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26週目.獣人族の意思

俺はレガリオルと出会った部屋に案内された。

部屋にはベロニカとレガリオルとガラマイアがいた。


レガリオルは俺を見て、口を開いた。

「ガラマイアと俺に話したいことがあると聞いたが」

「ああ。正直情報が少ないから、本題の前にいろいろ聞きたい」


俺が喋っているとガラマイアは不思議そうに俺を見ていた。

「どうした?」

「いや。昨日から思っていたが、お前は誰だ?狸人族だよな?記憶がない間にゾーエンから長が変わったのか?」

「あーそこから説明しないとか」


俺が説明しようとするとベロニカが代わりに口を開いた。

「この方はコータさん。狸人族ではなく人族です」

「は?」

「信じられないですか?」

ガラマイアは頷いた。


「あなたを拘束していた土や風を解除したのは誰ですか?私の魔術だと思ってるんですか?」

「あ!」

獣人族は魔法を使えない。

ガラマイアはそんなことにも気づいてなかったようだ。


「まあ俺としては人族かどうかは信じても信じなくてもどうでもいいんだけど、今から話す話は信じてほしい」

俺はガラマイアに邪神の話をした。



「そんなことが……」

ガラマイアは驚いている。


「信じられないとは思うけど、邪神が誰かに憑りついていたらと思ったら納得できることがあるんじゃないか」

「……」

「どうだ?」

「確かにシャライドさんはおかしかった。それに言われてみれば反対派の空気もおかしかった気もする」

「具体的にはわからないが、たぶん邪神が憑りついてるやつが何かしている」

ガラマイアは黙ってしまった。


「コータ。これからどうするんだ?」

レガリオルは俺に問いかけた。

「うーん。お前ら次第ではあるかな」

「俺ら次第?」

「ああ。俺一人でも時間をかければ邪神を倒せるとは思う。だけどそれでいいのか?俺一人で解決しても」

俺は3人を見た。


「レガリオル。今回の件をどう決着付けるんだ?洗脳されてた反対派が悪いって決着付けるのか?」

「い、いやそんなつもりはないぞ」

「ガラマイア。洗脳されたり、洗脳された幹部の指示で襲撃していた奴らの対応も俺にさせるのか?」

「い、いや……」

2人は黙ってしまった。


するとベロニカが口を開いた。

「コータさん。少し相談させてください」

「いいよ。ベロニカの家で待ってるから、話し合いが終わったら呼びに来て」

「わかりました」

俺は部屋を出た。


昨日のうちにベロニカにはレガリオルとガラマイアの気持ちを試すと伝えていた。

俺の作戦では賛成派とガラマイア達の協力が必要だった。

俺が作戦を伝えればレガリオルとガラマイアも協力しただろう。

だけどそれではだめだと思った。


俺に協力するのか、俺が協力するのか、それが重要だった。

どっちにせよ、作戦が始まれば俺が指揮をとることになるだろう。

だけど俺が獣人達に協力したという形の方が、将来的に獣人達にとっていい結果になると思った。


だからベロニカに協力してもらい、レガリオルとガラマイアに決断する時間を与えた。


部屋でソンブラを愛でているとベロニカがやってきた。

「どうだった?」

「コータさんが満足する結果になっていると思いますよ」

「ありがと!助かったよ」

「いえ。獣人族のためにいろいろお気遣いしていただきありがとうございます」

ベロニカは頭を下げた。


▽ ▽ ▽


「「コータ。反対派の獣人を助けるために協力をしてくれ」」

レガリオルとガラマイアは頭を下げてきた。


「いいけど、賛成派のレガリオルもそれでいいのか?」

「ああ。獣人族の未来のためには、邪神から反対派を救う必要がある」

「わかった」


たぶんベロニカがいい具合に入れ知恵をしたのだろう。

2人の意志はしっかりしていた。


「作戦はあるのか?」

「いや、それは今から考えようと思っている」

「ちょうどいい作戦があるんだが、聞くか?」

「本当か?」

俺は2人に作戦を伝えた。


「まずはガラマイアと俺は反対派の拠点に行く。ガラマイアは俺を人質にして賛成派から逃げてきたふりをするんだ」

「危険じゃないのか?」

「うーん。俺とガラマイアは少し危険かな」

俺はガラマイアを見た。


「大丈夫だ。コータの作戦で問題ない」

「ならいいのだが」

レガリオルは納得した。


「ガラマイアは俺を連れて幹部と接触。洗脳されているやつが居たら、俺が洗脳を解いていく。たぶん聖魔法で解けるはずだ」

「わかった」

「賛成派は反対派の拠点付近で待機。俺が合図をしたら、反対派の無力化と保護を」

「任せろ」

「洗脳はできるだけ解いておくが、ガラマイアのように様子がおかしくなっているやつもいるだろうから気を付けてくれ」


俺がそういうとレガリオルは首を傾げた。

「洗脳を解くだけじゃダメなのか?」

「ああ。ガラマイア達と戦った時、俺の魔法を破壊された。たぶん洗脳以外に何かされていたはずだ」

「なるほど」

「怪我なら俺が治すから、怪我をさせないように戦うなよ。そんなことをしたら賛成派が危ないぞ」

「わかった」

レガリオルは頷いた。


「邪神が憑りついたやつを見つけ次第、俺が拠点から遠ざけて戦う。他の獣人が巻き込まれないようにしてくれ」


俺がそういうとベロニカが口を開いた。

「ガラマイアが人質を連れ回すのは難しいんじゃないですか?普通は牢屋に入れたりするはずです」

「そうか…」

「なので私も人質になります!」

「え?」

ベロニカの提案に俺は驚いた。


「私は賛成派の幹部です。ガラマイアが連れ回す理由にはなると思います」

「うーん」

俺は悩んだが、ベロニカの意志は変わらなそうだった。


「わかった。それで行こう」

「はい!」


俺達は作戦を細かく詰めていった。


決行日は次の石の日だ。




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