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怪談遊戯~紅葉語り~  作者: 雪鳴月彦
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第二十一話:誰かの赤

 その日、あたしは授業中にトイレへ行きたくなって、それで先生に言って席を立ったんです。


 理科の授業をしていて、教室ではなく理科室に移動していたんですけれど、その理科室が三階にあって。


 あたしの通う学校は三階には普通の教室がなくて、全部音楽室とか多目的室とか、特別な授業に使う教室しかないので、授業中に一人で廊下を歩くとすごく静かな場所なんです。


 なので何だか少しいつもとは違う変な気分になりながら、あたしはトイレへ入り特に何事もなく用を足したんですけど、個室から出て手を洗って、また教室へ戻るためトイレから出ようとした時でした。


 女子トイレの個室は三つあって、そのうちの一つから「……う」って、一瞬だけ誰かの呻き声みたいなのが聞こえた気がしたんです。


 それであたし、驚いて振り返ったんですけど、個室のドアは誰も使っていない時は開いた状態になっているはずなのに、あたしが見た時は全部開いていたんです。


 だから、個室に人がいるなら、どれか一つはドアが閉まってないとおかしいなって思って。


 ひょっとしたら、誰か授業をサボって隠れてたりしてるのかななんてこともちょっと考えたりしながら、あたしはそっと個室の方へと引き返していきました。


 あたしが使ったのは一番手前の個室でしたから、そこに誰もいないのはわかります。


 なので、真ん中の個室を最初に覗いてみたんですが誰の姿もありませんでした。


 となると、残ってるのは一番奥の個室になるので、あたしはそっと身を乗り出すようにしてその奥の個室を覗いたんです。


 そしたら……。


 誰も、いなかったんです。狭い個室ですから、隠れる場所もないし上の隙間みたいな場所から隣の個室へ移動して逃げるとか、そんなことをすればあたしが気づきますし。


 本当に、人の姿はなくて。


 ただ……個室の中にある便器の蓋が上がってて、その中、真っ赤だったんです。


 その……小学生でも、生理になる子はいますから、急いでたりして流し忘れちゃったのかなと、思ったんですけど。


 そのままにしておくのも気が引けるし、他の人が見つけて噂とかになる前に流しておいてあげようかなって、あたしその個室に入って水を流す……レバーって言うんでしょうか、あれを触ろうとしたら……。


 あたしが触れるより一瞬早く、勝手にレバーが動いて水が流れ出したんです。


 便器の中に溜まってた赤い水が、全部吸い込まれるように消えていって、普通の透明な水に変った後も、あたしは驚いたのと恐いのとで暫く動けずにいたんですけど、たまたま廊下から先生の足音が聞こえてきたので、それをきっかけにして慌てて廊下へ逃げました。




 最初に聞いた小さな呻き声も、トイレの血に染まった水も、勝手に動いたレバーも、作り話じゃなくて全部本当に体験した出来事です。


 あの時、トイレの中にはあたし以外にもう一人、見えない誰かがいたんでしょうか?


 この話を友達は誰も信じてくれないので、真実は今でもわかりません。




 以上で話は終わりです。聞いてくださってありがとうございました。

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