6週目.最終手段のハンバーガー
「やばい!終わらない!」
俺はPCと戦っていた。明後日納品の編集が全然終わらなかった。
「カメラ回しすぎだよ、素材見るだけで馬鹿時間かかったよ」
本当に俺は焦っていた。
ブーブーブーブー
携帯が鳴った。
「はい、外山です。あーはい。ギリギリ間に合いそうです。はい。え?追加素材?いやーそれだと流石に間に合わないかもですね。はい、はい、はい。え?納期を1日伸ばす。あーそれでもギリギリですね。はい、はい。わっかりました。ちょっと急いでやってみます。はい、では失礼しますー」
俺は電話を切った。
「やばい!馬鹿じゃないの?間に合わないぞこれ」
俺は焦りに焦っていた。
俺はふとPCの日付を見た。
「あれ?てか今日って金曜?コータとユイの飯を準備しなくちゃだけど、無理だ。すまん!」
俺は携帯で出前アプリを開いた。
「うーん。コータにはこれとこれのセット。ユイにはおもちゃが付いてるこのセット。俺はこのセットにして注文!単品でこれとこれかな?」
俺は某ハンバーガーチェーン店のデリバリーを使った。
「こんなに早く、最終手段を使ってしまうことになるとは。作り置きとか考えてみようかな」
俺はとりあえずPCに向かった。
▽ ▽ ▽
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
タブレットが鳴った。
俺は一旦、仕事をする手をとめた。
緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
「ユーサク!久しぶり!」
「久しぶり、ユイ!」
ユイは今週も元気いっぱいだった。
「この前のカレーとショートケーキほんとーに美味しかった!ありがと」
「よかったよかった」
「コータはまたモンスターと?」
「そう!依頼受けたの!」
「依頼?」
ユイと話をしていると、コータが帰ってきた。
「ユーサク、おつかれー」
「なんかユイから聞いたけど、依頼ってなんだ?」
「あーこの間、街に行って冒険者登録をしてきたんだ」
「本当に異世界だな」
「ユイの身分証明としてステータスプレートっていうのを発行しなくちゃいけなくて、それをもらうついでに2人で冒険者登録してきた」
「ユイも?」
「そうだぞ!俺は試験免除だったんだが、ユイは先輩冒険者と模擬戦をする試験を受けて合格したんだよ。すごいだろ?」
俺は話を聞いただけで不安になった。
「危なくなかったのか?」
「全然、冒険者のランクって俺らの想像通り、GからSまででランク分けされてるんだけど、ユイはFランク冒険者を1対1で、しっかり倒したんだよ」
「すごいなユイは。かわいいし強いんだね」
「ユーサク。ありがとー」
ユイは嬉しそうだ。
「コータはどうだったんだ?」
「冒険者ギルドに入った瞬間に絡まれたよ」
「うわー、みたことあるやつだー」
「まあ、俺、勇者だから魔法で吹き飛ばしたけどな」
「すごいなお前」
自信満々なコータを見て、半分呆れつつも少し羨ましかった。
「俺は飛び級でDランクでユイはGランクになった。2人でパーティを組むことになったんだけど、まだパーティ名が決まってないんだよな。なんかない?尖ったやつがいいんだよね」
俺はコータの無茶ぶりに頭を悩ました。
「うーん。むずいな。コータは異世界の勇者だろ?異者とかは?そっちの世界の人じゃない感がでない?」
「厨二感あって好きだわ!異者のなんとかかんとかがいいな」
「異者の集い、異者の衆、異者の宴、うーんむずいぞ」
「異者の宴いいじゃん!俺とユイはこうやって毎週うまい飯で宴みたいなことしてるし!」
「そうか?」
「ユイ、俺らのパーティは異者の宴ってどう?」
「うーんわかんない!」
「じゃあユーサクと考えたやつにするね」
「うん!それでいい!」
ユイは俺とコータが考えたものなら何でもいいようだ。
コータはディスプレイを覗きこんでいた。
「なんかユーサク、疲れてないか?」
「わかる?ちょっと仕事が立て込んでて、今日の飯はハンバーガーのデリバリーにしてしまった。すまん」
コータは叫んだ。
「うおおおおお!!久々のジャンクフードだ!最高だよ」
「そう言ってもらえると助かる。そろそろ到着するから、ちょっと待っててくれ」
「おう!」
「うん!」
手抜きをしてしまった俺はコータの言葉に少し安心した。
「そういえば、さっきまでなにしてたの?」
「盗賊の討伐。なんか人を攫って奴隷として売ってる大きい盗賊団組織が近くに2つあったんだけど、さっき1つ潰してきた」
「あーそれはすごいな」
「タブレットもレベルアップして、新しいアプリゲットしたよ」
「どんなの?」
「アイテムバックみたいなもの。写真撮ると、タブレットに入れられる」
「え?あの好きなだけ物入れられるやつ?」
「一応容量あるみたいだけど、想像してるのと同じ感じ」
「すげぇな異世界」
思った以上に異世界感があって驚いた。
「そういえば箸セットは回収されなかった」
「うちのシンクに無かったから回収されなかったようだね」
「ユイはこの前から箸の練習を始めたぞ」
「いいねー」
ピンポーン
「あ!到着したみたいだ。ちょっと取ってくるから待っててくれ」
「わかった!」
俺は玄関に行き、ハンバーガーを受け取った。
「お!久々だから楽しみだな」
コータは本当に楽しみにしていたようだ。
俺はテーブルに
コータ用のテリヤキバーガーとBLTバーガー、フライドポテトにコーラを置き。
ユイ用にハンバーガーとチーズバーガー、フライドポテトとオレンジジュースを置いた。
「これも送れるのかな?」
俺は付いてきた、ロボットアニメのキャラクターの人形を見た。
「これの編集を前にやったな。なんだっけ?超兵器戦隊のレッドホーミング?だっけ?男の子向けだけど、ユイが喜んでくれるかな?」
俺はレッドホーミングの人形もテーブルに置いた。
「転送!!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
しっかり人形も消えていた。
そしてカウントダウンが始まった。
「うわ!ユーサクわかってるな。やっぱりテリヤキとBLTだよな!」
「高校時代からずっとこれだろ?」
コータは昔からこの2つだった。
コータはすぐにテリヤキバーガーにかぶりついた。
「うまー!やっぱり最高だな!」
「ユーサク、これなに?」
ユイは付いてきた人形を手に取り、聞いてきた。
「それはそのハンバーガーのおまけで付いてきた人形だよ。よかったら貰って」
「やった!私初めてのお人形だよ。ユーサクありがとー」
ユイはすごく喜んでいた。
「このお人形の名前は?」
「えーっと確か、レッドホーミング?って名前だったはず。凄い強い正義の味方だよ」
「えーうれしい!」
ユイは人形で遊びだした。
「ユイ、お人形で遊ぶ前にハンバーガー食べちゃいなさい」
「はーい」
ユイはコータの食べる姿を見ながら、真似してハンバーガーを食べ始めた。
「おいしーー!」
ユイの笑顔を見れて俺は安心した。
「そういえばユーサク。今度の金曜日なんだけど、久々にあれが食べたい!あれだよあれ!」
珍しく来週の話が出来たと思ったら、思った以上に情報がないまま、ディスプレイは暗くなってしまった。
「まあいつものことだよな。久々って言ってたから、俺と食ったことあるやつだろうな。ちょっと考えてみるか。まあその前に」
俺はパソコンに向かい、仕事を続けた。