26週目.たらこパスタ
俺は本島にやってきた。
ゾーエンに獣人のことをいろいろ聞いておいた。
驚いたのは獣人は魔法が使えないらしい。
魔力はあるからマジックアイテムは使えるみたいだが、魔法適正が無いようだ。
一部の種族はスキルで魔術というものを使うらしい。
俺が会おうとしている狐人族のベロニカはその魔術を使うらしい。
ベロニカは狐人族が住む村か、賛成派が拠点としている街にいるらしい。
とりあえず街に向かうことにした。
街までは徒歩だ。
獣人の姿で魔法はだいぶ目立つ。
「あーユーサクを呼ぶか。邪神の話を整理してほしいし、美味い飯食いたいし」
俺はユーサクを呼ぶことにした。
▽ ▽ ▽
「今週はどこなんだ?海の中ではもうないし、元の世界?いや、コータのことだからハシゴしてるはずだ」
俺は今度こそモンスターとの戦いがあることを期待していた。
タラララランラン♪タラララランラン♪
タブレットから着信音が鳴った。
「よーし。やってやる」
俺はレッドホーミングのマスクを装着した。
いつもの気絶をするような衝撃に襲われた。
「ディフィバースの世界にようこそ!」
いつものように女神の声でアナウンスが聞こえた。
目を開くと草原が広がっていた。
「ユーサク!上手い飯を頼む!」
コータの声が聞こえて振り向くと、いつもと違うコータが居た。
「どうしたんだ!その耳と尻尾!」
「ああ。獣人の姿になってるんだ」
「獣人の姿?ってことは次は獣人の国?」
「そうだ!まだ国じゃないんだけどな」
「あーなんかややこしそうだな。とりあえず俺は何をすればいい?」
コータはにやにやしながら俺を見た。
「正直、今回やることはほとんどない!まあ飯を頼む」
「え?まじかー。気合入れてきたのになー」
「すまんすまん」
「とりあえずすぐ作るわ!」
「頼む!」
俺はすぐに調理に取り掛かる。
「異世界調理!」
俺の目の前に大きな鍋が2つ現れ、宙から水が出てきて鍋に注がれていった。
水が入ると鍋の下に火が現れて、鍋を熱していく。
「ユーサク!今日は何なんだ?」
「あーパスタだ。今日のために北海道からある物を取り寄せた」
「なにを?」
「たらこだよ」
俺がそう言うと、取り寄せたたらことフォークが現れ、たらこをほぐし始めた。
「うわー!たらことか久々だな」
「たらこパスタとたらこのポテトサラダを作るから、堪能できると思うぞ」
「よっしゃ!」
コータと話していると鍋が沸騰してきた。
片方の鍋にパスタと塩、もう一方にはジャガイモが入る。
目の前にフライパンが現れ、俺はほぐしたたらことバターと牛乳と生クリームを入れて火を通す。
異世界調理は調理器具が勝手に作業を進めてくれるんだけど、メインの作業は自分でやることにした。
前回ユイの前で調理したことで、改めて料理の楽しさを感じられた。
まあ下準備とかは変わらずスキル任せだけど。
作ったたらこソースに醤油を垂らし、味見をする。
「うん。こんなもんだろ」
茹で上がったジャガイモの皮をピーラー達が剥いていき、マッシャーで潰していく。
ほぐしたたらこと生クリームとオリーブオイルとマヨネーズを入れ混ぜる。
塩コショウで味付けして、ポテトサラダは完成だ。
茹でたパスタがフライパンに入る。
ソースに絡めて、皿に盛り付ける。
「コータ!たらこは乗っけるか?」
「当然!海苔も頼む!」
俺はほぐしたたらことの刻み海苔をかけた。
「よし!完成!」
「おー!うまそー」
コータは出来上がった料理を見てニコニコしている。
「食べようか」
「おう!」
▽ ▽ ▽
今回もユーサクの料理は絶品だった。
「ユーサク!色々話さないといけないことがあるんだ」
「ん?なんだ?」
俺はクシカーロから聞いた邪神の話と獣人国の話をした。
「は?なんか規模が!」
「そうだよなー。俺は慣れてきたけど、普通はその反応だよな」
「邪神が10等分。ということは10か所で何か企んでる?」
「意思はあるはずだから、何かしらやってるかもな」
ユーサクはいろいろ考えていた。
「今まで邪神関係っぽいのはあったか?」
「うーん。コングの時?」
「あー犯罪者が転移してたやつか」
「うん。あと魔人領もなんかありそうだな」
「差別とか迫害の思考すら、邪神の影響とか?」
「わからんけど可能性はある」
ユーサクと話すといろいろまとまるから助かる。
「てか一番気になるのは、邪神を持って行ったやつ」
「あーそうか」
「神の世界に時間の概念があるかわからんけど、そいつと出会うのが怖すぎるだろ」
「さすがにもう死んでるんじゃないか?」
「いや、コータが行く時代によっては生きてる可能性があるし、神から逃げれるやつだから、ほぼ神様みたいなやつかも」
「これは俺も特訓しないとまずいか?」
「俺もした方がいいかもな」
俺とユーサクは頭を悩ました。
「てか今回の件も気になる」
「何が?」
「憑りついてるってどういうこと?封印が解けたの?それとも封印してある魔石に触れると操られるの?」
ユーサクは分からないことが多くて首を傾げ続けている。
「わからなすぎる。だけどクシカーロが伝えてないってことは、別に気にしなくていいんだろ」
「そうなのかな?てか女神のこと名前で呼ぶようになったの?」
思ってもいなかったところをつつかれて、少し恥ずかしくなった。
「クシカーロのドジな部分が、あえてやってた事なんじゃないかって思えてきたんだ。それに話を聞く限り、だいぶ大変そうだしな。最初のころとは印象が変わったかもしれない」
「まあ最初の印象がひどすぎたからな」
ユーサクは笑っていた。
「今後は率先してクシカーロの手伝いをしようと思ってる。今までは拒否権がほぼないから手伝っていたが、俺がやらなきゃ、ユイやヤリネ、それにコングやゴフェルの世界が崩壊するかもしれない」
「そうだな。俺もこの世界には少ない時間しか関わってないけど、守りたいものはある」
「ユーサク。大変になるかもしれないがこれから俺を支えてくれ」
「ああ。当たり前だ」
俺とユーサクはこの世界を守ると決意した。
▽ ▽ ▽
俺はユーサクと別れ、目的地に向かって歩いた。
「人族が住んでいる場所とほとんど違いがないな」
そんなことを思いながら辺りを見回していると、近くでモンスターの気配を感じた。
気配の元へ行くと、真っ黒なキツネが血だらけで倒れていた。
俺は『鑑定』を使ってみた。
「シャドウフォックス?」
倒れているのはシャドウフォックスというモンスターだった。
「うーん。どうしよ……」
モンスターだからこのまま放置してもいいはずなんだが、助けたいという気持ちが芽生えている。
運命的な何かがあるわけでも、何か今後の行動の鍵になるかんじでもない。
ただただビジュアルがかっこよかった。
俺は男の子精神を抑えきれず、シャドウフォックスに回復魔法をかけた。




