30週目.未練のエビチリ
「はぁー」
俺はため息をつきながら、パソコンに向かっていた。
先週のユイ達との別れがこんなに尾を引くことになるとは思わなかった。
フリーランスで自宅作業だから、人と関わる事が少なくなっていた。
だからこそ異世界との交流が自分の中の癒やしになっていたようだ。
「今回作る料理、完全に引きずってるなー」
今回はエビチリを作るつもりだ。
海老と辛い物。
完全にユイを引きずっていた。
「はぁー。やる気がでない。コータと決意したのになー」
俺は無心で仕事をつづけた。
タラララランラン♪タラララランラン♪
タブレットが鳴った。
「よし!やる気を出さないとな!」
俺はレッドホーミングのマスクを装着した。
「ディフィバースの世界にようこそ!」
目を開くとヤリネがいた。
「ん?ヤリネ?」
俺は困惑した。
「はい!お久しぶりです!!」
ヤリネの目は潤んでいた。
「久しぶり?」
「はい!6年ぶりです」
「ちょっと待って!」
俺は自分が置かれた状況を整理しようとした。
「ただいまー!」
部屋の扉が開いた。
部屋に入ってきたのはコータと成長したユイ、それとラドニークさんだった。
「ん?え?」
まだ整理ができていない。
成長したユイは俺を見つけると走ってきた。
「ユーサクだーーー!!」
ユイは俺に飛びついた。
「コ、コータ。どういうこと」
コータは困惑している俺を見て笑っていた。
▽ ▽ ▽
「なんだよー!言ってくれよ!くそー」
ユーサクは文句を言いながら、『異世界調理』で料理を作っていた。
ユーサクの困惑している表情は最高に面白かった。
俺とユイがラドニークを呼びに行っている間に、ヤリネにタブレットを使わせて呼び出しをさせた。
ヤリネの見た目はほとんど変わってないから、絶対混乱すると思った。
「ユーサク!今日は何を作ってくれるんだ?」
「今日はエビチリ定食だ」
「おー!」
「エビ?エビ?」
ユイは海老と聞いて喜んでいた。
「ユーサクが食事を作っていたのか」
「そうだぞ。前に食ったギョウザもユーサクが作ったやつだ」
「なるほど。異世界の料理だったのか」
ラドニークは感心しながら、ユーサクの調理を見ていた。
「少し時間かかるから待っててくれ」
「わかった」
俺達は静かに料理ができるのを待った。
ユーサクが来る前、ヤリネからいろいろ話を聞いた。
まずはユイのこと。
俺と別れた後、1人で冒険者として活動をしていたらしいが上手くいかなかったみたいだ。
今まで簡単に倒せていたモンスターにも苦戦し始めたらしい。
ヤリネとラドニークが心配し、護衛も兼ねて冒険者と仮パーティを組ませたらうまくいくようになった。
ヤリネが色々調べたら、ユイの『共有の女傑』は仲間の力の一部が共有されるらしい。
俺と冒険していたころは、俺の力が共有されていたから強いのは当然だった。
ユイに今後もパーティを組むように伝えたが、【異者の宴】を大事にしたいと言って断固拒否したらしい。
なのでヤリネの部下と仕事をすることが多くなったらしい。
ヤリネは部下の傭兵を数十人抱えていた。
元々はヤリネが奴隷解放した元冒険者や元兵士などがヤリネに恩を返すために集まった集団で、奴隷運搬の護衛や違法奴隷の救出などをやっているらしい。
ユイはその手伝いをして生活をしていた。
本当にヤリネとラドニークには感謝だ。
俺が色々考えていると料理が運ばれてきた。
「「「おー!」」」
艶々したエビチリに俺達は大興奮だった。
「ちょっと辛めに作ったから、ご飯が進むぞ!」
「よし!食うか」
「うん!」
「はい」
「いただこう」
俺達はエビチリを食べ始めた。
▽ ▽ ▽
俺が作ったエビチリは大盛況だった。
「おかわり分もあるからどんどん食べてくれ!」
「「「はーい!」」」
4人は美味しそうに食べていた。
ラドニークさんと少し話したが、なかなか良い人だ。
ユイを6年も援助してくれたのは本当に感謝しかない。
コータから王都に行くという話を聞いた。
連続殺人事件、それの犯人がスキルを奪う可能性がある。
そんな危険な仕事なのに俺は少しワクワクしていた。




