27週目.コータの本気
「あああああああああ!」
「ぎゃああああああああ!」
街中から様々な叫び声が聞こえてきた。
「石化を解除した代わりに狂人化を付けておいた。獣化と同じくらい強くなっているから気を付けることだな!シュハハハ!」
ガビクは笑いながら飛び去って行った。
「おい!2人共、動けるか?」
ベロニカとガラマイアに問いかけた。
「…はい。なんとか」
「大丈夫だ」
2人は苦しそうだが、ギリギリ動けそうだ。
「俺はガビクを追う。合図は出しておくから、レガリオル達も来るまで耐えてくれ」
「わかりました!」
「やるしかないよな」
「街全体に聖魔法を使うが、さすがに隅までは行き届かない。対処を頼む」
2人は頷いた。
「ソンブラは2人を助けてやってくれ」
コン!
俺は街に聖魔法を使い、天井に手を向けた。
「少し熱いかもしれないから離れてて」
俺は手のひらから大きな炎の球を出し、天井を破壊して空に放った。
「じゃあ行ってくる」
俺はすぐに風魔法を纏ってガビクを追った。
▽ ▽ ▽
街の中から炎の玉が空に飛んで行った。
「あれってコータの合図だよな?街に入っていいってことだよな?」
俺は急いで街に向かおうとすると、街の上空に何か見えた。
「ん?鳥?」
目を凝らしてみると人だ。
だけど羽根が生えてる。
「ん?龍人族?」
羽根が生えている人の頭上に黒い球が現れた。
「なんだ?どういうこと?仲間?」
俺は混乱した。
黒い球はどんどん大きくなっていく。
「あれ?絶対やばい攻撃じゃないの?」
俺はすぐにファイアホーミングガンを構えた。
「仲間だったらどうしよう」
恐る恐る引き金を引いた。
バシュン!
弾はしっかり羽が生えた人に命中し、黒い球は消えた。
「仲間だったらちゃんと謝らないとな」
そんなことを思っていると羽根の人の元に人影が向かって行った。
目を凝らすとそれはコータだった。
コータは羽根の人を殴り、羽根の人は吹き飛ばされた。
「あー敵だったー!よかった!」
仲間を攻撃していないと分かって安心した俺は、すぐに街へ向かった。
▽ ▽ ▽
俺はガビクを追って外に出ると、ガビクは街の上空に居た。
ガビクの頭上には禍々しい黒い球があり、少しずつ膨らんでいた。
「あれまずくないか?」
俺はガビクを止めようとした瞬間。
バシュン!
何かがガビクに当たり、黒い球は消えた。
飛んできた方向を見ると、遠くの方に見慣れた赤い不審者が見えた。
「ユーサク!さすがすぎる!」
俺はすぐにガビクに近づき、顔面を殴った。
▽ ▽ ▽
街に着くと、数人の獣人が暴れていた。
「これはどうすれば?」
どういう状況かわからないので、とりあえず粘着弾を暴れてる獣人の撃ちこんでいく。
「どういう状況?俺の行動はあってるのか?」
街の中を進んでいき、暴れてる獣人を探しているとベロニカとソンブラを見つけた。
ベロニカは少しふらついていた。
「ベロニカ!大丈夫か」
「ユーサクさん!」
ベロニカは走って俺の元にやってきた。
「どういう状況?」
「いま、コータさんが邪神が憑りついてると思われる者を追っています」
「それで街で暴れてる獣人は何?」
「そいつに狂人化させられた者達です。コータさんが聖魔法で半数以上は狂人化を解いたんですが、範囲外にいたものが暴れています」
「わかった!じゃあ拘束する方向でいいんだよね」
「はい!お願いします!」
俺はベロニカ達と共に狂人化した獣人を止めに行った。
▽ ▽ ▽
殴って吹き飛んだガビクの元に到着した。
ガビクは倒れていた。
尻尾がないから、しっかりダメージを受けたみたいだ。
「お、お前は何なんだ!狸人族が魔術なんて聞いたことないぞ!」
「だから魔術じゃなくて魔法だって言ってるだろ」
「ぐっ!」
ガビクは俺に手のひらを向けて、黒い球を放ってきた。
俺は風の壁で黒い球を防ごうとしたが、黒い球に触れた部分が消滅した。
「は?危な!お前こそ、その魔法はなんなんだよ」
「これは魔法じゃない。力だ。俺のために神が授けてくれた力なんだよ!」
ガビクが叫ぶと背中から黒い触手のようなものが4本生えてきた。
触手は俺に向かってくる。
「まじかよ!」
風の壁や石の壁を出して防ごうとするが、触れた部分が消滅するせいで避けることしかできなかった。
「邪魔をするな!お前が邪魔をしなければ俺の国を作れたんだ!」
黒い触手の攻撃は勢いを増していった。
俺は風の魔法を纏って、触手を避けてガビクに近づく。
「国を作りたいんなら、もっといいやり方があっただろう!」
腕を土魔法で固めて、ガビクの顔面を殴りつけた。
「ぐっ!」
ガビクはふらついている。
石の槍を作ってガビクに向かって放つと、肩に刺さった。
ボトッ!
