27週目.石像
俺は自分の腕とベロニカの腕を土魔法で拘束した。
「これでいいか?」
「ああ。問題ない」
ガラマイアは頷いた。
俺達はガラマイアに連れられ、反対派が拠点としている街に入っていった。
ソンブラはベロニカの影に入っている。
街の入り口には賛成派の街と同じように武装した獣人が居た。
「ガ、ガラマイア様!?」
武装した獣人はガラマイアを見て驚いていた。
「ずいぶんお姿を見なかったですが、どうしたんですか?」
「い、いろいろとあってな」
「そうですか……」
武装した獣人は心配そうにガラマイアを見ている。
「後ろの2人は?」
「賛成派のベロニカとその部下だ。捕えてきたんだ」
「それは……」
武装した獣人は何とも言えない表情をした。
「シャライドさんか他の幹部に会いたいのだが、街に居るか?」
「シャライド様はいらっしゃいます。他の幹部の方はガビク様以外はお姿を見ていませんが、街にはいると聞いています」
「わかった。ありがとう」
「はい」
武装した獣人を素通りし、街に入った。
俺は気になったことを聞いた。
「なんであの獣人はあんな反応だったんだ?」
「わからんが、俺がベロニカを連れてきたことに驚いたのだろう」
「なんで?」
「もともと反対派は賛成派と戦うために戦力を集めていたわけではなく、他種族から身を守るために集めてたんだ」
「あー賛成派に攻撃している事実を目の当たりにして何とも言えない感情になったのか」
「たぶんそうだ」
ガラマイアは悲しそうな目をしていた。
「ガラマイアの姿を見ていなかったと言っていたし、あの反応的に反対派が中立派や賛成派を襲撃してることも知らなそうだったな」
「本当に何がどうなっているんだ」
ガラマイアは困惑していた。
「すぐに解決しよう」
「ああ」
俺達は街の中を進んだ。
▽ ▽ ▽
大きな建物に到着した。
「ここか?」
「ああ」
ガラマイアは頷いた。
「ベロニカ、レガリオル達の到着は?」
「1時間ほどで到着する予定です」
「わかった。少し時間を使った方がよさそうだな」
俺達は建物の中に入った。
建物の中はものすごく静かだった。
「静かすぎないか?」
「ああ。おかしい」
ガラマイアはきょろきょろと周りを見渡していた。
「なぜ誰もいないんだ?」
ガラマイアは動揺している。
「違う部屋も確認させてくれ」
「わかった」
ガラマイアに付いて行き、隣の部屋の扉を開いた。
「な!」
部屋の中にはたくさんの獣人の石像が置かれていた。
「なんだこれ?」
ガラマイアは石像を見て黙っている。
「ガラマイア、これは何なんだ?」
「わからない。だが……」
ガラマイアが何かを言おうとした瞬間、後ろから声がした。
「ガラマイア。帰ってきたのか」
振り返るとトカゲの獣人が居た。
「ガビク。これはどういうことだ!」
ガラマイアは怒っていた。
「それはあとで説明する。それよりなぜベロニカがここにいる?」
「賛成派に捕まったから、この2人を人質にして逃げてきたんだ」
「おーそうか。シャライドさんも喜ぶだろう」
ガビクはニヤニヤと俺達を見ていた。
「おい!それよりこの石像は!」
「はぁー。あとで説明するといったろ。とりあえずシャライドさんに報告に行くぞ。その時シャライドさんの口から説明があるだろう」
「わかった」
俺達はガビクに連れられ、シャライドの元へ向かった。
▽ ▽ ▽
案内された部屋に入った。
そこには椅子に座ったオオカミの獣人が居た。
たぶんあれがシャライドだ。
「シャライドさん!」
「……」
シャライドは黙っている。
「あの石像は一体何なんですか!」
「ガラマイア!その前に報告が先だろ!」
ガビクが怒鳴った。
「賛成派に捕まっており、ここの2人を人質に逃げてきました。捕まるまでの記憶がなく、人質を連れたまま街に戻ってきました」
「だそうです。シャライドさん」
ガビクがそういうとシャライドが口を開いた。
「……殺せ」
「え?」
ガラマイアは驚いて聞き返した。
「殺せ。賛成派は皆殺しだ」
「シャライドさん、一旦どうしたんですか」
「ガラマイア!シャライドさんの命令だぞ」
ガビクは怒鳴った。
「それに!下の階にあった石像、あれは他の幹部達の姿でした!どういうことですか!」
「「え!?」」
俺とベロニカはガラマイアの発言に驚き声が出た。
石像が幹部だとしたら、邪神が憑りついているやつは人を石化させる能力があるのか?
「殺せ」
「やれ!シャライドさんの命令だ」
「断る!」
ガラマイアは2人を睨んで言った。
「な!お前裏切るのか?」
ガビクは怒っているが、シャライドはピクリとも動かない。
「うるさい!石像について答えろ!」
ガラマイアはシャライドの元に向かい、胸ぐらをつかんだ。
「え?」
シャライドの身体には全く力が入っていない。
胸ぐらを掴まれたままガラマイアの身体にもたれかかっていた。
「殺せ。殺せ……」
シャライドの様子が明らかにおかしい。
その様子を見ていたガビクが口を開いた。
「シャライドの命令通りに動いていたら、今度は石化しないでやったのによ」
「な!」
「まあ賛成派のベロニカを連れてきたことは褒めてやるぞ」
ガビクはニヤニヤしながらガラマイアを見ている。
「ガビク!何をした!!」
ガラマイアはガビクに飛び掛かった。
「うるさい。使えないゴミめ」
ガビクの額に目が現れ、ガラマイアを見た。
「な?なんなんだ?」
ガラマイアの身体がゆっくりと石に変わっていく。
「お前が他の幹部を……」
「ああ。その通りだ。使えないお前は、また石になっててもらうぞ」
「ガビクーー!!」
ガラマイアは叫んだ。
「お前達も石化しろ」
ガビクは俺とベロニカを見た。
ベロニカの身体が徐々に石に変わっていく。
「コータさん!コータさん!」
ベロニカはテンパっている。
「大丈夫。俺には効かない」
俺は聖魔法を部屋全体に使った。
するとベロニカとガラマイアの石化は解除され、シャライドは気絶した。
2人とも石化の反動なのか、意識はあるが地面に倒れこんだ。
その様子を見たガビクが叫んだ。
「な!お前は何なんだ!狸人族のくせに魔術を使うのか!?」
「魔術じゃねーよ。魔法だよ」
俺は風の槍を10本出し、ガビクに向かって放った。
風の槍はすべてガビクの身体に突き刺さった。
「くっ!なんなんだお前は」
ダメージを追っているはずのガビクが平然としゃべり始めた。
ボト!
ガビクの尻尾が地面に落ちた。
ガラマイアが叫ぶ。
「コータ!ガビクは尻尾を身代わりに攻撃を無効化できる!」
「は?マジでトカゲじゃん!」
ガビクは壁をぶち破り、空を飛んだ。
トカゲの獣人のはずなのに翼が生えている。
「一旦撤退させてもらう。そこの狸人族!借りは必ず返してもらうからな!」
ガビクが手を上げると、街中のいたるところから音がし始めた。
「何をした?」
「石化してたやつらを解放したんだよ」
ガビクは嫌な笑顔を俺に向けた。




