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第7話 対電子戦AI首都防衛構想

「昨今、小型ドローンの電磁波兵器〔|指向性エネルギー兵器《Direct Energy Weapon》〕や超小型機械生物兵器マイクロデジタルウイルスによる脳ハッキングによる犯罪が密かに増加傾向にあります。具体的には電磁波によって脳の特定の部位を興奮させれば、人間の精神を操作するような洗脳効果がありますし、体内に送り込んだマイクロデジタルウイルスによる突然死などを誘発し、要人暗殺なども可能になっています」


 小室AI運用局長はそこで一息入れて、戦略自衛隊定例会議のメンバーを見渡した。

 そこは市ヶ谷の戦略自衛隊本部の高度地下の極秘会議室である。

 光源は淡い人工照明だが、薄緑の燐光のような不思議な光を放っていた。

 地味なブラウンの制服のお偉いさん方が、珍しく興味深そうな視線を自分に向けていた。

 小室は戦略自衛隊の秘密諜報組織<葛城班(かつらぎはん)>に所属していたが、中東紛争が停戦して撤兵したAIアンドロイド兵の運用転換を図ろうとしていた。


「そこで、首都圏にいるAIアンドロイド兵の総数約500名を活用して、それらの電子生物兵器による攻撃から首都を防衛できると考えています。具体的にはAIアンドロイド兵の電子戦ネットワークにより、小型ドローンや電子生物兵器の遠隔操作を妨害し機能停止に追い込んだり、逆にこちらのコントロール下に置いて兵器化したり、自爆や直接攻撃による破壊等も可能です。その隠れ蓑として、表面上はAI彼女や看護師などの医療従事者、記者など他の職業に就かせて、平時は諜報活動全般に従事させようと思っています」


 中東からお払い箱になったAIアンドロイド兵は、転用先を作らなければ、当然、運用停止か、あるいは機能停止され冬眠状態になるか。 

 最悪の場合、廃棄や解体処分になる可能性もあった。

 高価なAIアンドロイド兵を廃棄処分にはしないとは思うが、それも運用費用が嵩めばどうなるかは予断を許さない。


「なるほど、その電子生物兵器による攻撃から首都を防衛するという構想は悪くない。平時は諜報に従事させるのも良い。ただ、例の中東で問題を起こしたアンドロイド兵の再教育はどうなってる?」


 猿田彦(さるたひこ)参謀長が痛い所を突いてくる。


「はい。それについては雉真(きじま)AI部隊長自らが再起動(リブート)再教育(リプログラミング)を行っていて順調だと聞いています」


 一言一句、揚げ足を取られないように慎重に返答する。

 本当の所は何らかの不具合により本人の記憶が再現出来ず、暴走原因の手掛かりさえ掴めていなかった。


「それが本当なら安心だが、あのようなアンドロイドの暴走は君の所属する葛城(かつらぎ)班の進退にも関わってくるので、二度と再発しないように注意したまえ」


了解(ラジャー)


 こういう時は短く、勢いのみで返答するのが大事だ。


「……一応、信用しておくが、雉真(きじま)AI部隊長にもよく言っておいてくれ」

 

 猿田彦(さるたひこ)参謀長は念を押してきた。

 小室AI運用局長は姿勢を(ただ)して敬礼で返す。


 先日、起こってしまった首都騒乱の火種のような二つの事件。

 小型ドローンの電磁波兵器〔|指向性エネルギー兵器《Direct Energy Weapon》〕による全国十五カ所の山火事の同時多発。

 そして、奈良で起こった保守派の元首相暗殺事件。

 この事件も超小型機械生物兵器マイクロデジタルウイルスによる銃弾の無い暗殺事件であった。

 表向きは謎の狙撃銃による暗殺とされたが、特捜は事件の立件自体に苦労しそうである。

 未だに裁判の筋書き自体が出来ていないという。

 それらしい証拠を捏造するのも気が引けるのだろう。

 小室AI運用局長は暗澹(あんたん)とした気持ちで、猿田彦(さるたひこ)参謀長を見返した。




   △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽




「……心配して、損したよ」


 小室AI運用局長こと、AIアドバイザー室長はあまりの光景に笑いしか出なかった。

 大衆居酒屋「雉子(きぎす)」で、AI彼女がユーザーと飲み会をしているという情報を聞きつけて、激励でもしようと顔をだした。

 そこには天下無双ダジャレダンスラップおじさんこと、雉真が上機嫌でダンスしながらラップしていた。

 赤い忍者コスプレの衣咲と青い小悪魔コスプレの舞香はおじさんのバックダンサーやってるし、可愛い熊耳コスプレの雛に至ってはおじさんとラップバトル中だった。

 何故か彼女のユーザーの結都が雛のバックコーラスを担当していた。 

 マスターはDJしながらラップのリズムを刻んでた。

 ホント、心配したのが損した気持ちになるほどの楽しい宴会だった。

 こうなったら、俺も踊ってやる。

 首都圏は今日も平和だった。

書き下ろし 続編

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