ガビクの尻尾が地面に落ちた。
「は?」
いつの間にか尻尾が生え変わっていた。
「じゃ、邪魔するな!!!!!」
黒い触手が俺に向かってくる。
ガビクの使っている魔法は邪神の力な気がするし、目が三つなのも邪神の影響な気がする。
しかし意識もはっきりしていて、邪神に憑りつかれているようには思えなかった。
「これが効かなかったらやばいぞ」
俺は聖魔法でガビクに向けてはなった。
神々しい光がガビクの身体を包む。
光が消えるとガビクは倒れていた。
背中に生えていた黒い触手は消えている。
「やったか?」
俺が近づこうとすると、ガビクの身体は内側からブクブクと膨れていった。
「は?なんだよこれ」
ガビクの身体はどんどん大きくなる。
徐々に身体が形成されていき、身体中が内臓でできたような大きなトカゲになった。
「マジかよ。グロすぎだろ」
大きなトカゲの額には小さな魔石が埋め込まれていた。
「あれが邪神を封印している魔石か?てかあの靄に触れたらやばそうだな」
トカゲの身体の周りには黒い靄が漂っていた。
「ジャララララララララララ!!」
トカゲが叫ぶと背中からさっきの倍以上の黒い触手が生えてきた。
俺は石の槍を大量に作ってトカゲに向かって放つが、すべて触手に防がれた。
遠距離も防がれ、近づくのも危険。
中々まずい状況だった。
「ジャアアアア!!」
トカゲが大きく口を開いた。
「は?嘘だろ?」
口の中には黒いエネルギーのようなものがうごめいていた。
「それを吐く気なのか?」
「ジャアアアアア!」
黒いエネルギーはレーザー光線のように直線で俺に向かってきた。
レーザー光線は触れている地面を消滅させている。
「くそ!」
俺は風魔法で自分の身体を吹き飛ばし、間一髪避けることができた。
しかし俺の判断は間違っていた。
俺の後ろにはさっきまでいた街があった。
俺が防がなかったせいで、レーザー光線に呑まれて街は消滅していた。
ユーサクは大丈夫なはずだ。
だけどベロニカやガラマイアとソンブラは……。
レガリオル達も到着していたら……。
俺は自分の判断ミスを悔やんだ。
いつも地形や自然を壊さないように力加減をしていた。
邪神相手にそんなことをしていちゃダメだった。
「ごめん…」
俺は火の魔法で大きな龍を作る。
「ガビク。悪いがもう手加減はできない。正気を取り戻したら回復してやるから、いろいろと償えよ」
「ジャアアアアア!!」
炎の龍を空へ放つ。
すぐに土魔法で地形を変え、土の大きな拳を出してトカゲを宙に打ち上げた。
「ジャアア!」
トカゲは空中で口を開く。
またレーザー光線を吐くつもりだ。
俺はすぐに雷の槍を大量に作り、トカゲに放つ。
大半は触手に防がれるが、5本程トカゲの下顎に当てて口を閉じさせる。
「ギュグググググ!」
口が開かなくなったトカゲは藻掻いていた。
100個ほどの風の刃を飛ばし、触手を切り取っていく。
完全に消滅させることはできないが、触手の動きを鈍らせることはできた。
空に放った炎の龍を操り、宙に浮いているトカゲにぶつけた。
触手は炎の龍を消滅することができず、炎の龍はトカゲは丸呑みした。
丸焦げになったトカゲは地面に落ちていった。
俺は聖魔法で剣を作り、トカゲの額に向かって投げた。
パリン!
トカゲの額にあった魔石は砕け散った。
その瞬間、俺の意識が遠のいた。




