下心から誕生したデジタルなホッチキス
おはようございます、こんにちは、こんばんは
女性が主人公のショートショートです。
よろしくお願いいたします!
この度ある文具店から新しいホッチキスが誕生することになった。その名も『デジルッキス』。
きっかけは男友達の何気ないひと言である。
「この前会社で会議用の資料を作ってたんだけど、資料が分厚すぎてホッチキスが上手く留められなくてさぁ。本当苦労したよ」
「あぁ確かに! この位の厚みなら大丈夫かなって試すと、上手くいかないことあるよね」
「だよなー。俺指太いからさ、芯の補充もひと苦労でさ。毎回何とかならないかなって思うわけよ。その点お前は指細いからいいよな」
彼は何気なく私の手を取り、指先に触れる。
「そうでもないよ。私こう見えて手先が不器用だから、すごく気持ちわかる」
無意識の行動に心が乱され、頬が熱くなる。
「そうなんだな。そう言えばお前、雑貨店勤務だったよな。どっかに楽留めホッチキスなるもの売ってるところ知らないか」
何事もなかったように話が続く。平静を装う私の気持ちは置いてけぼりだ。
「ねぇそれってどのくらいの人が困ってると思う?」
「うーんそうだな。俺の会社ではみんな面倒だってぼやいているんだよな。あれは相当困ってる人がいるな」
それを聞いた私はアイデアを閃く。デジタル化したらいいのではと。芯をなくしてしまえば経済的にもなる。そうすれば芯が無駄になる心配もなく、補充の手間も省ける。
「分かった。私が何とかする。任せて!」
胸をたたき力強い口調でそう告げた。
「おっおう」
張り切りすぎたようだ。彼はとても驚いている。それも無理はない。雑貨店勤務ではあるが、私は販売員ではない。企画開発に携わる部署にいるのだ。
家に帰ると直ぐにプレゼン資料作りに取り掛かった。新商品の開発は、一筋縄ではいかないことも承知の上。上司には色々どやされたがプレゼンが成功し、この間ようやく完成したのだ。
「あのね! まだ詳しく言えないんだけど、今度画期的なホッチキスを販売することになったの」
「おぉ! そうかそうか。もしかしてお前のところから出すのか」
「うん! だから楽しみにしててね」
彼の喜びように私までも嬉しくなる。
そのホッチキスは一度紙を挟むとセンサーで温度帯を教えてくれる。正面の液晶画面に数字が表示される仕組みだ。横には十段階の表示ランプがある。そして表示された数字のところまでボタンを押す。すると作動するのだ。しかも持ち運び可能な充電式のホッチキスだ。
数秒間待つと閉じられる。ただ少し難点があって、充電の減りが早いのだ。そのうえ充電を忘れると再稼働まで時間がかかる。まだまだ改良の余地はあるが、第一弾としては上出来だ。
発売が開始すると多くの企業から注文が殺到し、社内は嬉しい悲鳴が響いている。
そして発売日から数日たったある日、彼から連絡が来た。
「新しいホッチキス――確か『デジルッキス』だっけ。あれは言ってた通りの画期的な商品だよな」
「本当!? 嬉しい。実はそのホッチキス私の発案なの」
「そうなのか!? お前の行動力すげーな。ありがとな」
そう言うと彼は頭をなでる。私は照れ笑いを浮かべた。
制作の経緯に、彼に喜んでほしい。褒められたい。という不純な動機――女心があったことは誰にも言えない。
最後までお読みいただきありがとうございました。
二人の関係性は今後どのように進んでいくのでしょうか。
大切な誰かのために何かを成し遂げようとするとき、物凄い力を発揮出来ることでしょう。
またお会い出来れば嬉しいです。




