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怪談遊戯~紅葉語り~  作者: 雪鳴月彦
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第五話:引き込む腕

「墓地に纏わるお話、二つめはNさんという女性が高校生時代に体験されたお話です」





 確か今から四、五年くらい前になるでしょうか、Nさんが高校二年生の秋に家族でお墓参りへ行かれました。


 そのお墓には、数年前に他界されたお爺さんが入っており、Nさんとご両親、そしてお婆さんの四人で訪れたのだそうです。


 家族全員で墓石の掃除や花を供えたりし、最後に線香に火をつけ順番にあげていく。


 まずはご両親、次にNさんが、最後にお婆さんの順で線香をあげ、それぞれが手を合わせた。


 特にお婆さんとっては、眠っているお爺さんは自分の伴侶ですから、特に長い時間手を合わせていたそうです。


 そんなお婆さんの姿を眺めながらNさんが立っていると、墓石の下、お爺さんの遺骨が納められている辺りから、突然薄く透けた細い腕が二本、伸びてくるのが見えた。


 え? 何これ?


 驚きながら側に立つ両親へ視線をやるも、二人とも全く気がついている様子もなく帰る準備を始めている。


 そうしている間にも、その腕は墓石の前に屈んで手を合わせているお婆さんの顔の方へとスゥー……っと伸びていき、まるでボールを掴むようにしてお婆さんの頭へ触れた。


 何が起きているのかはわからないけれど、これは駄目なもののような気がする。


 そう直感したNさんがお婆さんの側へ寄ろうとするのとほぼ同時に、伸びてきた腕がお婆さんの頭を引っ張るようにして下へ戻り始めた。


 危ない!


 腕の動きに合わせてお婆さんの身体が前へ傾くのを見たNさんが、慌ててお婆さんの肩を掴んで支えると、謎の腕は逃げるようにして墓下へと消えていなくなった。


 掴まれていたお婆さんは、まるで自覚がなかったのか、


「あらあら、ちょっとバランスを崩しそうになっちゃったわね。ありがとうね、Nちゃん」


 と、何ともない風に笑いながらNさんを見上げた。


 自分が今見たモノを告げることもできず、Nさんも愛想笑いを浮かべてその場をごまかすしかなかったそうだが、この時に見た腕が何だったのかずっと忘れることができずにいたという。


 そして、謎の腕を目撃した日から約半年後。


 それまで元気だったお婆さんが突然体調を崩して入院し、そのまま帰らぬ人となってしまったそうで。



 Nさん、あの時お墓から出てきた腕は、死期が近づいていたお婆さんを迎えるために、お爺さんが伸ばしてきた腕だったのかもしれないと、今はそう思っているそうです。

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