7週目.浜松餃子パーティ
俺はカゴにもやしを3パック入れて、レジに向かった。
「飲み物はビールとジュースでいいとして、もやしは買いすぎか?」
俺はレジに並びながらカゴの中を見る。
中にはもやし3パックとビールが6缶とフルーツ系のジュースが数缶入っていた。
レジで支払いを済ませ、家帰宅した。
▽ ▽ ▽
家に到着した。
「今日は気合入れて取り寄せたから、ユイが美味しいって言ってくれたらいいな」
鍋に水を入れて、火にかけた。
冷凍庫を開けて、中から大量の冷凍餃子を取り出した。
「先週のコータが言ってたのは餃子だと思うんだよな。とりあえず大量に浜松餃子を取り寄せたから、今日は餃子パーティだ」
俺は大学時代にコータと高校からの友人達とよく宅呑みをしていた。
その時によくやってたのが餃子パーティだった。
今回、浜松餃子にしたのは俺が食べたかったからだ。
鍋の水が沸騰してきた。もやしを投入し茹でる。
数分したら、ざるにあげて放置。
「よし!餃子を焼き始めるか。100個以上あるけど、今日は30個くらいでいいか。いやでも、俺の分もあるから40くらいにするか」
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
タブレットが鳴った。
「え?今日早くない?」
俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
「ユーサク!」
ディスプレイにはどアップのユイが映っていた。
今週もユイは可愛かった。
「ユイ、元気だった?」
「元気だよ!ユーサクは?」
「元気だよ。ユイは今日も可愛いね」
「ありがとー」
ユイがいつもと違い、綺麗なテントにいることに気づいた。
「そのテントはコータに買ってもらったの?」
「ちがうよ!ラドニークさんが貸してくれたの」
「ラドニークさん?」
新たな登場人物に困惑しているとコータがやってきた。
「ユーサク!待ってたぞ」
「今日はいつもより早いけど、なんかあった?」
「聞いてくれよユーサク」
ユーサクはここ数日の出来事を早口で話し始めた。
「人を拉致して奴隷にしてる盗賊を何個か滅したんだけど、潰しても潰しても復活すんだよ。盗賊ってゴキブリみたいでさ!キリがないから、ここら辺の盗賊を仕切ってるっていうか、盗賊達の親組織みたいなのを潰すことにしたんだよ。そしたらなんと武装してるやつらに出会ってさ、そいつらに盗賊と間違われて攻撃されたんだけど、なんとか話ができる状態まで制圧したんだよ。その武装してる奴らも盗賊の親組織を潰すために森に来たって言うからさ、協力することになったのよ」
「ほーほー」
俺はコータの早口な説明をギリギリ聞き取っていた。
「それで一緒に行動することになったんだよ。話を聞いてみたら、武装してる奴らのリーダーはなんと貴族だったんだよ。なんかさ貴族ってうざいやつってイメージじゃん?でもそいつは根っこがしっかりしてるって言うか、民のために自分から動ける良い奴なのよ。そいつとそいつの部下と俺らで親組織の住処を見つけて滅したの。そしたら盗賊の人数が思ったより多くて、貴族が住んでる街までの護送を手伝うことになり、今に至る」
「その貴族の人がラドニークさん?」
「そーそー、なかなかお偉いさんらしい。そんなお偉いさんが部下を3人だけ連れて盗賊討伐しに来ちゃうんだぞ?あいつはこれから伸びるぞ!」
「誰目線だよ。てか年下なの?」
「いや、タメか年上」
「お前さー、相手は貴族なんだから、敬語で話せよ?」
「ラドニークが崩して話せって言ってくれたんだよ」
「それならいいけど」
俺はコータの肝の据わり方に呆れていた。
「それでユーサクに頼みたいことが!」
「なんだ?先週の最後に言ってた、久しぶりに食べたいものっていうのは用意したぞ」
「さすがユーサク!それって何個ある?」
「正解してるか聞かなくていいのか?」
「ユーサクが外すわけないよ!ちゃんと餃子でしょ?」
「そうだけど。外す可能性もあったんだからな!」
「まあ外してても、美味いものを用意してくれるって信じてるし。それで何個あんの?」
「たぶん120個くらいはあるけど」
「それ全部焼いてくれ!」
「え!」
「さっき話したラドニークとその部下達が、流石にちょっと疲れてて。ユーサクの飯を食わせてやりたいんだよ」
「わかったよ、まだ餃子焼いてないから時間かかるぞ?」
「おっけ!頼んだ!」
俺は急いで餃子を焼き始めた。
▽ ▽ ▽
数回に分けて焼いた餃子を皿に盛り、茹でたもやしを添える。
「コータ、付属でついてるタレはそのまま送るからな?」
「わかった」
「あと米だけど茶碗の数がないから、それっぽい器に入れておく。フォークもいるだろうから一緒に送るからな」
「助かるー」
「ビールはどうする?6缶あるけど」
「まじ?それも全部送ってくれ!」
「了解」
俺はテーブルの上にどんどん並べていった。
「ユーサク!今日はどんなご飯?」
ユイが興味津々に話しかけてきた。
「今日は餃子ってご飯だぞ。お米にすごく合うからいっぱい食べなよ」
「うん!お米大好き!」
ユイの笑顔に癒された。
「よし、送るぞ?」
「頼む!」
「転送!!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
カウントダウンが始まった。
「うおー!うまそ!」
「浜松餃子で茹でもやしもあるからちゃんと食べろよ」
「了解!ユーサク様、ビールもありがとうございます」
コータはわざとらしく頭を下げてきた。
「ユイがいるんだから呑み過ぎるなよ」
「それはわかってる」
「米は余ったらおにぎりか何かにしろよ」
「俺とユイが食べ切るから問題ない。じゃあそろそろラドニーク達の所に行くわ」
「気をつけろよ!異世界から来たってバレたらめんどくさくなるかもだから」
「わかってるよ!!ユーサク、ありがとな!」
コータは魔法で皿を浮かべて、テントから出て行った。
「あっ!来週何食べたいか聞き忘れた」
「ユーサク!」
「ユイがまだ居た。ユイは来週の金曜日、何食べたい?」
「うーん。まだ食べたことない美味しいやつ!」
「わかった。任せろ!」
ディスプレイは暗くなった。
俺はキッチンとテーブルを見た。
「俺の夕飯どうしよ」
俺はサンダルを履き、コンビニに向かった。