24週目.お好み焼き
ゴフェルは、まだ俺の事を少し疑っているようだ。
だがマジックアイテムのお礼なのか、やりたいことについて話してくれた。
「私はこの魔人領を治める7人のうちの1人なんだ」
「え?そんな偉い人なの?」
「そうだ。私を知らないということは、コータは魔人領のこと全然知らないようだな」
「そうなんだ。出来れば細かく教えながら話してくれると助かる」
「わかった」
ゴフェルは頷いた。
「まず魔人領とは6つの島と1つの諸島の計7地域の事をいう。各地域は魔王と6人の幹部が治めている。私が治めているのがこの島がある諸島エリアだ」
「なるほど」
「次に魔王と6人の幹部についてだが、これが少しわかりづらい」
「頑張って聞くわ」
「魔王と6人の幹部は魔人族の中で大罪の悪魔スキルという特殊なエクストラスキルを取得した者だけがやれる役職だ」
「ん?でもゴフェルは龍人族じゃなかった?」
「ここもややこしいんだ。魔人領に住む大半の種族を魔人族と総するのだ」
「大半?」
ゴフェルは少し悲しそうな顔をした。
「虫人族と妖人族だけは魔人族に含まれていない」
「虫人族ってさっきの?」
「ああ。虫人族についてはあとで話そう」
「わかった」
ゴフェルは話を続けた。
「私は『怠惰の悪魔』というスキルを10歳の時、だいたい45年前に取得した。そこから魔人領の幹部として働いてるんだ」
俺は想像以上の年齢を聞いて驚いた。
「え?今何歳なんだよ。俺には若く見えるぞ?」
「55だ。龍人族は長寿なのだ。それに大罪の悪魔スキルの効果でも寿命が少しだが延びてる」
「そうなのか」
俺は異世界に来てから人間以外の種族に深く関わっていなかったので初耳だった。
「私よりも前に大罪の悪魔スキルを取得したのは悪魔族だけだった。そのせいで最初はひどい差別やいじめを受けた」
「え?」
「魔人領の人口は悪魔族が7割でその他の種族が3割といわれている。なので悪魔族以外の種族は差別や迫害の対象なんだ」
「それはひどいな」
「龍人族は私が内政に関わるようになったから少しは改善された。だが魔人族に属していない虫人族や妖人族はごみのように扱われている」
俺は胸糞悪い話でテンションが下がった。
「悪魔族は虫人族や妖人族を奴隷にするために捕まえていた。そのため虫人族と妖人族は隠れて暮らしている」
「なるほど…」
「私は45年、幹部として魔人領の内政に関わり、差別や奴隷になる者をたくさん見た。こんな状況では駄目だと思い、差別や迫害を受けている種族を私が管理しているこの諸島で匿う事に決めたのだ」
ゴフェルの言葉は力強かった。
「なるほど。だからあのマジックアイテムが必要なのか」
「そうだ。先日、魔人領の本島で隠れ住んでいた虫人の天道族と蝗人族を保護してきた。この島は山岳が多いから、住める平地を作るために山を破壊していたんだ」
「だからドラゴンになってたのか」
「どれくらいの能力があるかわからないが、コータがくれたマジックアイテムは本当に感謝している」
ゴフェルは俺に頭を下げた。
俺は決めた。
「ゴフェル。いつまで手助けできるかわかんないけど、お前の手伝いをさせてくれ」
「本当に手伝ってくれるのか?」
「元々そのためにここに来たけど、お前の話を聞いて心から手伝いたくなった」
「信用していいんだよな」
「ああ。俺が裏切ったら殺してくれていい」
俺は真剣にゴフェルの目を見た。
「わかった。手伝ってくれ」
俺はゴフェルと握手を交わした。
あれ?俺が異世界人だとか、クソ女神の指示で来たって言っちゃダメって言われてないな。
よし、言おう。
▽ ▽ ▽
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
俺はタブレットの音で目を覚ました。
時計を見ると朝の6時だ。
「あ?まじか」
俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
「あーもしもし」
「ユーサク!大量に飯が必要だ」
コータの声は寝起きにはきつい。
「ごめん。今起きたばっかりなんだ。なにがあったの?タイムトラベルはしたんだよな」
俺は目をこすりながらディスプレイを見ると知らない人がいた。
「この人間が異世界の友人なのか?」
「そうだぞ。こいつがうまい飯を用意してくれるんだ」
「いや、すぐには理解できないな」
「だろうな」
コータは知らない人と話している。
俺は目を凝らしてみると、その人は深緑の髪に角が2本、目が赤色で古風な顔立ちをしていた。
「コータ、その人は?」
「あー龍人族のゴフェルだ。今回はゴフェルの手伝いをする」
「あーなるほど」
タイムトラベルする前にコータと『メッセージ』でやり取りをしていたが、ほとんど料理の話しかしてなかった。
そういえば手伝いについて聞くのを忘れていた。
「それで、大量の料理が必要なのはなぜ?」
「ゴフェルは魔人領で差別や迫害を受けている種族を保護したいと思ってるんだ。それですでに保護している虫人族が100人近く居るんだ」
「はあ?100?」
「どうにかなんないか?」
コータは懇願している。
前回の事もあったので、1品だけは大量に送れる様にはしていたが100人は想定外だ。
「わかった。とりあえず24時間やってるスーパーに行く。もし通信が切れたらごめん」
「賭けだな。頼んだ」
「ちなみにホットプレートってないよね?」
「ホットプレート?」
俺がそう聞くと、コータは近くにあった大岩に触れた。
大岩はどんどん変形していき薄い板のようになった。
「俺の火魔法を使えば余裕かな」
「さすが。メニューは決まった!行ってくる」
俺はボサボサの髪のまま、すぐに家を出た。
▽ ▽ ▽
俺はひたすらキャベツを千切りしている。
まさか10玉も切ることになるとは。
『デリバリー』も空気を呼んでいるのか、通信が切れる様子もない。
「よし終わった。あとは生地を作って混ぜるだけ」
俺は大量に買ったお好み焼き粉を使い生地を作っていった。
大きいボウルがないので、大鍋をフル活用した。
俺はお好み焼きの生地と具材をテーブルとその付近に置いていく。
さすがに器が足りなくて生地を作りきれなかったので、生地の材料も置いておいた。
最後に大量のボウルと業務用の紙皿とプラスチックフォークも大量に置き。
「転送!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
カウントダウンが始まった。
「コータ!送ったぞ!悪いが調理はそっちで頼む」
「おう。お好み焼きを作るのは得意だからな」
コータがそう言うと、ディスプレイが真っ暗になった。
「あーそういう調整の仕方するのね」
俺は疲れ切ったのでベットに倒れこんだ。




