表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

プロローグ〜マタイによる福音書

〜* イエスはパンを取り、これを裂き、弟子たちに与えられた。「これは、あなたがたのために与える私の体である」 杯を手にこう言われた。「この杯は、あなたがたのために流す私の血である」 *〜




 日本のとある海辺の街。卒寿を迎えた白髪の老人が、一人、乗用車を走らせている。正確に言えば走らせているのは老人ではない、AIだ。かつて、彼くらいの年齢になれば、運転免許証を返上したらしいが、今や人がマニュアル運転をすることは、法律で禁じられている。


 フロントガラス越しに見える住宅の庭には、向日葵の花が揺れている。坂道を登れば、遠く水平線に血糊のごとく紅い夕日が沈もうとしていた。


「便利になったのか、不便なのか……。どうやっても法定速度以上では、走れないな」


 独り言を呟いた彼、鈴木琉海は、無二の親友、夏江涼、危篤の知らせを受け、彼の入院するホスピスへと急いでいた。


 海を望む木造二階建てのホスピスは隣接するフェーレス教会が経営している。白い十字架が沈む日の光を受け柿色に輝く中、米国テセラ製の自動運転車は静かに駐車スペースに止まった。


カチャリ、シューーン


 水素エンジンのイグニッションを切った琉海の左手のドアが音もなく開く。


「イタタタ……」


 去年から患っているヘルニアで痛む足にも構わず、琉海はホスピスの玄関へと走った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