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怪談遊戯~紅葉語り~  作者: 雪鳴月彦
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第十九話:鏡に映る自分

 Uさんという、二十代の男性の方がいるのですが、その方は心霊番組や心霊スポット巡りが好きな方で、よくDVDをレンタルして観たり一人で幽霊が出ると噂される現場へ出かけたりしていたのだそうです。


 心霊スポットへ出かける時は、大抵事前に情報を調べてから出かけていたそうなのですが、数年前の冬、年が明けてまだ一週間程しかたっていない頃に、詳しい場所は聞かされませんでしたが、ネットの掲示板で知ったという海沿いにある廃ホテルへ新年最初の肝試しへと向かったらしいのですが、そこに出向いたせいで、Uさんは酷く後悔することになってしまいました。


 カーナビを頼りに車を走らせ、昼過ぎくらいには目的の廃ホテルへと辿り着いたUさんは、そのまま適当な場所へ車を停めると、特に躊躇することもない軽い足取りでホテルの中へと侵入した。


 そこはもう十数年も前に経営破綻をしてしまったホテルで、中は人で賑わっていたであろう頃の名残りをあちこちに残したまま、長い年月をかけて静かに劣化している状態をさらし、当時使われていた備品もあちこちに残されていたと言います。


 誰もいない無人のホテルを一人探索しながら歩いていくと、四階にある一室、恐らくは客室であろうとのことでしたが、別の部屋とは妙に雰囲気が異なる部屋があるのを発見した。


 他の部屋はほぼ全て同じ内装で、カーテンが開けられた状態の明るいイメージがあったそうなのですが、その中に一部屋だけ、カーテンがピッチリと閉め切られた暗い部屋があり、そしてどうやらそこには以前に誰かが入り込んでいたことを示す痕跡も残されていたと言うのです。


 その痕跡というのが、部屋の床、ちょうど中央付近に赤いチョークのようなもので魔法陣が描かれており、何かの儀式をするために使用したのか蝋燭ろうそく立てや黒い塊と化したよくわからないものが、その魔法陣の中に転がっていた。


 どれも埃を被り、かなり前に使われた物だということはすぐにわかったものの、これにはUさんもさすがに薄気味悪くなったそうです。


 カルトマニアか何かが自分みたいに勝手に入り込み、儀式の真似事をして遊んでいたのか。


 そんな憶測をしながら室内を見渡したUさんは、そこで壁に一枚の鏡が取り付けられているのを発見した。


 確か他の部屋にはこんな鏡もなかったな。


 これもカルトマニアが持ち込んだのだろうかといぶかしみながら、Uさんが何気なくその鏡へ近づき鏡面を覗き込んだ瞬間。


 Uさんは思いきり仰け反るようにして悲鳴を上げると、一目散に部屋を飛び出しホテルの外へと逃げだしました。


 興味本位で覗き込んだ鏡の中に映った、自分自身の目。


 その両目が、まるで毛細血管が全て破裂でもしたかのように真っ赤に染まっているのを見てしまったのが逃げた原因だそうで。


 自分のものであるはずの赤い両目が、鏡の中から睨みつけるような敵意のこもった視線を返していたのがUさんの脳裏に深くこびり付いてしまい、この一件があって以降はもう廃墟へ出向くことだけは一切しなくなったのだそうです。

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