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26週目.ベロニカ

3日程、全力で走って目的地に向かっていた。

途中で助けたシャドウフォックスは元気に俺の周りを飛び跳ねていた。

血だらけだったが完全に完治し、期待通り俺に懐いてくれた。


シャドウフォックスと過ごしていると、いつの間にか『テイム』というスキルを取得していた。

シャドウフォックスは俺のテイムモンスターになったみたいだ。

せっかくなのでソンブラという名前をつけた。


走っていると目的地が見えてきた。


ゾーエンに街だと聞いていたが、大きめの木の柵で囲ってあるだけの大きな村だ。

やはりだいぶ過去に来ているのだろう。

文化が全然進んでいないように感じた。


街の入り口には鎧を着た獣人が見張りとして立っている。

変化茶を追加で飲んでいるおかげで、正面から入って問題ないだろう。

俺は街の入り口に向かった。


「おい!止まれ!この街の者じゃないな?目的を言え」

獣人の姿だから止められるとは思わなかった。


「目的?ベロニカに会いに来たんだけど」

「ベロニカさんに?お前は何者だ」

「俺はコータ。狸人族のゾーエンの知り合いだ。ベロニカに伝えたらわかるはずだ」

「わ、わかった。少しここで待て」

そういうと見張りの一人が街へ入っていった。



数分すると、街に入った見張りが1人の獣人の女性を連れて戻ってきた。

たぶんあれがベロニカだろう。

20代くらいのすらっとした美形のキツネの獣人だ。


ベロニカは俺に近づいてきた。

「狸人族のお茶ですね」

見張りが聞こえない声量で言った。


「ああ。ベロニカか?」

俺も負けじと小さな声量で言った。


「はい。とりあえず案内しますので付いてきてください」

「わかった」


ベロニカは見張りの獣人の方を向いた。

「ありがとう。大切な客人です。ここからは私が案内しますので」

「「はい!了解いたしました!」」


やはり幹部ってことだけあって、見張りが緊張しているのが分かった。



「あっ!」

俺の影にソンブラが入っていることを思い出した。


「ベロニカ!テイムモンスターも入って平気か?」

「え?」

俺がそう言うと、ソンブラが影から出てきた。


コンコーン!


「「え!?シャドウフォックス!!!」」

ソンブラが現れた瞬間、見張りが武器を構えた。


「やめなさい!」

ベロニカが叫ぶ。

「私のお客様のテイムモンスターです。テイムしているなら危害を与えることはないはずなので武器を降ろしなさい」

「し、失礼しました…」

見張りは武器を降ろした。


「すまんな」

「こちらも失礼しました。シャドウフォックスは狂暴なモンスターですので少し驚いてしまったようです」

「狂暴な?」

俺は首を傾げた。

ソンブラと出会って3日程だが、狂暴な面は見たことがなかった。


「では行きましょう。街民が驚いてしまうかもしれないのでシャドウフォックスは影に入っていてもらってください」

「わかった。ソンブラ!」

コンコーン!

ソンブラは俺の影に入っていった。


「では」

俺はベロニカに付いて行き、街の中へ入った。


▽ ▽ ▽


俺はベロニカに案内され、大きめの家についた。

部屋に案内されるとベロニカは困ったように俺を見た。


「えーと」

「コータだ」

「コータさん。あなたは予言の人族で間違いないですか?」

「ゾーエンから聞いた話だと間違いないと思う。俺の目的を達すれば獣人を救うことになりそうだし」

「目的?」

ベロニカは首を傾げた。


「すぐに理解できない話だが聞いてくれるか?」

「はい。聞かせてください」


俺は邪神の話をベロニカにした。

「そうですか…」

ベロニカは何か考えているようだ。


「まあすぐには信じられないよな」

「いえ、信じています!ただ、最近の出来事と一致しそうなことが多くて、頭の中で整理していました」

「最近の出来事?」

「はい。反対派の指揮しているシャライドは他種族の中でも特に人族に対して憎しみを持っていました。ですが中立派や賛成派に対して暴力行為で何かするような人ではなかったのです」

「なるほど。それが邪神のせいだと」

「はい。私はそう思います。シャライドに邪神が憑いているのか、それとも他の者についているか……」

ベロニカは頷きながら言った。


「ゾーエンから聞いた情報だと、ガラマイアとガビクという奴らも邪神に憑りつかれている候補にしてもいいと思う。邪神が憑りついてどういう影響があるかわからないが、反対派の影響力のあるやつに憑りついてるのは間違いないだろう」

