表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/92

34週目.クラブハウスサンド

元の時代に戻ってから、数日はユイと一緒にスラム街に潜入した。

スラム街は思っていたよりも狭かった。

イルジンの話では王都のスラム街は昔から住んでいる人が大半で、新たに人が増えることは滅多にないらしい。


「怪しい奴はいないな」

「うん。被害者について詳しい人もいなかったよ」

手がかりは全然見つからなかった。

変装するスキルをもし手に入れてるなら、目撃情報とかも意味がない。


「コータ。あれ!」

ユイが指差す方向には人が集まっていた。

俺達も行ってみると、顔が完全に潰れた女性の死体が転がっていた。

首元に手形の痣があった。


「ユイ!イルジンに報告を」

「うん、わかった」

ユイはイルジンの元に向かった。

俺は野次馬をどかし、現場が荒れないようにした。


死体の顔がぐちゃぐちゃで身元が分からない。

服装から被害者は平民の女性。

スラム街の住人よりも綺麗な身なりだから、殺されてスラム街に捨てられたのだろう。

野次馬にいつから死体があったかや、死体を運んできた人物はいないか聞くが情報ゼロ。


数分すると衛兵がやってきた。


「ユイの相棒か?」

「はい。コータです。この死体に手形の痣があります。目撃者もいないです」

「わかった。ここは我々が対応しよう」

「お願いします」

俺はユイと合流し、宿に戻った。


「なかなか上手く行かないな」

「そうだねー」

「ユーサクに話をしたら整理できるかな」

「お腹もすいたし、ユーサクに会いたいな!」

「よし。じゃあ呼び出そう」


俺はタブレットを手に取った。


▽ ▽ ▽


俺はコータ達の食事を久々に家で作っている。

『異世界調理』が便利すぎて、下準備もあっちの世界に行ってからやることが多くなっていた。


「さすがに目立ちたくないからな」

俺はベーコンを何枚も焼いている。

作っているのは宿屋でも食べやすいクラブハウスサンドウィッチだ。

冷凍のイチゴを買ってきたので、シェイクも作る予定だ。



タラララランラン♪タラララランラン♪


タブレットが鳴った。

「お呼びですね」

俺はレッドホーミングのマスクを装着した。

いつもの気絶をするような衝撃に襲われた。


「ディフィバースの世界にようこそ!」



目を開くと見慣れない部屋にいた。


「待ってたぞ、ユーサク」

「ん?腹減ってるのか?」

「腹も減ってるけど、色々話を整理したくて」

「事件の?」

「ああ」

「じゃあ、食べながら話そう」


俺は『異世界調理』でシェイクを作り、既に出来ているクラブハウスサンドをテーブルに出した。



「それで何かあったのか?」

「ああ、それが…」

俺はコータに事件について聞いた。


▽ ▽ ▽


「うーん。犯人になんか目的あるのかな?」

俺とユイは食事をしながらユーサクの話を聞いてる。


「目的か。まだわからないな」

「今まで身元不明の被害者はいたの?」

「スラムの子供だけかな」

ユーサクは色々考えている。


「俺なら身元不明の人に変装するな」

「え?」

「今回の被害者を身元が分からないようにした理由を考えたんだけど、その人に変装して何かしたいんじゃないかな」

「あり得るな、それ」

ユーサクの話を聞いてすごくしっくりきた。


「タブレットって『鑑定』できるよね?死体はできないの?」

「できるはず」

「なら調べた方がいいかも。意外と重要な人物かもしれないし」

完全に忘れていた。

なんで死体を『鑑定』しなかったんだ。


「ユーサク、すまん。ちょっと行ってくる。ユイはゆっくり食べてていいから」

俺はすぐにイルジンの元に向かった。



衛兵の詰所に着き、イルジンを呼んでもらう。


「ライルさん。どうしましたか?先ほどの件ですか?」

「はい。もし本当にスキルを奪っているのなら、今日の被害者に変装してるかもしれないです。なので被害者の身元を調べたいです」

「ちょうどいま鑑定士を呼んでいます」

「本当ですか」

『鑑定』を始めていると聞き、俺は安心した。


鑑定結果の報告を待っていると、衛兵が慌ててやってきた。

「イルジン隊長!大変です。被害者はフモース男爵夫人です」

「「え?」」

俺は驚いた。

イルジンもまさか貴族が被害者だと思っていなかったみたいだ。


「イルジンさん。変装して貴族の家に忍び込んでいるかもしれません」

「そうですね。すぐに兵を集めてくれ。フモース男爵邸に向かいます」

「はい!」

衛兵はすぐに出て行った。


「俺も同行していいですか?」

「すみませんがお願いします。戦闘の可能性もあります」

「はい。わかりました」

俺はユイを呼ぶか悩んだが、スピードが大事だと判断して呼ばないことにした。


▽ ▽ ▽


フモース男爵邸に到着した。

貴族街に初めて入ったが、家の造りや素材が平民街と全然違った。


イルジンが門兵に話をし、敷地内に入る。

門兵達は大量の衛兵が来て驚いていた。


館の中に入ろうとすると、爆音と共に館の2階が壊れた。

「全員、警戒態勢」

