25週目.海鮮ドリア
マイホームで作った空間は、魚人族にもキングクラーケンにも満足してもらった。
セドロは魚人達を呼び、俺の代わりにこの空間の説明をしている。
キングクラーケンも家族を呼びに行き、洞窟を案内していた。
「ユイ。次はものすごい強いモンスターとの戦いだ」
「うん。頑張る。でも最初に話してみてもいい?」
ユイのこういうところは尊重しないといけない。
「いいぞ。もし話が通じないようなら戦うよ」
「うん!」
俺達はキングクラーケンが戻ってくるまで、魚人族に家の作り方などを教えた。
▽ ▽ ▽
俺は筋トレをしていた。
前回の呼び出しで自身の力が基準になることを知った。
俺は少しでもコータの力になれるように、身体を鍛えることにした。
「また悪魔族が襲ってくるかもしれない。俺がやれることはしておかなくちゃ」
『メッセージ』はいつものように使い物にならない。
時間のずれがあるということはまだ魔人領にいる。
今度こそ不甲斐ない終わり方はしない。
タラララランラン♪タラララランラン♪
タブレットから着信音が鳴った。
「よし、来た!」
画面を見ると、[マスクを装着してください]と書かれていた。
俺はレッドホーミングのマスクを装着した。
いつもの気絶をするような衝撃に襲われた。
「ディフィバースの世界にようこそ!」
女神の声でアナウンスが聞こえた。
目を開くと海の中で、目の前にはユイの姿があった。
「え?ユイ?」
「うん!そーだよ。ユーサクだー!」
ユイは抱き着いてきた。
「え?ここは?」
ユイの可愛さにやられながらも質問をした。
「ここは海の中。魚人族の人がこれから住むところ」
魔人領ではないみたいだ。
コータは手伝いをハシゴしたみたいだ。
「ユイ。今日も可愛いね」
「ありがと、ユーサク!ユーサクもかっこいい!」
「ありがとう」
ユイの可愛さにデレデレしてしまった。
「コータはどこにいる?」
「コータは魚人族の人に家の作り方を教えてる!」
「俺も行っても大丈夫かな?」
「うん」
俺はユイと手を繋ぎながら、コータの元へ向かった。
▽ ▽ ▽
俺はいろんなところで家を作っているな。
そんなことを思いながら、地面に絵を描いて魚人族に家の作り方を教えた。
「コータ!ユーサク来たよー」
ユイが走って飛びついてきた。
「おー来たか」
「おう。魔人領だと思って、変に気合いを入れちゃってたよ」
「ははは。悪い、そのまま来ちゃったよ」
「みたいだな」
俺とユーサクが話していると、ユイが不思議そうに俺達を見た。
「まじんりょー?」
俺とユーサクは慌ててごまかしたが、魔人領って単語を知らないおかげでどうにかなった。
俺達が話していると、セドロが口を開いた。
「コータさん。この人族の方は?」
少し警戒しているようだ。
俺はすぐに説明をした。
「俺の仲間だ。気になるならセドラールに見てもらってくれ」
「いえ、コータさんのお仲間なら問題ないです」
魚人族達は難航する家造りに戻っていった。
「それで俺は何をすれば?」
ユーサクが問いかけてきた。
「うーん。とりあえず飯かな?これからリヴァイアサンと戦うかもしれないから」
「リヴァイアサン!?あの有名な?」
「ああ。ビビるよな」
ユーサクもリヴァイアサンは知っていた。
「魚人族達のも作れるか?」
「あっ!ダメかも」
「なんで?」
ユーサクは俺に耳打ちしてきた。
「量は大丈夫だけど、今回は海鮮ドリアを作ろうと思ってたんだ……」
「ああ。なるほど」
俺は魚人族達に聞いてみた。
「魚人族って何食べるの?」
「え?」
「悪い変なこと聞いて」
「いえ。魚です」
「ありがとう」
なんか気まずい感じになりながら、ユーサクの元に戻った。
「魚食べるって」
「そうか、なら作り始めるか」
▽ ▽ ▽
コータのおかげで〈魚人族、魚を食べるのか問題〉が解決した。
なぜかものすごい気まずい雰囲気にはなっていた。
「メニュー、異世界調理!」
俺の頭の中に作り方が流れてきた。
「まずはタマネギとマッシュルームを細切りに!」
タマネギとマッシュルームが現れ、包丁に切られていく。
「すごーい!」
ユイが目を輝かせながら俺を見ている。
これは良いところを見せないと。
「次は白米とバターと塩コショウを混ぜる」
ボウルが数個か現れ、白米を混ぜていく。
「フライパンでシーフードミックスとタマネギとマッシュルームを炒めて、ホワイトソースを入れる」
どんどん工程が進んでいく。
ユイがいるので何かやらないとと思って、フライパンを1つを担当した。
「ホワイトソースは缶詰だけど、うまいはず」
味を調えて、火を消す。
考えるだけで火が消えるのは便利だ。
「次は…」
先ほど混ぜたご飯が入っている耐熱容器が目の前に現れた。
「うわ。さすがだわ。気が利く!」
俺はご飯の上にホワイトソースとチーズを振りかけた。
「耐熱容器ってこんなに持ってたか?」
家にある耐熱容器より、数が多いように感じた。
「まあいいか。次はオーブン」
目の前にオーブンが現れ、その中にドリアを入れていく。
「さすがに全部は入らないか」
俺がつぶやくと、目の前にまたオーブンが現れた。
「これって……。このドリアを全部一気に焼きたいな」
確信をもってつぶやいた。すると数台のオーブンが現れた。
「うわ。まったく同じ型だから、絶対複製かなんかされてるぞ」
俺は『異世界調理』の力だと確信した。
「まあ気にしてもしょうがない。どんどん焼いていくか」
俺はドリアをオーブンに入れていった。
「よし、あとは待つだけ」
ぱちぱちぱちぱち!
「え?」
俺はいつの間にか魚人族に囲まれていた。
「いつから?」
「えーと。白いのを作ってるとき。ユーサクかっこよかったよ」
ユイは褒められてうれしいが、さすがに恥ずかしくなってしまった。




