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日本へ  作者: じろう
8/12

8月24日 2

 どうやら俺は体調を崩していた


 あの母娘を助けたあと、俺の仕事が遅いと、班長が俺を叱りに来た、が、助けた母娘が班長のゆかりの人だったので、これ以上ないくらいお礼を言われたらしい


 その後、汽車が日本人第一収容所の近くに到着、200人近くで出発した俺たちの班、第一収容所に到着したのは半数の100人ちょい、どれだけ過酷な旅だったか伺える


 現黒竜江省の最北端から出発した俺たち、少し北上すれば今のロシア、冬には氷点下20度を下回る日も少なくない、8月じゃなければ移動中に亡くなった人の数はもっと増えたであろう


 汽車の中では、糞尿にまみれ、ひどい揺れの中、死体と重なり合いながら、いつ来るかわからない、ソ連軍、蒙古軍、八路軍の襲撃に絶えず怯え、精神をすり減らし移動してきた


 やっと、日本がアメリカの助けを借りて設営した、日本人引上げ民第一収容所施設に到着した時は、大半の日本人が何かしらの病を患っていた


 俺も例外ではなく、到着し各班別々に、収容所宿泊施設の設営や準備をしている時に倒れた、かなり高い熱を出していたらしい、そして、助けた女性に介抱してもらっている、と、こう言う訳だ


 一緒に寝ている女性、少し臭うが、目鼻立ちのきりっとした綺麗な女性だ、30歳くらいかな、ちょっとオッパイ揉んでおこう、あとお尻も触っておこう


 女性が寝ているのをいいことに、触っていたら、頭を叩かれた


 誰だ、この至福の時間を邪魔する奴は、と、叩かれた手が伸びて来た方向を見たら、班長が枕元に座っていた、俺の額のタオルを交換していてくれたらしい


「元気になったのなら、床から出ろ」


 一部すごく元気になったところを隠しながら布団からでる、出る時、心の中で「ごちそうさまでした」と手を合わす


「服を着たら、こっちに来い」


 と、班長に言われたので、そそくさと服を着て、あとを付いて行く


 班長の後を付いて、皆が休んでいる小屋を出て外に、すでにあたりは暗い、足元に気を付けながら、少し大きめの建物に入ると、そこで待っていたのは、精悍な顔をした20人位の日本男児だった


 班長は、座っている男達の前に立ち、これからの指示を出した


「これから、ハルピンに向かう汽車を日本が手配してくれるまで、ここで留まる、ここにいる者を3人ずつ1つの班に分け交代で昼夜問わず宿泊所の見張りをする」


 なるほど、襲撃に備えて、警備に当たるのか、アルソッ〇だな、なんて考えていたら、班長に呼ばれた


「お前たち若い3人は、第一収容所から食料を貰って来てほしい、そこに日本からの食糧が届いている筈だから取って来てくれ」


 何故ここには食料が届かないのか聞いたら、第一収容所を中心に、半径3キロほどの距離で、各班ごとに、山の中、森の中に宿泊施設を設置した、収容所宿泊施設を分散させておいた方が、ソ連軍、蒙古軍、八路軍の襲撃をかわせる確率が高くなる、という説明をしてくれた


 成る程、日本が作ってくれた収容施設をダミーにして、各班ごと分散し、それぞれ山中に自分たちで作った宿泊施設に隠れ住み、汽車が来る迄の間、ソ連軍、蒙古軍、八路軍の襲撃をやり過ごす、その間、ダミーとした収容所に日本から届いた俺たちの食料が有るから、そこに食料を取りに行く訳だな


 班長から指令を受けた後、俺たち3人は互いに自己紹介をした、2人ともいい奴そうだ、そして、覚悟の出来ている顔をしている


 この任務がどれだけ過酷な物か理解しているからだろう、真夜中、月明かりしか光源が無い山中を移動する、道中、熊や狼、腹を空かした野犬に襲われる可能性も高い、そして、山蛭や毒のある虫や植物、毒蛇なども無数にいるだろう、なによりも、ソ連軍、蒙古軍、八路軍も、俺たちの食糧を奪おうとして、俺たちの施設を探し徘徊している


 もっと大勢で行けばいいと思ったが、よく考えたら、ここの施設の守りも必要だ、それに、大勢で移動すればそれだけ、ソ連軍、蒙古軍、八路軍に見つかる可能性も高くなる、すばしっこい若者が少数で、闇にまぎれ隠れながら、見つからない様、移動するのが一番得策だと納得した


 一緒に食料を取りに行く事になった二人は、自分たちの誰かを犠牲にしても、一人でもいいから、ここに戻って来て、この宿泊施設で待っている皆に食料を、そんな決意がありありと取れる顔をしている


 どんなことをしても食料持って来る、食料を取って来なければ、ここにいる全員が悲惨な結末をむかえる可能性が高くなるからだ


 命を賭して命を救う、これを17.6歳の子供が受け入れている、現代なら高校生だ、Twitterで馬鹿な発言をして炎上している世代だ


 目の当たりにした若者たちの、日本人としての生き様に、心が熱くなる、武士道、大和魂を持つ二人と、絶対生きて帰って来ようと励ましあう、自然と涙があふれてくる、二人に涙がこぼれる所を見られないよう様、下を向くが、手を取られ顔を上げる、月明かりの下、二人の顔を見ると同じように泣いている


 二人と手を取り合った時、怒涛の様に記憶の波が流れ込んできた、そして何かが繋がる


『この二人が今回の後悔の原因だね』と、スティーブン3世が俺に語り掛けて来た


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