31週目.初ガツオ三昧
俺とユイはフォレストホースに乗って王都に向かっていた。
「今日はユーサクのご飯の日だよね?」
「そうだな。何を作ってくれるか楽しみだな」
「うん!」
ユイは嬉しそうに微笑んだ。
今回の王都にはベロニカは連れて行かなかった。
再生の繭で治療中のベロニカはラドニークとヤリネに任せた。
俺が目一杯魔力を注いでおいたし、ラドニークも毎日魔力を注いでくれるから治療も進むはずだ。
再生の繭もまだ不完全な物しかできないから、旅先で何度か作る予定だ。
ユイの『邪神斬り』は邪神の攻撃を破壊するスキルらしい。
ベロニカのように邪神の攻撃を食らって、怪我が治りにくくなるのを防げる良いスキルだ。
他にも邪神本体に攻撃が効くらしいが、封印された魔石に操られている奴に聞くかは不明だ。
「それにしてもこのフォレストホースは大人しいな」
「ユイが毎日お世話をして話しかけているからね」
ユイが仕事で出るときにヤリネから毎回借りているモンスターらしい。
ヤリネには『テイム』を取得している部下がいるらしい。
「ユイも話せるモンスターもいるから、そのうち『テイム』を取得するかもね」
「うん。でもユイは『テイム』なくても仲良くできるからねー」
ユイは誇らしげに言う。
ユイは6年を埋めるように、いろんな話をしてくれる。
俺はそれをニコニコ聞きながら、王都へ向かった。
▽ ▽ ▽
朝の市場は人が多い。
俺は今日の料理のために市場に来た。
美味しい魚で料理を作るつもりだ。
市場を歩いていると[初ガツオ]の文字が目に入る。
「ありだな」
俺は頭の中でレシピを考えた。
「うーん。多めに作るとしても3匹は要りそうだな」
俺は決心し、初ガツオを3匹購入した。
俺は発泡スチロールの箱を持って、タクシーに乗って帰宅した。
まさかこんなに魚が重いとは思っていなかった。
普通に電車で帰る気だった。
家に帰ってきた。
クソ重かった。
下準備をしようと思ったが『異世界調理』でやった方が早い。
メニューは決まっているからすぐできるはずだ。
カツオのたたき・マヨ味噌のオーブン焼き・竜田揚げ・あら汁。
これはご飯が進む。
炊飯器の準備だけしておこう。
昼過ぎ。
タラララランラン♪タラララランラン♪
タブレットが鳴った。
「よし!やっとか!」
俺はレッドホーミングのマスクを装着した。
いつもの気絶をするような衝撃に襲われた。
「ディフィバースの世界にようこそ!」
目を開くとコータとユイがいた。
辺りを見渡すと外だ。
街も近くに無さそう。
「もう出発してたのか?」
「うん。この前のご飯の次の日に出発したよ」
ユイは笑顔で答えた。
「ユーサクー。腹減ったぞー」
「すぐ作るから待っててくれ」
「頼むー」
コータはかなり腹が減っているみたいだ。
「異世界調理!!」
俺がそう言うと、調理器具が現れて初ガツオを捌いていく。
俺も1匹捌く。
少しは俺の料理レベルも上がった。
拙いがしっかり捌けた。
「ユーサク!今日は何だ?」
「市場で初ガツオを買ってきた。色々作るから楽しみにしておけ」
「おお!期待してる!!」
コータは目を輝かせた。
俺は塩を振ったカツオのサクの表面をバーナーで炙り、冷水で冷やす。
居酒屋とかで藁焼きとか見てたからやってみたかった。
全然藁焼きとは違ったが、雰囲気は味わえた。
水をしっかりふき取り、厚めに切っていく。
更に並べていると、薬味が勝手にさらに乗る。
『異世界調理』は本当に便利だ。
他の料理も出来たみたいだ。
「よし。コータ、ユイ!食べれるよ」
「よっしゃ」
「やったー」
俺は茶碗にご飯を装う。
「じゃあ食うか」
「どうぞ」
「「いただきます!」」
2人は初ガツオを食べ始める。
「このお魚美味しいー!」
ユイはたたきが好みみたいだ。
「ユーサク!この味噌のやつ美味すぎ!」
「味噌マヨね」
コータはオーブン焼きを食べながら、白米をかき込んだ。
俺も竜田揚げを食べる。
「うん。いいじゃん」
俺達は夢中で初ガツオを堪能した。
▽ ▽ ▽
食事も終わり、今後の予定をユーサクに伝える。
「来週はまだ王都にはついていないと思う」
「結構遠いんだな」
「ユイとの時間をちゃんと過ごすために、魔法を使わないで移動してるからな」
「ずるいぞ」
「いいだろ」
ユーサクは悔しそうだ。
「次は面白そうなところで呼ぶから」
「は?」
「ユーサクも戦わないと身体が鈍るだろ?」
「正直戦ってはみたいけど、来週は仕事が山積みの可能性がある」
「じゃあ飯は買ってきたものでいいよ。でもダンジョンとかは見つけておくから攻略しようぜ」
「わかった。美味しい物を買っておくわ。ダンジョンも変に期待せずに待ってるよ」
ユーサクも戦力になるし、慣れるためにモンスター狩りはやっておいた方がいい。
「移動するなら、俺はもう帰ろうかな」
「そうか。来週も頼んだ!」
「ユーサク!美味しかったよ!ありがとう」
ユイはユーサクに抱き着いた。
うちの姫は本当にかわいい。
ユーサクと別れ、俺とユイはフォレストホースに跨った。
▽ ▽ ▽
数日移動をした。
もうラドニークが治めるカラッカ領ではないのだろう。
村を何個か見かけたが、とても裕福とは思えなかった。
「ここら辺はなんてところかわかる?」
「ここはねー。たぶん隣領のソブラ領だと思う。ソブラ領は盗賊も多いけどコータなら平気だよね?」
「盗賊ごときにやられないよ」
「だよね」
ユイは笑顔で言った。
カラッカも特に裕福ではないが、このソブラ領は少し心配になるレベルだ。
やはりラドニークは領主として優秀みたいだ。
「ユイは王都に行ったことあるんだっけ?」
「あるよー」
「凄いな」
「でしょ?」
ユイは嬉しそうだ。
地図もユイ任せだし、このままだとユイの介護無しでは異世界で生活できなくなるかもしれない。
「だらしないなー。コータもこの世界の地理くらい覚えなよ」
「え?」
「クシカーロ様だ!」
クシカーロが余計なことを言いながら現れた。
「ユイちゃん。クシカーロ様じゃなくて、クシカーロちゃんって呼んでよね」
「クシカーロちゃん?」
ユイはクシカーロに言われるがままだった。
「なんだ?仕事か?」
「うん。ちょっと選択次第では大変になるかもなーって仕事」
「そうか…」
俺の選択次第で未来が変わる感じか。
「最悪なパターンは?」
「今回は少ないよ。出来るだけ最高な選択をお願いね」
クシカーロの声は明るいが表情が暗い。
「それでどこに?」
「魚人国!セドラールくんが王様をやってるよ」
「お!まじか。国を作ったんだな」
前に出会った人魚の男の子が王様をやっているみたいだ。
「じゃあ準備はいい?」
「ああ」
「うん!」
返事をすると海中に移動した。
俺はすぐに魔法で呼吸が出来るようにした。




