24週目.虫人族の情報
虫人族に魔法を教える約束をして3日経った。
家もほとんど出来てきたので、手が空いた虫人に魔法を教え始めた。
「まずは強い魔法を覚えようとするんじゃなくて、操り方を覚えるんだ」
「「「「「はい!」」」」」
俺は水の球を出してお手玉をして見せた。
「こういう風に操ってみよう。最初は難しいと思うけど」
「「「「「はい!」」」」」
「あと火魔法を使う人は消化用の水をちゃんと用意するように」
虫人達は各々魔法操作の練習を始めた。
「なにをやってるんだ?」
後ろを振り向くと、ゴフェルが居た。
「おかえり。いま虫人達に魔力操作を教えてるところだ」
「魔力操作?」
ゴフェルは首をかしげた。
「え?知らないのか?」
「ああ」
俺は水のお手玉を見せた。
「おー凄いな。私もできるのか?」
「多分できると思うぞ。教えるか?」
「良いのか?」
「ああ」
ゴフェルは嬉しそうにしていた。
「そういえば虫人の情報はあったのか?」
「ああ。明日にはその場所に向かおうと思う」
「俺もついて行くぞ」
「それは心強いな」
「それでどこに行くんだ?」
ゴフェルは地図を出した。
「この島だ。ここは憤怒の悪魔が治めている島だ」
「憤怒の悪魔か…。そいつは虫人を迫害しているのか?」
「いやサイルバルタンは私に協力してくれている唯一の幹部だ」
「おっ!それなら保護しないでいいんじゃないか?」
ゴフェルは渋い顔をした。
「サイルバルタンの前任者がクソ野郎で、虫人を積極的に兵士や奴隷にさせていたんだ。そのせいで迫害の文化は残念ながら残っている」
「まじか…」
「前任者が死んだタイミングで虫人達の大半は逃げだし、逃げ出せなかった者達はサイルバルタンの元で保護をしている。なので今回は逃げ出した者達を探し出すのと、サイルバルタンが保護している者達を預かる予定だ」
「なるほど。わかった。付き合うよ」
「助かる」
ゴフェルは頭を下げた。
▽ ▽ ▽
ゴフェルに魔力操作を教えるとすんなり覚えた。
使える魔法の属性は聖魔法がメインで土と雷も少し使えるようだ。
魔法の種類もそこそこ多かった。
10個の光の球をお手玉のように扱っている様子はもの凄かった。
「ザハハハハ!どうだコータ。うまくなっただろ」
ドヤ顔のゴフェルは少し腹立った。
虫人達はまだ時間がかかりそうだ。
魔力操作が出来るようになれば、自然と魔法の種類も増えるだろう。
みんなが広場で座りながら魔法でお手玉をしている光景はなかなか異様だった。
「ゴフェル。明日は何で移動するんだ?」
「ん?飛んでいくつもりだ」
「おー楽しみだ」
「速いから振り落とされるなよ」
「舐めんな」
いつかゴフェルと戦ってわからせてやりたい。
▽ ▽ ▽
翌日、俺達は憤怒の悪魔が治める島に向かった。
「コータ。大丈夫か?」
「よ、余裕だ」
ゴフェルの背に乗って移動をしているが、思った3倍は早かった。
それに目立たない様に、ものすごい高度を飛んでいるので、火魔法で身体を温めたが全然寒かった。
憤怒が治める島はゴフェルが治める諸島の隣にある。
砂漠や火山などがあり、気温が高い島らしい。
進むにつれて暖かくなっていくはずだが、全然まだ寒かった。
「コータ。そろそろ着くぞ」
「早!まだ全然暖かくないが」
「降りたら暑いと感じるだろう」
ゴフェルは急降下していった。
「おい!おーい」
この世界でジェットコースター以上の怖いものに乗ることになるとは。
▽ ▽ ▽
ゴフェルが言っていたように到着した島は気温が高かった。
というよりも暑すぎた。
目の前には火山があるから、当然暑いに決まってる。
「ゴフェル。どこに虫人族はいるんだ?」
「この火山の中だ」
「え?」
俺は足元のマグマ溜まりをみた。
「こんなとこに虫人が暮らしてるのか?」
「団子族と蠍人族の目撃情報がサイルバルタンに来たらしい。それに違う種族の目撃情報もあった」
「なんの種族?」
「霊人族だ」
俺が知らない種族だった。
「霊人族って死んだ人?」
「何を言っているんだ?そんなわけないだろ」
「じゃあどんな種族なんだ?」
「この火山で目撃情報があったのは火人族だ。身体が火で出来ている種族だ。」
「あーなるほど。じゃあ身体に水や石で出来てるやつとかいるの?」
「知ってるじゃないか。そうだぞ。木や砂や風で出来ている奴も居るぞ」
「なるほど」
霊人類は自然のもので身体が出来ている種族という認識でいいだろう。
「じゃあ向かうか」
「え?飛んで行かないのか?」
「ドラゴンの姿じゃみんな怯えて出て来ない」
「そうだな。じゃあ歩くか」
「おう」
俺達は火山を登り始めた。
30分ほど歩いた。
水魔法と風魔法を駆使して身体を冷やしているが、暑いから半裸状態だ。
「おいー。まだ付かないのか?」
「私も当てもなく歩いている」
「は?目撃情報は?」
「火山の麓だ」
「え?通り過ぎてるじゃん」
「麓で霊人族と虫人族のような奴が居たという報告があった。だからこの火山に居ると推理してここにいる」
「まじかー。じゃあしらみつぶしにしないとだな」
俺は暑さで滅入っていた。
「ん?」
火山を登っていると遠くの方で何かが動いている様に見えた。
よく見てみると人のように見える。
いや違う。人型の火だ。
「あれって火人族じゃない?」
「ん?」
ゴフェルは俺が指を差す方向を見た。
「ああ。そうだな。接触しよう」
「おう」
俺達は火人族が見えた方向へ向かった。