「そうですね」

ベロニカは考え始めた。


「コータさんはどうやって邪神を倒すつもりですか?」

「正直、まだ思いついてはいない」

「そうですか。それなら一度賛成派を指揮しているレガリオルに会ってくれませんか?」

「なんでだ?」

「私は予言の話をゾーエンとレガリオルに話しています。レガリオルも邪神の話を理解できると思いますし、今までの過激な行動が邪神のせいなのであれば、今後のことも考えやすくなります」

「なるほど……」

俺は悩んだ。


「うーん。1つだけいいか?」

「なんでしょう」

「邪神は倒すつもりだ。だけど獣人の他種族と共存するかどうかの問題にはあんまり介入したくない」

「それはなぜですか?」

「正直な話、人族の俺が口出しすべきではないと思っている。それにどっちかと言えば中立派の考えが一番いいと思っている」

「なるほど」

ベロニカは頷いた。


「問題ありません。獣人族のことは獣人族で解決します。それに私もレガリオルもどちらかというと中立派に近い考えをしています」

「そうなのか?」

「はい。ただ現状よりもしっかり管理をした方がいいとは思っています」

「管理?」

「他種族が自由に出入り出来過ぎているし、出来な過ぎている」

「どういうことだ?」

俺は首を傾げた。


「他種族を向かい入れている村もあれば、完全拒否をしている村もある。この現状が悪いと思っております。獣人族は獣人族の国を作ってしっかり管理をして、他種族が入れる場所入れない場所をしっかりわかるようにするべきだと思います」

「なるほど。それは良いな。国として管理すれば、犯罪を起こす他種族も減りそうだ」

「はい。なので反対派ともしっかり手を取りたいと思っているのですが、このようになってしまったのが現状です」

「なら邪神を倒して、反対派と話し合いができるようになればいいな」

「はい!」

ベロニカは笑顔で頷いた。


「なのでレガリオルと会ってほしいんですが」

「ああ。どっちにも肩入れしないのでいいのなら会うよ」

「はい。では、ちょっと調整してきます」

そういうとベロニカは家から出て行った。


▽ ▽ ▽


俺の目の前には、俺の倍以上身体の大きいライオンの獣人が居た。

コングやゴフェルと似たような雰囲気だが、少し空気がチクチクしている。


「お前がベロニカの言っていた人族か?」

「たぶんそうだ」

レガリオルは俺をまじまじと見る。


「ベロニカ!本当か?」

「そうよ。それにさっきの邪神の話はコータから聞いたの」

「邪神ねー。本当にそんなもんいるのか?」

「信じてないの?」

「信じていないわけではないが、このコータという人族を俺はまだ信じていない」

レガリオルは俺を睨んだ。


本当に他種族共存賛成派の代表か?

どう考えて反対派みたいな空気だ。


「ゾーエンが私の元に案内したのよ」

「ゾーエンが会ってるなら悪い人族ではないのだろう。だが本当にこいつが獣人族を守り、邪神というものを倒せるのかがわからん」


ベロニカは頭を抱えた。

「レガリオル……。いつもと雰囲気が違うと思ったらそういうこと?」

「ギャハハハ!何のことだ?」

レガリオルは笑った。


俺は全く状況を掴めない。

「えーっと。信用されないようなら、ここにいる意味がないので出ていきますが」

「え!?」

レガリオルは立ち上がった。


「い、いいのか?ここで俺の信用を得なくて」

「ああ。別に賛成派と協力しなくてもやれるはずだから」

「いいんだぞ?実力で俺の信用を得ても」

「ん?」

俺は気付いた。

こいつはバトルジャンキーだ。


俺は頭を下げてまで戦うつもりはない。

それにたぶん俺が勝つ。

コングと肉弾戦のみか、龍化したゴフェルならいい戦いになるだろうが、目の前のライオン男に負ける要素がない。


「いやいい。そこまでして信用を得る必要がない」

「え?え?」

レガリオルは動揺していた。


「お前が戦いたいなら戦ってもいいが、頭を下げるのは俺じゃないと思うが」

「え?」

レガリオルは自分が戦いたがっているのを俺が気付いたことを察したようだ。


「どうする?無駄な戦いはしないが、お前が頭を下げるならやってもいいぞ」

「ぐっ!」

レガリオルは悔しそうだ。


俺はベロニカを見た。

「帰っていいよね?」

「はい。残念ですが、レガリオルが頭を下げてませんので」

ベロニカはノリがよかった。


「ああ!わかったよ」

レガリオルは深く頭を下げた。

「コータ。俺と一度戦ってくれ」


俺はため息をついた。

「はぁー。最初っからそう言えよ」

「すまない……」

「それでどこで戦うんだ?当然模擬戦だよな」

「ああ。この建物の裏に庭がある。そこで頼む」


俺達は庭に向かった。




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