士にした同じ質問を神宮寺さんにぶつける。

「その、ないと考えられていたものが、本当はあるんだって分かったところが、この論文の凄いところじゃない!」

 そ、そうなのか? でも真剣な表情の神宮寺さんに強く断言されると、本当に永久機関なるものが存在するんじゃないかって気になってくる。博士はいつもロッキングチェアにふんぞり返って、怪しげな妄言を繰り返しているかと思っていたのに、本当はとても凄いものだったのか!

「でも、そんなに凄いものなら、世間が放っておくわけないじゃないか。今頃テレビや雑誌で話題騒然になってないと。だって、電気もガスも要らないんでしょ? だったら、世界のエネルギー問題は解決じゃないか!」

「そう、しかもエネルギー問題だけじゃない、世界の貧困や温暖化問題、ひいては戦争やテロといった紛争解決にも光明を与える可能性を持っている」

 おおっ、凄いじゃないか、博士の研究! 確かに世界を変えるポテンシャルを秘めている。

「でも、大きな問題があって」神宮寺さんはびしっとぼくの鼻に向かって指を突き付けてきた。「ドクターファウストの研究がまだ世間に出回っていない理由の一つは、この雑誌が世界中で五十冊も出回っていないこと」

 そりゃそうだろうね、なにせ世間じゃ無名の同人誌だし。

「そしてもう一つが」神宮寺さんは人差し指と中指を立てた。「この発表をもみ消そうとする連中がいる。これが、尾野くんたちが狙われる理由」

 ようやく話の入り口に立てたようだ。しかし、まだ狙われる理由がはっきりとは分からない。

「《ファウストの永久機関》は、世界のエネルギー事情を一変させる可能性を持っているけど、それを快く思わない人たちがいる。誰だか分かる?」

 と、聞かれてもさっわり分からない。ぼくは素直に首を振った。

「……それは今までエネルギーの源として使われてきた、石油や石炭、天然ガス、それに原子力、最近は太陽光発電とか自然エネルギーも含まれるけど、それらを生業にしている人たち、組織のこと。例えば、エネルギー事業で財を成した企業やそれらと癒着する政治家、それにエネルギー源を輸出している国家とかが挙げられるかな。もしドクターの研究が実際に形になったら、彼らはどうなると思う?」

「ああ……」

 ようやく合点がいった。要するに、ニュースなどでよく耳にする、既得権益というものが侵されるわけか。

「これまでも、永久機関が発明されたって話が出てくるけれども、そのほとんどはインチキか勘違いだった。でも稀に永久機関が本当に発明されかけたことがあった。でもそれらは全て、快く思わない人たちの手によって、ことごとく握りつぶされてきた、手段を選ばずにね。……そもそも永久機関が存在しないっていう常識も、彼らが流布した偽りの法則なんだから」

 神宮寺さんは手段を問わず、という部分を強調して、ぼくは思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

「今回の博士の論文、つまり著者として名前の載っているぼくと博士も狙われてる、ってこと?」

「そう」神宮寺さんは首肯した。「でも安心して、そのためにわたしがここへ来たから」

「……ん?」

 そしてようやく、最も大きな疑問に思い至った。

「神宮寺さん、君は何者?」

 ぼくの問いかけに、神宮寺さんは鞄から定期入れのようなものを取り出し、ぼくの目の前に突き出した。

「リヒャルト財団特殊諜報部門第三課専任エージェント、それがわたしの肩書」

「リヒャルト財団! 諜報!」

 諜報、つまりはスパイという、普段は映画ぐらいでしか聞かない単語にとても興味を覚えたが、それ以上に引っかかった単語がリヒャルト財団だった。

「それって、ぼくと博士に研究会の招待状を送ってきた……」

「そう、財団は表向き、慈善活動や科学技術振興に関する基金を管理しているのだけど、真の目的は、人々の自由と平和を奪おうとする連中を倒すこと。ドクターの研究を叩き潰そうとしている連中、わたしたちは彼らのことを《権益者たち》と呼んでいるけど、《権益者たち》は自らの利益のためなら世界の自由、平和や秩序を蔑ろにする存在なの。そして今回、ドクターファウストと尾野くんを招待した研究会の目的は、《ファウストの永久機関》を広く世間に公開することで、《権益者たち》によるエネルギー支配を終焉させることにある。……当然、そうはさせまいと彼らの妨害が予想される。だからわたしは研究会を無事行えるよう貴方を守りに来た」

