8月23日 3
「オイ!そこの若いの!」
声のした方を振り返る
「お前だよ、ちょっとこっちこい」
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いつもの様に、いつものベットで、狭いのを我慢しながら、寝たはずだよな・・・
まだ続いてるの? 今日の後悔は、さっきの夢で払拭したはずだろ
『もう一つあったみたいね』と、スティーブン3世
まじか…夢とはいえ、人殺しちゃったんだぞ、俺の心のHP0になる寸前だ
その時、いきなり視界がぶれて、右頬が熱くなる、遅れて痛みがやって来て、殴られたのがわかる、目の前には、体の大きい精悍な顔立ちをし40歳位の男の人が立っていた
なにするんだコイツ
『手を出さない方がいいよ、その人、班長さん。この車両の日本人をまとめている人だね』と、スティーブン3世が忠告してくれる
本当に助かるぜ、ナイススティーブン3世、このままケンカでも始めようものなら、俺の剛掌波で、芥子粒ほどの欠片も残らない位、コイツぐちゃぐちゃになってたぜ
『うん、そうだね。よく我慢した、偉いよ君は』
……うん、慰めてくれてありがとう
『? そんなつもりはないけど、とにかく穏便にね、手を出さないでね』
出さないよ、生まれてこの方、ケンカもしたことないのに
「正吾、お前の仕事はなんだ?」と、殴ってきた男が俺に問いかける
コイツ、超上から目線だな、威圧感もハンパ無いし、次回のアウトレ〇ジに出てくるな
「答えろ!!」
しがないサラリーマンだよ、安い給料と嫌味な年下の上司にいびられながら頑張るサラリーマンだよ
『それはキミだろ、正吾は運搬係りだよ』と、スティーブン3世が教えてくれる
運搬?
『そう、運搬。汽車の中で亡くなった人の遺体を外に出す係り』
ああ、お墓に埋葬する係りか・・・
『ちがうよ、汽車から捨てる係り』
すて…る?
『うん、記憶をたどるとね、死んだ人の身体から、ノミが這い出てくるらしいの、そのノミを媒体にして蔓延する病気があるのね』
ノミって、あのノミ?
『そうだよ、あのノミ。冷たくなる前に遺体を捨てるんだって、温かいうちは体や衣服の中にノミいるみたい、遺体が冷たくなってくると外に這い出てくるらしいよ』
遺体を捨てたのを後悔してるのか?
『違うよ、遺体を捨てるのはしょうがない、と思っているよ、これから近く起こる出来事に何かあるみたい』
そっか、じゃ、あいつ怖いし、捨てる作業をしてくるか・・・・
どこに捨てるんだ?
「正吾、今は汽車が止まっている、少し遠くに埋めてこい。ノミやダニが俺たちの所に来ない様に、きっちり埋めるのだぞ」
チッ、偉そうに・・・
『偉いよ、この車両にいる120人の命を預っている人だからね、覚悟も凄いよ』と、スティーブン3世が教えてくれた
覚悟か…俺と同じ年、くらいか…平和な国で、だらだら生きてる俺と、人間の器の違いがハンパ無いな
作業を続けて30分、この遺体で最後か…いま息を引き取ったであろう、幼い命、両手で抱え、汽車から降りる、あそこに埋めるか…
汽車から影になるボロボロの掘立小屋の影に埋めようと、小屋に近付く
『あの小屋だよ、あそこに後悔の原因があるよ』と、スティーブン3世が俺に告げる