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EX.リヴァイアサン様の提案

まさかこんなことになるとは。

私はあの人族に感謝をしているが、同時に少し後悔をしていた。


部屋に部下が入ってきた。


「セドロ王!石像が完成しました」

「わかった。すぐに行く!」


私は部下に案内され、部屋を出た。



▽ ▽ ▽



コータさんが去った日から、たくさんの魚人族がこの空間にやってきた。

モンスターや他種族に怯える生活が無くなったのは良い事なのだが、魚人族同士で小さな争いが起きるようになっていた。



「はー」

ため息をついた私を見て、リヴァイアサン様が話しかけてきた。

「どうしたんじゃ?」

「最近人が多くなったせいで魚人族同士の揉めごとが増えて、私と息子が仲裁に呼び出されることが多く……」

「ほお。まあ仕方ないことじゃな。おぬしがコータにこの空間を託されたようなもんじゃからな」

「そんなことないんですけどね……」


コータさんがこの空間に居た時によく関わっていたという理由で、魚人達はなんでも私に確認を取りに来るようになった。

確かに空間についての説明を聞いたのも私だし、家の作り方などを聞いたのも私だ。

だけどこんな大量の人をまとめるほどの技量は私にはない。


「これはもう魚人族で国を作るべきではないか?」

「え?」

リヴァイアサン様の思わぬ提案に私は驚いた。


「それは私に王をやれということですか?」

「そうなるな」

「無理です!私にはそんな力はありません」

「知っておる」

「え?」

リヴァイアサン様は私の目を見た。


「この空間はまとめる者を必要としている。だがおぬしにはその力はない」

「はい」

「だがおぬしの息子にはその力がある」

「え?」

「息子はまだ若い。今すぐ王になることも、国を作ることもできないだろう。息子が成長した時に王をやれるようにおぬしが頑張って国を作っておくのがいいんじゃないのか?」


リヴァイアサン様は適当な発言をすることもあるが、この眼は本気だ。


「その場合、手伝っていただけるんでしょうか?」

「もちろんじゃ。まあワシがおぬしを王と認めるだけで、他の者達も認めるだろう」

「……ですね」


私は悩んだ。

王になれる力はリヴァイアサン様が言うように、私にはない。

だが息子のために、未来の魚人族のために尽力してもいいんじゃないか。


「リヴァイアサン様。お手伝いをお願い致します」

私は頭を下げた。

「シャハハハ!任せるのじゃ」


私はリヴァイアサン様の提案に乗り、この空間に魚人族の国を作ることに決めた。



▽ ▽ ▽



国を作ると決め、1年が経った。


魚人国はだいぶ形になってきた。

これもリヴァイアサン様のおかげだ。


中央の空間を王都と呼ぶことになり、ここに大半の人が暮らしている。

王都の中央にはコータさんのマジックアイテムを覆うように大きな建物が建てられた。

そこが私達家族の住居だ。

リヴァイアサン様が言うには城というもので、人族の王はこんな大きな家に住んでいるらしい。


立候補した数名の魚人族が私の部下として働くことになった。

リヴァイアサン様が部下の中から3名を選び、東西北の空間の領主というものが決まった。


しかし私が1番偉いという状況がどうもなれない。


「はぁー」

「なんじゃ?またため息か?」

「すみません。あまりにもいろいろ起こりすぎて」

「王様なんじゃから、ドンとしておけ」

「わかりました……」


リヴァイアサン様は基本城にいて、私の家族と共に暮らしている。

セドラールをいろんなところに連れて行ってくれている。

次期王様として、育ててくれているらしい。


私が悩んでいる様子を見たリヴァイアサン様が口を開いた。

「おぬしは考えすぎじゃ」

「そうですかね?」

「ああ。おぬしが考えなくてはいけないことは単純。魚人族が安全に暮らせるようにするのと、息子に恥じない王でいることじゃ」

「恥じない王……」

「セドラールがおぬしのような王になりたいと思うような行動をとればいいんじゃ。正直、おぬしは駄王や仮初の王と呼ばれる能力しかない。だがお前が王になって犠牲になることで、今後の魚人族の未来が明るくなるんじゃ」

「それが私のやれること」

「そうじゃ。王をやり遂げて息子に王の座を渡す時、おぬしは素晴らしい王として未来で評される」


リヴァイアサン様の言葉は私の考え方を変えた。



▽ ▽ ▽



王になり15年。

魚人国は大きく発展した。


「よくやったな」

「そうですかね?」

「ああ。明日おぬしは善王として魚人族に名を残す」

「まあ引退しても、息子のために働くんですけどね」

「シャハハハ!ワシはそろそろ隠居するぞ?」

「え?」

私はリヴァイアサン様の発言に驚いた。


「セドラールを王にするのが目的じゃったからな。おぬしも居るし、もう口出ししなくてもいいじゃろ」

「そうですか。今までありがとうございました」

私はリヴァイアサン様に頭を下げた。


「シャハハハ!まあコータに言われたしの。そこそこ楽しかったぞ」

「コータさんには本当に感謝しかないな」

「おぬしも隠居したら、夫婦でワシと共にゆっくり暮らそう」

「それいいですね!」

ここ数年でリヴァイアサン様ともだいぶ仲が深まった。


「それより、あれは見たのか?」

「石像ですか?」

「ああ」

「明日の式典までは見ないつもりです」

「そうか。なかなかの出来だから期待しておくのじゃ」

「楽しみです」

リヴァイアサン様の表情から、本当に良いのができたことが分かった。


▽ ▽ ▽


私は群衆の前に立った。

リヴァイアサン様が地上で手に入れた声が大きくなるマジックアイテムを手にした。


「本日、息子のセドラールに魚人族の王を継承する!」

「「「「「「おー!!!!!!」」」」」」

群衆が沸いた。


セラドールは幼い時からリヴァイアサン様に付いて行き、民との関りを深くしていた。

そのおかげで民から大人気だ。


「そしてこの空間を作り、魚人族を救った救世主の石像を広場に設置する」

私がそう言うと目の前に布がかかった石像が運ばれてきた。

「それがこれだ!」


布を外すと、コータさん・ユーサクさん・ユイさんをかたどった石像が現れた。


「この3人は人族でありながら、魚人族のために尽力を尽くしてくれたお方だ」

「「「「「「おー!!!!!」」」」」」


この式典で私の王としての仕事は終わりだ。


これからは息子が善き王として民を守ってくれるだろう。

私は未来の魚人族が幸せに暮らしてくれることを願う。





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