澄んだ世界をまた君と
夢を見た。何もかもなくて、寂しくて冷たい世界だった。
でも心地よかった。わたしは自由で無敵でなんでもできて、最強だった。
ずっとこのままでいいと思った。
目が覚めると隣には、わたしの服を着た君が壁のほうを向いて
毛布をぎゅっと掴んで寝ていた。
なにか怖い夢でも見ているのかと気になって肩と頭を撫でた。
その時なんで夢の中で忘れてたんだろうって気づいて涙が出た。
久々に自然と出る涙が頬を撫でた。
撫でている頭に気が付いたのか彼女は寝返りをうって寝たまま私の手を探していた。
まるで幼い子どもみたいで愛おしかった。
頭を撫でていた手を差し出したら、ぎゅっと握ってくれた。
そしてまた私は彼女をトントンしながら眠った。
彼女と眠るとき、いつも夜中に起きてしまう。
それはまるで小さい子供がいる親のように、愛おしい存在がちゃんといることを確認するべく起きるのに近かった。まったく嫌じゃなくてむしろ心地良かった。いつも彼女は隣で眠っていた。
次に目が覚めたのは、彼女がベッドから離れる気配がしたときだった。
夢の景色に近づく気がして反射的に起きてしまった。
寂しくて自由な世界。
アニメエヴァンゲリオンのシンジ君が選ばなかった世界。
そして映画で選んだ世界。ふたつの世界を私も感じた。
彼女は少し驚いた顔をしたまま私の手を掴んで顔をじーっと見ていた。
私は泣いていたのを悟られにように顔を隠した。
そして彼女はいつも言う。
「アラームで起きないのおもしろすぎ。聞こえてないの~?」と。
彼女のその問いが好きだった。「私がいないとだめだね君は~」と言ってもらえてる気がしていた。
でも彼女の言う通りアラームは聞こえていなくて、いつも起きるのは彼女が起きてベッドから離れるときだった。
しずかにそっと、私を起こさないように。アラームとは真逆の彼女の優しい配慮。
彼女は先に起きて私の寝顔を見るのが好きだと言っていた。
私が好きだといった時間を彼女も彼女自身の好きな時間として楽しんでいた。
私の顔を見つめる視線とか
彼女の嬉しい時に少し高くなる声とか
照れた時に上唇ではむってするところとか
耳が好きって言ったらやたら髪を耳にかけてくれるところとか
寝るときにトントンして欲しいとねだるとことか
そして一瞬で寝ちゃうところとか
30分だけ仮眠って言ったのに1,2時間寝ちゃうところとか
私の寝癖を笑ってくれるところとか
すっぴんも天使過ぎてかわいいところとか
メイク終わった後のちょっとしたドヤ顔とか
私が鼻歌を歌ってたら静かにひっそり聴いてるところとか
改札で何回も私の方を見て愛おしそうにしてる姿とか
映画見ながら感情移入して喜怒哀楽が溢れるところとか
アニメキャラクターにあだ名つけちゃうところとか
自由奔放で好きなものに興味深々で超集中しちゃうとことか
本屋さんで一冊一冊丁寧に装丁を見るところとか
かわいいって言ってほしいのに強がって言わなくていいって言っちゃうところとか
変なところで張り合ってくるお茶目なところとか
マイペースなところとか
ひとりが好きなところとか
ふとした時に笑った顔がずっと頭に浮かんで愛おしくてたまらかった
一緒にいる時間はもちろん好きだけど
彼女が一人の時間を大切にしているのも好きである。
彼女のひとつひとつの所作に幸せの色があって私はそれを見つけるのがとても好きなのだ。
いるだけでよかったのに、1を受け取ると10、100と求めてしまう人の悪い性が出てしまっていた。
だから夢を見たのかもしれない。彼女がいない『0』の世界を。
寂しくて虚をつかんでしまう、悲しい世界を。
その夢を見てから、私は目と記録に残すために写真をたくさん撮るようになった。なんでもないけど澄んだ綺麗な日々を。
彼女は照れながらも写ってくれた。本当に可愛くて愛おしくてたまらなかった。
そうするうちに夢でも彼女がよく現れて、安心していた。
時折、馴れ初めを見て補充して。思い出に音をつけていった。
この感情を忘れないように大切に保管した。
よく彼女に好きな顔のタイプ違うのにと怒られていた。
でも私は昔から彼女の顔が好きだった。
それを伝えると「いーい。嘘つかないで~」とあしらわれていた。
だから彼女が寝ている間にたくさん顔を見て愛を伝えていた。
泡のように儚い日々が続く毎日で
弾けないようにやさしく包んで
ふわふわ浮かんで自由な時間
香る匂いが温かく優しい
澄んだ美しい世界を吸収して何色にでも変化させる
彼女を見守るのが好きだ
彼女は私が思っているより強くたくましい子だった。
そしてよく考える子だった。
名前が本当にぴったりな子だった。
そんなところも全部好きだった。
全部私のひとりよがりだけど、私の世界だった。
彼女の世界に入ることを許されている人は家族以外いないと思う。
私は時折、すこーしだけ許されていた。
また許してほしい。
まだ閉じたくないこの思い出を見つめては思いにふける。
弱弱しい人間だと思う。
そんなところも「優しさじゃん」って彼女はいつも支えてくれていた。
この話の終わりはなくて、ただ眠るたびに色んなことを思い出す。
私は記憶力とそこに置く感情を、表情をよく覚えてしまう。
死ぬときでさえも遥か昔の小学校の頃を思い出すだろう。
彼女とはたびたび会って私が一方的に愛でる日が続くと思う。
それを笑って少しは照れて許してくれるだろうか。
彼女の世界は広く明るい。澄んでいて、優しくも賑やかな香りがする。
そんな世界の景色をいつか一緒に観たいとまた思う。
それはゆっくり時間がかかっても。
実話でしょうか、空想でしょうか。




