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30週目.再会

ユイはやっと泣き止んだ。


「ごめんな。遅くなって」

「うん、平気」

ユイは俺に笑顔を向けた。


「えーっと、俺が居なくなって6年が経ったのか?」

「うん。なんでそんなこと聞くの?」

ユイは首を傾げていた。


次にユイに会った時にすべてを話していいってクシカーロが言っていた。

ここですべて話すのがいいのだろう。


「実はユイと別れたのは、俺にとっては今さっきなんだ」

「どういうこと?」

ユイは再び首を傾げた。


「それはコータが時代を渡っているんだよ」

クシカーロが目の前に現れた。


「え?誰?あーレッドホーミングだ!」

ユイはクシカーロが来ているレッドホーミングのTシャツが気になるようだ。

「そうだよ。似合う?」

「うん!いいなー」

「いいでしょー」

ユイとクシカーロは仲良く談笑している。

なんなんだこの時間。


「クシカーロ。ユイに説明をしに来てくれたんじゃないのか?」

「あっ!そうだった」

そういうとクシカーロはユイの肩を掴んだ。


「ユイちゃん。私はクシカーロだよ」

「クシカーロ?」

「うん。女神だよ」

「女神様!!」

ユイは驚いていた。


「コータをこの世界に呼んだのは僕なの」

「すごーい!」

ユイの反応を見て、本当に伝えるべきだったのか不安になった。


「コータはいままでいろんな時代に行って、勇者として仕事をしてたんだよ」

「えー?そうなの?コータすごーい!」

「実はユイちゃんも違う時代に行っているんだよ」

「え!?」

ユイは驚いていた。


「コングと出会った時、それに魚人達と会った時、あとはーなんかあったっけ?」

クシカーロは俺を見た。

「あとは無人島だ」

「あーそうだそうだ」

クシカーロは舌をペロっと出した。


ユイを見るときょとんとしている。

「ユイ、大丈夫か?クシカーロの話は伝わってる?」

「う、うん。わかったと思う」

ユイは頷いた。


「それで今の俺は、ユイと別れてすぐここに来たんだ」

「ずるい!」

「え?」

ユイはなぜか怒っている。

「6年も寂しかったのに!コータだけずるい!」

怒っている理由がすぐに判明した。


「ごめんな。俺もこうなるとは思っていなくて」

「そうだよ。コータは知らなかったんだ」

クシカーロがなぜかユイを宥めた。


「ユイちゃんにも今後コータの手伝いをしてほしいんだけどいいかな?」

「え?私も?」

「うん。ダメかな」

「やる!!」

ユイは即決した。


「じゃあ」

クシカーロはユイの頬に触れた。


「うん。これで大丈夫」

ユイに何かをしたのだろう。クシカーロを見ると体調が悪そうにしていた。


「大丈夫か?」

「うん。6年も我慢させちゃったし、また我慢することになるからお詫びをね」

「お詫び?」

「うん。スキルをプレゼントしておいた」

「「え!?」」

ユイはすぐにステータスを確認した。


「『邪神斬り』ってスキルがある!」

「邪神斬り!!!!!クシカーロ!なんてスキルをユイに渡してんだ!」

俺はクシカーロを怒鳴りつけた。


「だってユイちゃんは現代の勇者なんだもん」

「はーーーーー?」

「勇者?」

ユイは首を傾げ、俺は混乱した。


ユイが勇者?

どういうことだ?

