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3週目.とろとろオムライス

「やっと金曜日だ!」

俺は数日、この日が来るのを待っていた。

姪っ子のような存在のために、準備は万端だった。

「子供が好きな食べ物はいろいろあるが、やっぱりオムライスでしょ」


冷蔵庫からウィンナーとにんじんと玉ねぎを取り出した。

「姫、野菜とか大丈夫かな?でも栄養をとってもらうためには入れるしかないしなー」

嫌われてしまう恐怖と健康に育って欲しい気持ちを天秤にかけたが、やはり健康になって欲しい気持ちが勝った。


にんじんと玉ねぎを細かく切って。ウィンナーを輪切りにしていく。

フライパンを温め、油を入れる。


「うわー久々に作るから、ちゃんとできるか不安だ?」

フライパンで具材を炒めていく。玉ねぎが透明になるくらい火が通ったら、塩胡椒を入れて味をつける。


「確かここでケチャップとバターだった気がするんだけどな」

ケチャップとバターをフライパンに投入して、具材と混ぜ合わせる。


俺は炊飯器からご飯を取り出し、フライパンに投入。

しっかりケチャップの味が全体に広がるよう、混ぜながら炒めていく。

俺はケチャップライスをひとつまみして、口に入れる。

「うまいじゃーん。今回もご飯多めだけど大丈夫でしょ」

出来上がったケチャップライスを皿に盛る。


「意外と多くなったな。卵に包めるか?」

ボウルを2つとザルを用意する。

ボウルに卵を入れて、念入りに溶いていく。

溶いたらザルで濾してもう1つのボウルに入れていく。

「なんでこれをし始めたか忘れたけど、毎回これしちゃうんだよな」

ザルで濾す作業を数回やる。


フライパンを温め、バターを入れる。

溶いた卵をフライパンに入れ、半熟のオムレツを作る。

作ったオムレツをケチャップライスに乗っけて、

ナイフで切れ目を入れると綺麗に卵が開いた。


「綺麗にできたー。卵多めにしといてよかった。姫の分を作らなきゃ」

俺はすぐにもう1個を作り始めた。


すぐに姫の分のオムライスもしっかり出来上がった。

俺はケチャップを使い、姫のオムライスに猫の顔を描いた。

コータの分は適当にケチャップをかけるだけ。


「姫用のリンゴジュースとコータにはコーラでいいかな?」

冷蔵庫からリンゴジュースとコーラを取り出して、テーブルに置いた。


「よし。コータと姫、いつでも来い!」



▽ ▽ ▽



トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪


タブレットが鳴った。

「待ってました!」

俺が緑の受話器マークを押すとビデオ通話になった。


「ユーサク!待ってたぞ!」

ディスプレイにはベチャベチャに濡れてるコータがいた。

「おい!どんな状況だよ」

俺はローションまみれみたいな姿に驚いた。

「いやー聞いてくれよ。最近レベル上げのために森で1週間モンスター倒してたんだよ」

「おい、姫にどんだけ野宿させんだよ。街行けよ馬鹿!」

「馬鹿って言うな!馬鹿!姫には魔法で快適な生活をさせてるわ!なー姫!」


ディスプレイに姫が映った。

「姫ー!元気だった?」

俺はにやけながら手を振った。

俺に気付いた姫は頷いてくれた。


「姫!今日もかわいいね!」

俺はニヤニヤしながら言っていた。

ふと鏡をみると、気持ち悪い男が写った。

「コータ、もしかして俺、気持ち悪いか?」

「うん。俺もお前もだいぶ気持ち悪い。多分姫が成長したら距離置かれる」

「2人で頑張って自重しような」

「いや、かわいい姫にはかわいいと伝えてあげなきゃダメだ」

「その話乗った!だけどこれで嫌われたら、俺はお前を恨むからな」

「わかった」


俺達は親バカ話をやめ、本題を進めた。

「てか、なんでそんなベチャベチャなんだよ」

「聞いてくれよ。森のモンスターを倒してレベル上げしてたんだけど。それを見てた姫もやりたそうにしてたから、剣を渡したのよ。そしたらノリノリでモンスターを倒し始めたから、2人でレベル上げしまくってたの!」


俺はコータの話を聞いてものすごく動揺した。

「おい!姫に危険はないのか?」

「ないよ!俺がいるから。それで、ここ1週間ゴブリンとかスライムとか倒しまくってたら。姫もしっかりレベルが上がってったのよ。今日いつもの狩り場にきたら、スライムがいつも4倍くらいいて。2人で倒してたんだよ。

俺が途中でスライムを踏んで転んで、スライムまみれになったら、姫がすごい笑ってくれたんだよ。調子乗って転びまくっちゃったんだよね。後半はさすがに姫も少し引いてた」


ベチャベチャの理由がコータの悪ふざけで心から安心した。

「馬鹿かよ。その全身ベチャベチャなのはスライム?」

「うん。ほら、見て!姫が少し距離置いてるだろ」

姫を見ると1歩後ろにいた。

「お前、魔法でどうにかできないの?」

「あ!ちょうどいい魔法あるんだった。クリーン!」


みているうちにコータの身体が綺麗になった。

「おい!姫にもクリーンかけてやれ!後ろでかけて欲しそうにしてるから!」

姫はかけて欲しそうにウズウズしていた。


「ごめんよ、姫!クリーン!」

姫の身体と衣服が綺麗になった。

嬉しそうにニコニコしてる。

「よかったねー姫」

姫は俺を見て頷いた。


「ユーサク!今日の飯はなんなんだ?」

「姫がいるから、オムライスにしたぞ」

「うおーオムライス!最近は狩ったモンスターの肉ばっかだったんだよ」

「ちゃんと野菜も細かくして入れてるから、栄養満点だぞ!あとお前にはコーラで姫にはリンゴジュースを用意した」

「最高だぞ、ユーサク。姫、ありがとうだ言ってみ!」

姫は頑張って声を出そうとしているが、出ないみたいだ。

姫は申し訳なさそうに俺を見た。

「姫、気持ちはすごい伝わったよ!ありがとう」

姫は笑顔で頷いた。


「最近は姫と一緒に喋る練習をしてるんだけど、なかなか難しいみたいだ」

「まあゆっくりやっていくんでいいんじゃないか?」

「そのつもりだ」

コータも姫の事をいろいろ考えているようだ。


「じゃあそろそろオムライスを送るぞ」

「待ってました!」

俺はテーブルの上のオムライスと飲み物を見た。

「転送!」


オムライスと飲み物が光ってなくなった。

ディスプレイを見るとカウントダウンが始まった。


オムライスはちゃんと届いたようだった。

「きたきた!いただきまーす!」

コータは猫の顔が描いてる方を手に取ろうとした。

「おい、コータ!猫の方は姫だぞ」

「そっかそっか」

コータは猫が書かれている方のお皿を姫に渡した。

姫は笑顔で受け取った。


「じゃあ改めていただきまーす!」

コータと姫はオムライスを食べ始めた。

「うまい!うまいぞ!」

姫も美味しそうに食べてくれている。


「コータ!そういえば毎回聞けてなかったけど、来週の金曜日、何食べたい?」

「来週かー、何がいいかな。ん?」

「どうした?」

「ん?いつも美味しいご飯ありがとう?」

「どゆこと?」

「は?え?まじ!?」

「なにがー!!」


ディスプレイは暗くなっていた。

「なんで答えないんだよー!!」


俺はモヤモヤしたまま、今週納品の仕事に取り掛かった。




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