 神宮寺さんは力強く言い放った。その瞳は信念という炎で、メラメラと燃えているようだった。

 長かったが、ようやく一つにつながったようだ。


 ところで、神宮寺さんが正体を明かした時から、気になっているものがある。それは、ぼくの鞄にくしゃくしゃに丸まっている便せんだ。

 ぼくは問題の便せんを鞄から取り出し、彼女に見せた。

「昨日、神宮寺さんと会った時、暴走ワゴン車に轢かれそうになったでしょ。あの時車から投げつけられたんだ」

 便せんを手にした神宮寺さんの表情がみるみるうちに曇っていった。

「そうか、あれも……。もう、手が回って……」

「やっぱり、ヤバそうなの、これ?」

 答えは、神宮寺さんの表情から大体想像がついた。

「ぼく、消されるの! し、死にたくない!」

 博士の気まぐれで名前を入れられ、それで命を狙われるなんて冗談じゃない。とばっちりもいいところじゃないか! こんなの死んでも死にきれない。

 ぼくには研究者になるって夢が、そして何より、まだ読み終わってないマンガやラノベ、溜まりに溜まったアニメの録画、苦労して手に入れたご贔屓声優のライブチケット、これらを消費せずに死ねるか! おっと、ベッドの下に隠してある《男の大切なコレクション》もそのままにしておくわけにはいかない。

 わなわなと震えるぼくの腕を、神宮寺さんがそっと触れた。

「大丈夫、貴方のこと、わたしが守ってあげるから」

「でも、でも……」

 相手は、世界のエネルギー事情を牛耳る巨大勢力なわけでしょ。そんな連中に狙われたらひとたまりもない。

 ふと、便せんに書かれた内容を思い出す。もしぼくと博士が研究会への出席を止めれば、永久機関の研究を止めてしまえば、狙われずに済むんじゃないだろうか?

「だめ! そんなことしたらいつまでも、わたしたちは彼らの不当な支配から逃れられない。尾野くん、貴方の手には今、世界に自由をもたらす鍵が握られているの!」

「世界の、自由……?」

 胸の奥で、何か熱くなるものを感じた。

「そう、これは貴方たちだけの問題じゃない。世界の運命を左右する重大な問題なの。どうか、わたしたちを、いや、世界を救ってほしい」

 一転、神宮寺さんの声はとても弱々しくなった。

 ぼくは彼女の顔を覗く。神宮寺さんは顔を歪め、瞳は涙で潤んでいた。

 博士の戯言だと思っていた同人誌の論文から、あまりにも大きな話につながっていて、頭はまだ混乱している。なんだかよく分からない理由で命を狙われるだなんてまっぴらごめんだ。そして、謎の転校生に始まり、世界のエネルギー事情を牛耳る《権益者たち》、永久機関、諜報、世界の自由……、どれもこれも非現実的な単語ばかりだ。

 だからこそ心惹かれるものがあった。

 こんな心躍るシチュエーションなんて、一生に一度もない。

 そして何より、女の子から助けて、なんて言われたら、一肌脱がなきゃダージリンが似合う紳士じゃない!

「分かった。がんばって博士と一緒にその発表会に出るよ」

「ありがとう、尾野くん!」

 神宮寺さんがぼくの手をぎゅっと握ってくれた。柔らかく暖かい感触が伝わってきた。

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