訳が分かんない。


「あんま重く受け止めなくていいよ。勇者っていっても1人じゃないから」

「そうなのか?」

「うん。同じ時代に4~5人くらいはいるって思っていいよ」

「4~5人は少ないだろ」

「まあ正確に言うと勇者候補だけど」

「勇者候補?」

「勇者になれる存在かな」

ユイが勇者候補だなんて信じられなかった。


「ユイちゃん。頑張れる?」

クシカーロはユイに問いかけた。


「……うん。がんばる!」

ユイはまだよくわかっていないようだが、頑張るみたいだ。


「それでこれからは?」

「うーん。お手伝いはちょくちょくあるかな。この時代でもいろいろあるけど」

「詳しく聞けるのか?」

そう聞くと、クシカーロはユイを見た。


「ユイちゃんに聞くのがいいかも」

「え?」

俺はユイを見た。

ユイはなんで見られているのかわからないようだ。


「ユイちゃん。最近何をしてるか、コータに教えてあげて」

「う、うん。最近はラドニークおじさんからお仕事もらってるの」

「ラドニーク?」

「うん!いつもは盗賊だったり、違法な奴隷商を捕まえたりしてるの」

「え!?ユイ1人でそんな危ないことを!?」

俺は驚いて声が大きくなってしまった。


「ううん。いろんな人と!」

「冒険者に依頼を出してるってことなのか?」

「うーん。わからない!」

「そうか」

「今日もラドニークおじさんの所に行くよ」

「俺も付いて行っていいか?」

「うん!!」

詳しくはラドニークに直接聞いた方がいいだろう。


「ラドニークやヤリネには話していいのか?」

「うーん。任せるよ。まあ言った方が色々便利だよね。話す時に来てあげようか?」

「いいのか?」

「うん。だけど2人はタイムトラベルさせられないからね」

「ん?なんでだ?」

「この時代の影響力が強いからね」

俺は首を傾げた


「ユイは平気なのか?」

「うん。そこは大丈夫」

俺には理解できなかったが、クシカーロが言うんだからそうなのだろう。


「じゃあ。僕はここらへんで」

「わざわざありがとな」

「うん。またね」

そういうとクシカーロの姿が消えた。


▽ ▽ ▽


俺はユイを連れて家を出た。


ラドニークの治める街は6年前とだいぶ変わっていた。

建物や道が整備され、きれいな街並みになっていた。


「ラドニークはどこにいるんだ?」

「いつもお家にいるよ」

「じゃあ行こうか」

俺はユイと手を繋ぎ、ラドニークの家へ向かった。


大きな館に着いた。

前来たよりも少し大きくなっている。

「ここでいいんだよね?」

「うん!」

ユイは門兵に挨拶して中に入っていく。



ラドニークの執務室に入る。

俺を見たラドニークが驚いたような表情をした。


「コータか?」

「ああ。一応帰ってきた。いろいろありがとう」

ラドニークは約束通り、ユイの面倒を見てくれていた。


「色々と、どこに行ってたかなどを聞きたいが」

「ははは。うーん。難しいな」

俺が何をしてたかを詳しく聞きたい様子のラドニーク。


「僕が説明するよ」

タイミングよくクシカーロが現れた。


「え?この女性は?」

「えーっと女神のクシカーロ」

「は?クシカーロ様?」

ラドニークは混乱していた。


「えー。信じてない?」

「いえ、九神様については存じております。しかしお目に掛かれるとは思っていなかったもので」

「まあそうだよねー」

クシカーロは何故か嬉しそうだった。


「ラドニークくんに説明するね。でも君も重要人物だからこの話は公言禁止」

「は、はい」

「まずコータは異世界から僕が連れてきた勇者。いろんな時代でいろんな仕事をしているんだ。主に邪神関係」

「え!?」

「前に言っただろ、俺は勇者だって」

ラドニークは驚いていたが理解はしているみたいだ。


「私は勇者に何をすればいいんですか?」

「うーん。今まで通り仲良くしてあげて」

「そ、それだけ?」

クシカーロは真面目な表情をした。


「ラドニークくんにはこの領を維持してもらわないといけない。数年後、このカラッカに異世界から転生してくる人がいるんだ。その子は世界を大きく変えるから、ラドニークくんは求められたら手を貸してあげてほしい」

