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26週目.洗脳

拘束していた獣人達が目を覚ました。


「え?あれ?」

「ここどこだ?」

「ん?動けない」

「おい!お前!何か知ってるのか?」

獣人達は状況がわかっていないのか叫んでいる。


ガマライアはベロニカに気付いて叫んだ。

「ベロニカ!これはどういうことだ!何を企んでいるんだ」

「何を言ってるんですか。あなた達が武装して河馬族の村に侵攻してきたんじゃないですか」

「は?そんなわけないだろ」

ガラマイアは記憶が無くなっているみたいだ。


俺はガラマイアに話しかけた。

「おい!」

「なんだ狸人族!」

「ベロニカの言ってることが信じられないのか?」

「当たり前だ!」

ガラマイアは怒鳴った。


「じゃあなんでここに居て、こんな状況になってるんだ?」

「あ?知らねーよ!」

「最後の記憶は?」

「あ?それは……。ん?あれ?」

ガラマイアは戸惑っている。


「おい!最後の記憶は!」

「あれ?なんでだ。覚えているのはシャライドさんの様子がおかしくて、それについてガビクに相談していた……」

「様子がおかしい?」

「ああ。中立派や賛成派の村を襲って、人質を取って無理やり仲間に引き入れろと言い始めたんだ」

「ガラマイア」

「なんだ?」

「ここ半年、反対派の獣人達が賛成派や中立派の村で暴れています。約30の村が被害にあっていて、それを止めようとした賛成派には死者が出ています」

「え?」

ガラマイアは戸惑っていた。


「……何が起きてるんだ」

「私達にもわかりません。今までの襲撃犯を数名捕えていますが、みな反対派の幹部の指示だと言っています」

「……」

ガラマイアは黙ってしまった。


「いろいろ話を聞く必要があります。抵抗せずにいてもらえますか」

「……わかった」


俺達は馬車が到着するのを待った。


▽ ▽ ▽


街から4台の馬車が到着した。

御者台にはウマの獣人が乗っていた。


「ベロニカ様!大丈夫ですか?」

「はい。既に拘束が済んでいます。河馬族の村も被害はありません」

「す、すごいですね」

ウマの獣人達は驚いていた。


「抵抗する意思はありませんので、丁重に扱ってください」

「わかりました」

「それにガラマイアには聞きたいこともあるので、街に到着次第、レガリオルと幹部の元に連れて行ってください」

「お任せください」


ウマの獣人達は捕縛した反対派を馬車に乗せ、街へ向かって行った。


ベロニカが近づいてきた。

「コータさん。ありがとうございます」

「気にするな。それにしてもあの様子がおかしいのは、邪神の可能性があるな」

「そうですね。でも今まで襲撃してきた者であのように様子がおかしかった者はいませんでした。捕縛して尋問をしましたが、記憶がないということもなかったです」

「うーん」

「どういうことなんでしょう?」

俺は考えた。


「ガラマイアに発言権があるから洗脳したとか?シャライドってやつの指示に反対しそうだったからとか?」

「なるほど」

「今まで襲撃してきた奴に幹部はいた?」

「いえ、いません」

「うーん。そうなると幹部のほとんどは洗脳されてるかもな」

「どういうことですか?」

ベロニカは首を傾げた。


「今までの襲撃は幹部の指示を疑いなく聞くやつらだったんじゃない?」

「今回は?」

「今回の襲撃はガラマイアと同じ種族の奴ばっかりだったよね?」

「そうですね。ガラマイアを慕っている者達だと思います」

「指示に反対しそうなガラマイアを洗脳し、ガラマイアの異変に気付きそうな者達も洗脳したとか?」

「なるほど」

ベロニカも考え始めた。


「そうなると邪神に憑りつかれてるのは誰なんですか?」

「うーん。普通に考えるとシャライドだけど洗脳されてる可能性もあるしなー」

「ガビクも怪しいですよね。ガラマイアの最後の記憶はガビクと話してた時ですし」

「そうだな。これは炙り出す方法を考えないとダメかもな」

「どうするんですか?」

「うーん。やっぱり反対派に接触しないとダメかもな」


俺は今後どうするかを考えた。


▽ ▽ ▽


俺はベロニカを抱えて、街に戻ってきた。

馬車はまだ街に到着していない。

馬車の影の中にソンブラを護衛として入ってもらっているので、到着したらすぐわかるだろう。


「コータさんは馬車が到着するまでどうしますか?」

「うーん。どうしようかな……」

「うちに泊まりますか?」

「え?いいのか?」

「はい。部屋も余ってますし、何かあったらすぐ連絡できますから。妹も一緒でも大丈夫ならですが」

「じゃあお世話になろうかな」

「はい!」

俺達はベロニカの家に向かった。


「ガラマイア達は今後どうなる?」

「そうですね……。事情を聴いた後は、街の牢屋で生活することになると思います」

「それならガラマイアを借りてもいいか?」

「は?どういうことですか?」

ベロニカは俺の発言に困惑していた。


「邪神が憑りついてるやつは、ガラマイアが記憶ないことを知ってるはずだろ?それならそれを利用しようと思って」

「利用?」

「ガラマイアが河馬族襲撃に失敗。賛成派に捕縛されたが何とか逃げ出した。記憶が曖昧だが反対派に助けを求めて帰ってきた。こういう流れなら邪神に憑りつかれてるやつも信じそうじゃないか?」

「それだとガラマイアがまた洗脳されませんか?」

「賛成派から逃げ出す時に狸人族を人質にしてきたってことにして、俺も付いて行けば洗脳もどうにか防げるかも。実際洗脳を解いたからできるはず」

「危険すぎませんか?」

ベロニカは心配そうに言った。


「危険かもしれないけど、このままだと進展がない」

「それはそうですが……」

ベロニカは納得していないようだ。


「まあガラマイアとレガリオルと話し合うつもりではいる」

「わかりました。馬車も明日には到着すると思うので、話し合いの時間を設けます」

「頼む」


俺達が話していると、妹のベアトリスがやってきた。


「お姉ちゃん!大丈夫だったの?」

「大丈夫。街は問題なかった?」

「うん!大丈夫なの!」


ベアトリスは俺を見た。

「お姉ちゃん。この方は誰なの?」

「狸人族のコータさんよ。今日はうちに泊まるから」


ベロニカがそう言うとベアトリスは俺の元にやってきた。

「私はベアトリスなの!」

「俺はコータだ。よろしくね」

「よろしくなの!」


ベアトリスはユイと同い年くらいか?

獣人の年齢は分かりにくい。


「お姉ちゃん!お腹すいたの!」

「わかったわ。すぐ用意するわ」

「あたしも手伝うの!」

ベロニカとべアトリスは2人で料理を作り始めた。

俺は客人ということで、ゆっくりさせてもらった。




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