24週目.マイホーム
お好み焼きパーティは成功した。
みんなが腹いっぱい食えたかはちょっと不安だが、少なくても1人前は食べさせることが出来たと思う。
「コータ。感謝する!」
ゴフェルは頭を下げてきた。
「気にしないでくれ。手伝うって言ったろ」
「それでも礼はさせてくれ」
俺はゴフェルの礼を聞き、話を進めた。
「これからどうするんだ?」
俺はゴフェルに問いかけた。
「まずは魔人領に散らばってる虫人族を保護して、私が管理している諸島で安全に暮らしてほしい」
「そんなにいっぱい島があるのか?」
「島は6つある」
ゴフェルはそういうと手書きの地図を取り出した。
「私達が今居るのはここだ。ここには龍人族の里がある」
「なるほど」
「この島以外にあと5つ島がある」
「どっかの島に虫人族をまとめるのか?」
俺がそう聞くとゴフェルは険しい顔になった。
「虫人族が暮らしている島だとバレてしまうと、拉致目的の人が来る可能性がある。だから各島にばらけさせようかと」
「ばらけさせて、俺が渡したマイホームを使うってことね」
「そうだ」
「俺もどれくらい使えるのかわからないから一回試しで使わないとな」
「そうだな」
俺達は虫人族達の元へ向かった。
▽ ▽ ▽
虫人族の元へ行くと、天道族と蝗人族の代表がやってきた。
天道族の代表は俺とゴフェルを止めた女性だ。
蝗人族の代表は頭に触角が付いており、腕が4本で脚がものすごく筋肉質な男性だった。
「コータ。天道族のセブダと蝗人族のトゥンジャだ」
ゴフェルが2人を紹介してくれた。
するとセブダが前に出て口を開いた。
「コータさん。食事をありがとうございました。食べたことのない料理でしたが、本当に美味しかったです」
「全然いいよ。みんなちゃんと食べれた?」
「はい。食べれました」
「よかった」
みんなが食べれたと聞き、俺は安心した。
俺はゴフェルに問いかけた。
「どこらへんに家を作ろうと思ってるんだ?」
「蝗人族はこの辺りに作り、天道族は島の反対側に作ろうと思う」
俺達が居る場所は、ゴフェルが山を切り崩したおかげで平地になっていた。
「わかった。じゃあまずはトゥンジャにマイホームを渡してくれ」
ゴフェルはトゥンジャにマイホームを渡した。
「俺も使い方はざっくりしか分からないから、まずはやってみよう」
俺はトゥンジャにマイホームの使い方を教える。
「トゥンジャ。まず蝗人族は何人いるんだ?」
「63人います」
「じゃあその63人が快適に暮らせる空間を想像しながらマイホームに魔力を注いでくれ。他種族に見つかりにくい空間ってのも忘れないで」
「わ、わかりました」
トゥンジャは戸惑いながらもマイホームに魔力を注いでいった。
するとマイホームがものすごい光を発して俺らを包み込んだ。
「まぶし!」
俺はあまりのまぶしさに目をつぶった。
光りが止んで目を開けると、俺達のいた場所が木に囲まれた空間に変わっていた。
「想像以上だな…。トゥンジャ、想像通りになってる?」
俺は放心状態になっているトゥンジャに問いかけた。
「は、はい。想像以上です…」
「他種族に見つかりにくいように想像した?」
「我々に敵意を持つものが入れない様に想像したのですが…。出来てるんでしょうか?」
「うーん。試してみるね」
俺は木に囲まれた空間から出た。
外からマイホームで作った空間を見てみるが、山岳地帯にぽつんと森があった。
「周りに木を生やさないと不自然だな…」
俺はマイホームの能力を確認するために蝗人族に悪意を持ちながら森へ入っていく。
「虫人族コロス!虫人族コロス!虫人族コロス!虫人族コロス!」
こんな表面的な悪意では無理かもしれないが念のためだ。
森の中に入って結構歩いているが、さっきまで居た空間に戻ることはできなかった。
「これってうまくいってるのか?それとも俺がミスってるだけ?」
俺は一旦森の外へ出た。
試しに悪意を消して森に入るとすぐにさっきの空間に着いた。
「これ凄いな…」
俺はゴフェルに報告をした。
「マイホームはなかなかすごいぞ。だけど山の中にいきなり森があるから、範囲を広げた方がいいかも」
「そうか。広くなるなら天道族もここで暮らしてもらうのが良いかもしれないな」
そういうとゴフェルは虫人族に向かって言った。
「セブダ、トゥンジャ。コータが確認したところ、山の中にいきなり森があって不自然らしい。範囲を広げて、天道族と蝗人族が一緒に暮らすことはできるか?」
「私達は平気です」
「僕達も問題ないです」
「では、森を広げてもらえるか」
「やってみます」
トゥンジャが魔力を込めるとマイホームがものすごい光を発した。
光りが止むと、木に囲まれた空間は広くなっていた。
「おお!じゃあ森の外に出て、確認してくる」
俺は森の外へ向かう。
しかしさっきよりもだいぶ広くなっているようで、外に出るまで時間がかかった。
「やっと出たぞ。ってすごいな!」
森はゴフェルが切り崩した山だけではなく、近くの山にまで広がっていた。
「マイホームはなかなか使い勝手がよさそうだ」
俺は皆の元へ戻った。
▽ ▽ ▽
マイホームを使って2日経過した。
マイホームは問題なく機能していた。
俺は虫人の街づくりを手伝い、ゴフェルは虫人の情報を集めるために本島に向かった。
トゥンジャは様々な植物が生息している森と想像したようで、食べられる作物が多かった。
そのおかげで種の採種ができたので、畑なども作れそうだ。
人数もそれなりにいるので街づくりは大変だ。
蝗人族63人と天道族が54人分の家を作らないといけなかった。
保護した虫人族は子供と老人が結構多かった。
作業をしている間、虫人族達といろいろ話をした。
虫人族の寿命は人間とほとんど変わらないらしいが、他の種族より繁殖能力が高いらしい。
なのでトゥンジャはだいぶ広く空間を作ったようだ。
セブダとトゥンジャが俺の元にやってきた。
「コータさん。お願いがあるのですが」
「どうしたの?」
「コータさんは魔法がお得意ですよね?」
「そうだね」
「私達に魔法を教えてもらえないですか?」
「え?」
「私達は生活に使えるレベルでしか魔法を使えないのです。なので自衛が出来るくらいには使えるようになりたいんです」
2人は真剣な表情だった。
「わかった。ちなみになんの魔法が使えるの?」
「私達は火魔法です」
「僕達は風魔法です」
俺は驚いた。
「え?種族で使える魔法が同じなの?」
「そうです。悪魔族や人間とは違って種族で使える魔法が決まってるんです」
「そうなんだね」
俺は少し考えた。
「わかった。家造りが終わったら教えるよ」
「「本当ですか?」」
「うん。必要最低限自衛が出来るレベルね」
「ありがとうございます」
「頑張ります」
2人は喜んでいた。
「じゃあまずは家を作らないとね」
「はい!」
俺達は家造りに向かった。