「「「は!」」」

イルジンが衛兵に指示を出す。


壊れた箇所から何かが落ちてくる。

中年のおじさんの死体だ。

「フモース男爵!!」

イルジンが声をあげる。


2階を見ると大剣を持った中年女性が見下ろしていた。

「イルジンさん」

「あれは…フモース夫人だ」


中年女性の顔や体形が少しずつ変化し、冴えない中年男性に変わる。

「やったぞ!!!!あのクソ試験官から奪ってやったぞ!あははははは!」

中年男性はフモース男爵の死体を見ながら高笑っている。


「お前!何者だ!」

「あ?」

中年男性が大剣を振ると斬撃が飛び、叫んだ衛兵が斬られて倒れる。


「イルジンさん、攻撃しても?」

「ライルさん。いつでも」

俺はそれを聞き、連続殺人犯を火の檻で囲う。


「あ?なんだこれ」

俺は困惑している連続殺人犯に石の矢と火の槍を飛ばす。


「ぐああああ!」

俺の魔法が連続殺人犯の身体に刺さる。

「邪魔するな!!!!俺はまだ強くならなくてはならないんだあああああ!!」

犯人は叫びながら大剣を振り回す。

火の檻は破壊される。


男は剣を持ち、回転をする。

すると突風が起き、館はガタガタと震えだした。

俺は魔法を放つが、風に防がれてしまった。


「俺はこれからもっと強くなる!!そして俺を認めなかった全ての者に復讐するんだああ!!」

男は叫び続ける。


「そんな無意味な事するなよ」

俺は男に近づき、脚を岩で覆って動けなくする。


「ははは!!こんな魔法で俺を止められると思うな!!」

男は大剣で岩を簡単に破壊した。


風はどんどん勢いを増し、竜巻が起きる。

竜巻は館の内部から発生しているため、館は崩れていく。


「「「うわああああ!」」」

「助けてくれええ!!」

館の使用人達や衛兵達が竜巻に襲われる。

館の破片が竜巻に吞み込まれているせいで、殺傷力が増していた。


「まずいか?」

俺は犯人に攻撃をしていたが、勢いが増している竜巻を止めることにした。

風魔法を竜巻に当て続ける。

王都内だから魔法の威力を押さえているせいで時間が掛かったが、なんとか竜巻を相殺させた。


竜巻でフモース男爵邸はほぼ全壊。

連続殺人犯には逃げられてしまった。

俺は宙を蹴り、辺りを見渡すが見つけることはできなかった。


俺はイルジンの元に行く。

竜巻のせいで使用人や衛兵が数人怪我をしていた。


「すみません。逃げられました」

「いえ助かりました」

イルジンは申し訳なさそうにしていた。


「これからどうします?」

「貴族が殺されたとなると国王に判断を仰ぐことになるかと。それまではライルさん達に動いてもらうことはできないかもしれません」

「わかりました。落ち着くまでは伝えている宿屋にいるので、何かあったら連絡してください」

「はい。ありがとうございます」

俺はイルジンと別れた。


フモース男爵邸の周辺を探してみたが、やはり見つけることはできなかった。



▽ ▽ ▽



翌日。

俺とユイは宿屋で待機をしていた。

国王が判断するまでは動かない方がいいだろう。


「コータ、犯人はどんな人だったの?」

「うーん。なんか戦闘とかしたことないような見た目だった」

「え?そうなの!?」

犯人は小太りの40代前半くらいで、訓練などはしていなそうな体つきだった。


宿屋の食堂で昼食を取っていると、衛兵がやってきた。

「コータさんとユイさんですね?」

「はい」

「イルジン隊長がお呼びです」

「わかりました」


俺とユイは急いで昼食を口に入れ、衛兵の詰所へ向かう。


案内された部屋にはイルジンがいた。

「わざわざありがとうございます」

「何かあったんですか?」

「国王から討伐命令が出ました」

「なるほど」

イルジンから詳しい話を聞く。


犯人の情報がわかった。

犯人の名前はロンドリックという平民。

数年前まで騎士を目指し、騎士団の入団試験を受けていたそう。

フモース男爵は紫棍騎士団の部隊長で、ロンドリックが最後に受けた試験の試験官だったようだ。

不合格にされた私怨なのか、それとも他に理由があったのかは不明だがフモース男爵を狙っていたのは確かだろう。


フモース男爵のエクストラスキルは風を剣に纏わせたり竜巻を起こす能力。

超高度な変装もしていたし、ロンドリックがスキルを奪えるのは確定だ。


ロンドリックの捜索は紫棍騎士団が中心に動くそうだ。

なので俺とユイの捜査は終了だ。


「わざわざカラッカから来てもらったのすみません」

「いえこちらもあまり力になれなくてすみません。もう少し王都にいるつもりなんで何かあったら連絡ください」

「わかりました」

俺とユイは詰所を出て、宿に戻った。



ロンドリックの「俺を認めなかった全ての者に復讐する」が気になったから王都にいることにしたが、やることが無い。

「ユイ、何かしたいことある?」

「うーん。コータと冒険者ギルドの依頼を受けたい!」

「あー。王都の冒険者ギルドはちょっと気になるな。明日行ってみようか」

「うん!いこー!」


俺とユイは夕方まで王都観光を楽しんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