「それが私の役目ですか?」

「うん。まあ領主として頑張ってる君なら上手くやれるよ。ヤリネくんにも話してくるから力合わせてねー」

「わ、わかりました」

「なんか大変そうだな、ラドニーク」

ラドニークは何とも言えない表情をしていた。


「ちょうど、コータとユイちゃんに頼めるいい仕事があるんじゃない?」

「あ!」

ラドニークが何かを思い出したようなリアクションをすると、クシカーロは消えていた。


「ラドニーク!色々よろしく」

「ああ。なんかすごいことに巻き込まれた気がするが」

「ははは!それでなんかクシカーロが言ってた仕事ってなんだ?」

「実は王都で事件が起きていて」

「事件?」

「連続殺人事件だ」

「は?」

ラドニークは詳細を説明してくれた。


王都で起きた連続殺人の被害者は、わかっている範囲で8人。

スラム街の子供6人・元傭兵の男・鍛冶屋の男。

全員の死体に手形のような痣が付いていたので連続殺人ではないかと言われている。


王都の衛兵隊は事件を捜査し始めた。

すると元傭兵以外の殺され方が同じ素手による撲殺な点と鍛冶屋の男が経営している鍛冶場が最近まで稼働していた形跡があったことが不可解だった。


衛兵隊は被害者を調べると、元傭兵のエクストラスキルが素手での戦闘特化、そして鍛冶屋の男は鍛冶特化のエクストラスキル。

犯人はエクストラスキルを奪うエクストラスキルの可能性があると判断した。


捜査をしていた衛兵隊の隊長はラドニークの騎士時代の同期で仲がいい。

なので力を貸してほしいと相談が来た。

ラドニークはヤリネの部下とユイにその捜査を任せようとしていたみたいだ。


「ユイにそんな事件の捜査を?」

「さすがに現地で捜査の手伝いをさせるだけだ」

「だよな」

「でもユイはこの6年で100人近い盗賊を捕まえてるから、かなり優秀なんだぞ」

「は?え?」

ラドニークがそう言うとユイは誇らしげにしていた。


「ユイ、強くなったんだな」

「うん!悪い奴には負けないよ」

ユイの成長に感動した。


「わかった。その捜査を俺も手伝う。クシカーロも言ってたし」

「そうか。ヤリネにも人手を借りるつもりだったんだが」

「ヤリネにも会いに行くから、俺が伝えておくよ」

「そうか。まあコータが行くなら人手は必要なさそうだ」


その後もラドニークから細かいことを聞き、2日後に出発することになった。


▽ ▽ ▽


街の中でも高級感が溢れる建物の前に到着した。

「こんなに凄い建物だったか?」

「ヤリネが頑張って大きくしたんだよ」

「そうか」

俺は建物に驚きながら、中に入った。


中に入ると店員と思われる人が数人いた。

どこかで見たことがあるような男性が近づいてきた。


「いらっしゃいませ!?あれ?ユイさん?」

「うん!ヤリネに会いに来たー」

「そちらの男性もですか?」

「そーだよ!いい?」

「ちょっと確認します」

「おねがーい」

男性は他の店員に指示を出した。


数分後、案内されて部屋に入った。

そこにはだいぶ見覚えのある男性がいた。


「ヤリネ商会長。お客様をお連れしました」

「わかった。君は下がってくれ」

「はい」

俺達を案内した人が部屋を出た。


その瞬間、ヤリネは目を潤ませながら、俺に飛びついてきた。

「コータさん!!!!!」

「ああ。久しぶりだなヤリネ」

「本当にコータさんだあああ!!!」

「おい!お前!こんなデカい奴隷商の商会長が幼児化すんな!」

「6年ぶりなんですよ!ユイちゃんとずっと待ってたんですからあああ!」


ヤリネは泣きながら俺の胸に顔をこすりつけた。

本当に同世代の男性の幼児化はきつい。


「おい!そろそろ落ち着けって」

「す、すみません。本当にうれしくて」

「わかったから」

俺はヤリネを引き剥がした。


「コータさん。あのクシカーロ様は本物なのですか?」

「え?もう会った?」

「はい。先ほどまでお話ししてました」

クシカーロはヤリネに前もって話に行っていたみたいだ。


「コータさんが異世界から来ているのは聞いていましたが、まさか別の時代に行っていたなんて」

「わけわかんないよな。とりあえず今回からはこの時代が俺の拠点になるっぽい」

「なるほど。ということはこの時代でやることがあるということですか?」

「ああ。ラドニークから仕事をもらった」

俺は王都の連続殺人事件について伝えた。


「なるほど…」

ヤリネは考え始めた。


「うちの部下を連れて行ってもいいですが、どうします?」

「うーん。ラドニークも人手は俺だけでいいって言ってたし、ユーサクとかもいるから俺とユイだけでいいかな?」

「わかりました。こちらでも人は準備しておきます。必要になったら言ってください」

「うん」

俺とヤリネはその後も仕事について話した。



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