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怪談遊戯~紅葉語り~  作者: 雪鳴月彦
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第四十一話:取り戻し

 次の話は、大阪に住む男性Oさんから聞いたお話になります。


 これはお話を語ってくれたOさん本人ではなく、ご友人が体験したと言って教えてもらった怪異なのだそうです。





 Oさんの友人は、中学生の頃に何度か空き家へ入り込んで遊んでいた時期があったらしく、この体験もその遊びが関係している内容でした。


 当時の友人は、住んでいる町内の空き家を見つけては、大人たちの目を盗んで入り込むことを繰り返しており、特にそれ以上の悪さをするわけでもなく、単に冒険心を満たしたいという思いと、誰かに見つかるのではというスリルを味わうのが一番の目的だったそうなのですが、一度だけ、魔が差してしまい家の中に残されていた残留物を自宅へと持ち帰ってしまったことがあったのだそうです。


 何か小さな玩具おもちゃかキーホルダーのような物であったそうなのですが、それが放置されているのを発見し、気になって持ち去ってしまった。


 そうして、それから数日が過ぎた頃。


 朝友人が目を覚ますと、持ち帰ってきたその残留物が、どういうわけか部屋の入口付近の床に落ちているのを見つけた。


 ちゃんとしまっておいたはずなのに、どうなってるんだ?


 不審に思いつつ、まさか夜中に家族が部屋へ入り込んで家探しみたいなことをしてるんじゃないだろうなと、家族へ警戒心を抱いた友人は、その日の夜は部屋のドアに鍵を掛けて就寝をした。


 しかし、翌朝目を覚ますと、やはり持ち帰ってきた残留物が入口の前、ドアのすぐ下に落ちているのが目に飛び込んできた。


 寝る前には、ちゃんと机の引き出しにしまってあることも確認している。


 ドアだって、鍵が掛かっていた。


 ならばどうして、あれは勝手にドアの前へ移動しているんだろうか。


 意味がわからず、恐くなった友人は次の休みにその残留物を元の場所へ戻してこようかと悩んだという。


 どうにか自分をごまかしながらまた一日を過ごし、不可思議なことが起き始めて三日目の夜。


 残留物を机の奥へしまい込み、部屋のドアの施錠を確認したOさんは布団へ入り就寝したが、どうしても落ち着かないこともあってその日は部屋の明かりを全ては消さず、豆電球だけ点けておいたのだという。


 やがて眠りに落ち、数時間が経過した頃。


 何やら部屋の中でカタコトと物音がしたような気がして、Oさんは目を覚ました。


 まるでネズミか何かが動き回るような微かな物音に、Oさんは何だろうと思いながらそっと身を起こし、オレンジ色の明かりで染まる自分の部屋を見回した瞬間、驚きで寝ぼけていた目を見開いた。


 部屋の床に、白い影のような手首が這っていた。


 それは、Oさんがしまい込んだはずの残留物を指に引っかけ、ゆっくりとした動きで入口の前まで移動していくと、やがてドアを擦り抜け廊下へ消えていったのだという。


 その際、ドアに当たった残留物だけがカチャリと音を立ててその場に残り、朝目にするのとほぼ同じ位置に取り残された。


 直感で、そういうことかと理解したOさんは、その晩を布団を被ることでやり過ごし、翌日学校が終わるとすぐに持ち帰ってきた残留物を元の空き家へ返しに行った。


 それが正解だったのか、その日からは謎の白い手を見ることもおかしな現象が起きることもなくなり、普通に生活をすることができるようになったという。





 空き家に残された、ガラクタにしか見えない物も、そこに住んでいた方にとっては大切な思いが詰まった物である。


 これはきっと、そういうことを示している怪異なのかもしれないと、話を聞いてわたしは解釈をしました。


 例え空き家や廃屋であっても、やはりそこにある物を勝手に持ち帰るという行為はしな方が身のためなのかもしれませんね。

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