2ndEpisode 背中の虫
「神野こうた君、ぜひ我々に協力してくれないかい?」
「あなたが僕になんの用ですか?久村剛士首相」
久村剛士 2年前に内閣総理大臣になり、過去1番の支持率がある首相。
「いいか、よく聞け。国家交流会というものは知っているか?」
「はい、一般的にはメディアには公開されなく、国のお偉いさんたちが集まって、みんなでワイワイ話し合うやつですよね。」
「ああ、そうだ。ただしこの前の交流会で、事件が起こった。」
「事件?とは?」
「核兵器、、、ついにこの世をすべて滅ぼせるような核兵器を、キューバが完成したんだ。キューバにとんでもない科学者が誕生してな、今までよりもより高密度な核を生成したんだ。今、キューバは、それをどこにでも落とせる状態だ。これにより、今の全世界の生命はキューバが握っている状態だ。そんな中、誰もキューバには逆らえない。当然、この前の交流会もだ。そんな中、キューバから提案されたのは、物資でも、土地でも、奴隷でもない。とあるゲームをすることだ」
「ゲーム?」
「その名は、『国取りゲーム』」
「…」
「詳しくは教えられていないが、全部の国が強制参加で、国の中の一人の代表がそれぞれ集まりゲームをして、生贄になる国を決めるゲームだそうだ。」
「なんでそんなこと…」
「それに負けたら、恐らくその国は、核兵器で消滅させられるか、死ぬまで奴隷だろう」
「…」
「詳しくは私もわからない。今日は、君に、、、『国取りゲーム』の日本の代表として、でてもらおうと思って」
こうたは冷静な表情のまま応えた。
「えっとお、首相でも冗談とか言ったりするんですね。あーわかった、モニタリングとかでしょ。」
「こうた君、これは真面目な話だ。」
「すいません。どこが真面目なんですか?そもそも、もっと頭のいい人がでるべきでしょう。それに、高校生に、全国民の命を背負わせる首相がどこにいるんですか?」
「君は、私の知る中で、一番頭がいい人物だと思うが?」
「何言ってるんですか?僕はこの学校でも真ん中ぐらいの成績だし、それに、」
「Мы доверяем себя Хоукс」
「チッ」
こうたは扉を思い切り開けて、部屋をでようとした。
ただしスーツ男たちに取り押さえられてしまった。
「『我らはホークスに身を委ねる』一時期大変だったよ。一年前、その時のTOPの売りやげを果たしていた電気会社が、突如倒産した。理由はなんだって、給料なしで社員に働かせたり、契約会社に対するパワハラがSNSに流出してね。それに、そのことが漏れたのは、一人のハッカーのせいだった。『ホークス』と名乗り、電気会社のPCに侵入したんだとな。今のご時世、ハッキングなんてできるような、セキュリティのとこはどこにもない。それが大手企業になるとなおさらだ。そしてもう一つ、驚きのニュースがはいった。ハッキングしたのは、ただの高校生だと。本来なら、ハッキングは許されないような行為だ。
ただしホークスの正体がメディアに公開されることもなく、刑務所にぶち込まれることはなかったんだよ。なぜだと思う?」
こうたは、先ほどの冷静な表情を、再び作り直し、苦笑いでこたえた。
「さあー?結果的に国民を助けることになったからですかね?」
首相は眉間にしわを寄せて怒鳴る。
「しらばっくれるなホークス!ホークスは、いや、お前は、国家の弱みまでも握ったからだ。それを脅しに使われて、国側からは、なにも手を打てなかった。幸い、国民はホークスのファンが多かったからな。誰一人、異論をだすものはいなかった。」
こうたは大きくため息をついて淡々と言う。
「いつから僕がホークスだと?」
「話すと長くなる。一つ言えるのは、お前とは以前にも一度会ったことがある、ということだ」
「まあ、たしかに、僕が天才なことは認めます。それでも、国民の命は、僕には少し荷が重いです。」
「お前が一番この国を愛してるだろ?」
「愛してる、というよりは、悪が大嫌いなだけですよ。」
こうたはカーテンをあけて、外を眺める
「ああいう、悪いことしてるやつが大嫌いなんです。見るだけで、背中の至るところから、虫がよじ登ってくるような、そんな感じがして嫌いなんです。」
「なら、なおさらだ。今ここでキューバを止めれば、大勢の命が助かる。大勢の命を殺そうとする悪を、倒してくれ。」
「それならそれでもいい。たしかに善は死ぬかもだけど、悪もその分死ぬ。そうなれば、背中が気持ち悪くなることもない。僕は善を守りたいわけじゃない。悪を滅したい。ただのエゴだ。」
「言ったでしょ!あなたも死ぬんですよ?背中がどうのこうのの話じゃないんですよ?」
「うるさああああああああい!」
明らかにこうたの表情はかわる。汗が机の上に垂れる。
「ここで僕が負けたら、僕は悪になってしまう。」
自分が悪になることは、悪を嫌うこうたにとって、もっとも許しがたいことであった。
「いや、こう…」
久村がなにかを言う前に、こうたはドアを思い切り開けて、どこかに行ってしまった。
こうたは教室に戻り、荷物を整えてた。
「もー帰っちゃうの?」
めいがこうたに聴く。
「ごめんな、用事あるの忘れちゃってて」
「ふーん」
「どうした、そんなに怒った顔して」
「別に!」
そんなことない。めいは明らかに怒ってる。
そのことにこうたは少し察したようだ。
「あ~じゃあわかったよ。明日放課後にスターパックスおごっでやるから。」
「スタパ!も~しょ~がないわね~まあ?明日はちょうど暇だし??付きやってあげてもいいけど?」
「はいはいありがとう」
明らかに元気になっためいを見てこうたは少し安心する。
「じゃあ、また明日な」
そういいこうたは電車で40分、そこから徒歩で35分歩いたところのケーキ屋に行った。
「いらっしゃい、もう用意してあるわよ?」
「え?美咲から連絡ありましたか?」
「いや~毎年、この日は絶対くるでしょ~?」
「あはは、ありがとうございます」
「こちらこそ、こんな田舎によく来てくれるわね~」
「まあ、なんせここのケーキ屋は…」
こうたは言いかけてやめた。
「妹のお気に入りなもんで…」
てきとうにそれっぽいことを言って、そのことを誤魔化す様子は、店員さんも理解したっぽいが、あえて聞かなかった。
店員さんが耳打ちでいう
「イチゴ、サービスで多めにしといたからね、店長には内緒よ~?」
「うわ~いつもありがとうございます」
こうたはニコニコで家に帰った。さっきのことなど忘れたかのように。
帰りの電車で、こうたは我慢できなくなり、ちょこっと箱を開けた。
記念日には珍しい真四角なチョコケーキ。神野家には、恒例だった。
こうたは家に帰り、美咲がどんな料理をつくってるのかと、家に入った瞬間、その異変に気付いた。
こうたは慌てて
リビングに行った。そこには縛られて、なにか助けを訴える美咲と、フードを深くかぶった一人の男がテーブルに座っていた。
「なんだよ、美咲を巻き込むのは違うだろ。」
こうたは、さっき美咲が料理で使ってたであろう包丁をとり、フード男の首元にかざした。
「怖いね~、本当に私のこと、殺していいと思ってるの?」
「黙っとけ、、、首相」
「あれ?もう気付いたのかい?声と口調は変えたと思うんだけどな」
首相は、ポケットの中から、今こうたが持ってるのとまったく同じ包丁を取り出し、美咲の首にかざした。
「一歩でも動くようなら、お前のだ~いすきな妹が死んじまうぞ?ホークス」




