第2話 悪癖
最初こそは戦える武器商人に感心した。しかし街に着けば見境なく女性に声をかけ、宿に戻らず朝帰りなど日常茶飯事。慣れた頃には宿はパリス一人分しか取らなくなった。
それだけならパリスも呆れるくらいで済んだ。だがギルバートは女性に声をかける時に決まってこう言うのだ。
「ねぇそこのお嬢さん、俺と一緒に魔王討伐しに行かなぁい?」
国王からの、強いては民の為の任務に一般人を誘うことも、任務を軽視しているようなギルバートの言動が、勇者として聖剣に選ばれたパリスには許せなかった。
直接文句を言うもギルバートはどこ吹く風と聞き流し、また同じ誘い方で女性に声をかける。
それでも戦闘面では申し分ない戦力で、街で買い物をする時などの交渉は商人としては口が回る。
そして何よりも、本業である武器防具の用意が異常なほど早いのだ。
例え戦場でも届けると言ったギルバートの言葉はそのままの意味だった。
パリスが野盗に聖剣を弾き飛ばされた時、咄嗟に剣と短く叫んだ瞬間、自分も交戦中にも関わらず、ギルバートはパリスに斬りかかる野盗の喉元めがけてパリスが使いやすいだろう細身の剣を投擲したのだ。
「ご注文の剣、お待たせしました」
そして血溜まりに倒れる野盗の首から剣を抜き、パリスに武器商人としての笑顔で渡した。
それくらい武器商人としては優秀なのだ。