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8週目.稲庭うどんと海老づくし

今日の俺はとても機嫌が良かった。

先々週の重めの仕事の編集費が予定より多く請求できることが決まりルンルンだった。


「よし、今日はユイを喜ばせる料理を作るぞ!」

歳のせいか、一人暮らしが長いからから、年々独り言が増えていた。

「ちゃんと取り寄せたものが今日届いたからな」


俺は床に置いてある段ボールから箱を取り出した。

中には稲庭うどんの乾麺と麺つゆとごまだれが入っていた。


「ざるうどんでいいかな?麺つゆとごまだれあるし。あとはあれを解凍して、作り始めますか」


俺は冷凍庫から冷凍された海老を取り出した。

この海老はネットで注文して大量に届いた天使の海老だ。

ネットでの生食可とプリプリで美味しいという評価を信じて購入してみた。


流水で海老を解凍していく。

解凍が終わり、海老の頭と殻と背腸を取っていく。

かき揚げ用に海老数匹をぶつ切りにし、玉ねぎも切る。


俺は鍋に油を入れて火にかけた。


天ぷら粉を水で溶き、衣をつけた海老を熱くなった油に投入していく。

ぶつ切りの海老と玉ねぎは生地と一緒に混ぜてから油に投入していく。


「よし、天ぷらはこれでオッケーだな。海老はまだあるし、刺身でも食べれるようにしとくか」

俺は刺身を準備して、タブレットを近くに置いて連絡を待った。



▽ ▽ ▽



トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪


タブレットが鳴った。

俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。


「すまん、ちょっと遅くなっちゃったな」

ディスプレイに映るコータは血だらけだった。

俺は物凄く焦った。

「おい!怪我したのか?」

「いや、全部返り血」

「びびったー。てかなんでそんなことになってんだよ」

「いや、聞いてくれよユーサク!先週潰した盗賊の親組織に人を拉致するように指示を出してた奴隷商がわかったってラドニークから連絡が来たんだよ。それで冒険者ギルドに奴隷の救出の依頼を出すから、受けて欲しいって言われたの。異者の宴ってEランクだからさ指名依頼っていうのを受けられないんだよ。だから普通に依頼出すから受けてくれって言われて、それを受けて奴隷を救出しに行ったの。そしたら敵がわんさかわんさか出てきてさ、それ倒しまくってたら返り血だらけよ」

「なんかすごいな、そっちの世界」

「うーん。なんかこっちの世界のやばい組織と手を組んでたみたいなんだよねー」



そんな話をしていると、コータの後ろにユイとボロボロの服を着た男性がやってきた。

「ん?その人は?」

「あーなんか奴隷商で働かされてた奴隷の1人。奴隷の契約とか解放とかが出来るエクストラスキルを持ってるから、無理矢理手伝わせられてたらしい」

ボロボロの服の男性は不思議そうにこっちを見ていた。


「それでその人がなんでここにいるの?」

「あー。なんか俺達についてきて、奴隷を助ける活動がしたいんだと」

「ん?」

「俺達と一緒に行動をして、俺がもし違法に捕まった奴隷を見つけたら解放してくれるみたい」

「それはよかったじゃん」

「うーん。まあ、今のところはね」

コータは男性の仲間入りをあんまり納得してないようだった。


「まあ、グダグダ言っててもしょうがない。ユーサク、次回からは3人分の料理頼む!」

「わかった、今日はざるうどんだから多めに茹でるわ」

「助かる!」


俺はキッチンに行き、タイマーをセットしてうどんを茹で始めた。

「今日は稲庭うどんだから。タレは2つ付いてたから、両方とも転送するから。あと海老天と海老のかき揚げ、海老の刺身ね」

「うおー!海老最高だ」

「えび?」

「海老はプリプリでうまいぞー」

「んー?」

ユイは海老を理解できてないようだ。


ピピピ!ピピピ!ピピピ!


キッチンに行き、うどんを取り出して水でしめた。

皿に盛りつけて、テーブルの上に並べた。


部屋の端っこに積まれてる段ボールから日本酒のミニボトルを取り出した。

「今日の飲み物は山形の日本酒飲み比べでいい?それとも酒はいらない?」

「日本酒とお茶を!」

「ユイはみかんジュース!」

「りょーかい」


俺は飲み物をテーブルに乗せた。

「転送!」


テーブルの上のものが光ってなくなった。

カウントダウンが始まった。


「今日も美味そうだな!」

「これが海老?」

ユイは海老天を指さした。

「そーだぞ!後で食べような」

「はーい」

ユイは初めて見る食事にワクワクを隠せていなかった。


その様子をボロボロの服の男性が見ていた。

「君の分もあるから、ちゃんと食べなよ」

男性はびっくりしたように俺を見ている。

「あっ!紹介を忘れてた。さっき説明した、旅に同行するヤリネだ。ヤリネ、こいつはユーサク。俺が元いた世界の友人だ」


ヤリネはキョトンとしている。

俺はそんなヤリネに声をかけた。

「ヤリネ、よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

「ヤリネの分のご飯もあるから、しっかり食べてね」

「あ、ありがとうございます」

ヤリネはまだ状況を理解していないようだった。


「ヤリネ。こっちきて座れ!一応歓迎会だから、いっぱい食べろよ」

「は、はい」

3人はうどんを食べ始めた。


「つるつるー!」

「こんなの初めて食べました!」

「うま!海老天もプリプリで美味い!」

「プリプリ!」

3人共喜んでいるようで良かった。


「みんなの口に合ってよかった。コータ!来週の金曜日、何食べたい?」

「来週は…」


コータが喋ってる途中でディスプレイは暗くなった。



「来週も俺のおまかせかな?」

俺は自分用のうどんを食べ始めた。



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