26週目.邪神
俺は森の中に転移させられた。
「獣王国?」
「うん。まだ国ではないんだけどね」
「え?」
「今は複数の獣人の群れがあって、そこの長達が集まって話し合いでいろいろ決めている。国になるのはまだ先だね」
まだちゃんと国として出来上がってないのか。
「それで俺はここで何を?」
「うーん。自由にって言いたいところなんだけどねー。今回は絶対にやってほしいことがあるんだ」
「なんだ?」
クソ女神のじらしにイライラしてしまった。
「さっき言ってた長達が2つに分かれて戦争中なんだ」
「戦争?」
「うん。人族との共存賛成派と反対派の」
「なるほど。それで俺はどっちを助ければいいんだ?」
「うーん。その質問は難しい」
「は?」
クソ女神はなぜか悩んでいる。
「コータがミスらなければ、賛成派がどうやっても勝つからー」
クソ女神は一人で喋っている。
「そんなに悩むんなら、俺も一緒に考えるから言える範囲で伝えろ」
「ほんと?ありがとー!」
クソ女神は笑顔で俺を見た。
「それで?」
「うん。コータには反対派に紛れ込んでいる邪神を倒してほしいんだ」
「邪神?」
「うん……」
クソ女神は気まずそうにした。
「この世界の敵」
「そいつを倒すのが俺の使命なのか?」
「半分正解」
「詳しく聞いてもいいのか?」
「うん。そろそろ話さないとね」
クシカーロは俺の目を見た。
「この世界は邪神の手で1度崩壊しかけたの」
「え?崩壊?」
「うん。この世界は30人の神で作ったの。その1人が僕。そして邪神も30人のうちの1人」
「邪神も?」
「うん。元々は邪神ではなかったんだけどね。いろいろあって邪神になっちゃったんだ」
クシカーロは申し訳なさそうに言った。
「邪神は僕達の仲間を9人殺して力を吸収し、最強の存在になった。どうにか邪神を倒すことはできたんだけど、世界の崩壊が止まらなかった」
「それで?」
「僕達は邪神と同じ方法で力を手に入れて、崩壊を止めることにしたんだ」
「同じ方法ってことは……」
「うん。残ることになった僕を含めた9人の神が11人の神の力をもらったんだ」
話の規模がデカすぎて理解が追い付かない。
「みんなも力を受け継ぎ、僕は時間の神だったこともあって3人分の力を受け継いだ。そのおかげで崩壊を止めることができた」
「でも倒した邪神がなんでまた暴れてるんだ?」
「僕達は邪神を倒して、世界の崩壊を止めている間に逃げられてしまったんだ」
「は?」
「逃げられたというより持っていかれたんだ」
「持っていかれた?」
クシカーロの言い回しが気になった。
「邪神を倒した後、封印をしようとしたんだけど力が膨大すぎたんだ。だから邪神を複数に分割して特殊な魔石に封印をしたんだ」
「それで?」
「世界の崩壊が始まり、僕達が対応している間に邪神の仲間がその魔石を持ち出した」
「なんでだよ!」
「その邪神の仲間は邪神から僕達に見えなくなるスキルをもらっていたんだ」
神達のポンコツ具合に俺は少しイラついた。
「とにかく僕達も焦った。崩壊を止め、再スタートする世界を邪神に壊されてしまうんじゃないかと。だから僕は力を振り絞って未来を見たんだ」
「ん?どういうことだ?」
「この世界に起こりうる数兆通りの未来を見たんだ」
何となくわかってきた。
「その未来の中でうまくいく可能性があるのが、俺を呼び出すことだったんだな」
「その通り。その力はそれ以降使うことはできなくなった。だけど数兆通りの未来は覚えている。その中で邪神を倒せるように動くのが僕の仕事だ」
クシカーロはなぜか悲しそうに俺を見た。
「だったら俺が邪神が盗まれるタイミングにタイムトラベルすればいいんじゃないか?」
「うん。その未来もあった。だけどコータは邪神の仲間に殺された」
「殺される……」
「うん。その時は邪神の仲間が邪神の力を全部吸収して、コータや僕達を殺して世界は崩壊した」
「なるほど……」
俺は言葉が出なくなった。
「邪神の仲間は10分割された邪神を世界中にばら撒いた。1つずつ倒していくのが最良の行動なんだ」
「俺が全て倒すってことなのか?」
「ううん。コータに倒してほしい邪神もいる。だけど他の人が倒せるようにアシストをしてもらうのが主な使命だよ」
「なんとなくわかった。島やコング、魔人領や今回の獣王国。俺は邪神を倒すためのアシストをさせられてたんだな」
「うん。言えなくてごめん。でもこのタイミングで伝えるのが最良だったんだ」
クシカーロは申し訳なさそうにしている。
「このことはユーサクに伝えていいのか?」
「いいよ」
「わかった」
俺の中でも整理ができてないから、早くユーサクに整理をしてもらいたい。
「とりあえず俺はお前に転移させられた。そしてこの世界に大切なものができた。お前が見た最良な未来に進むように頑張ってやるよ」
「ありがと、コータ!」
クシカーロは満面の笑みを俺に向けた。
このクソ女神のクソ行動は意図的だった可能性がある。
最良の行動が俺にはわからないが、やれることをやるしかない。
「それで今回の手伝いについてだ」
「うん!」
「邪神はどこに?」
「反対派の獣人に憑りついているんだ」
「操ってるのか?」
「それに近いかな。憎悪の感情を増やして、思想を過激にさせてる」
「なるほど。邪神に効く攻撃は?」
「ごめん。言えない」
「わかった」
こんな些細な会話ですら、未来に影響するのか。
「とりあえずいつも通りやる」
「うん。今回は異世界から来たことは言ってもいいよ。すぐにバレるし」
「バレる?」
俺がそういうとクシカーロの姿はなかった。
「とりあえず周辺を見てみるか」




